発電所から逆算する核融合。FRCミラーで小型・低コストを狙うLINEA
大学の実験室から始まった、“中性子を出さない”核融合への挑戦
最近、核融合が国家戦略の文脈で語られるようになってきた。脱炭素やエネルギー安全保障を背景に、各国が研究開発や産業化に向けた動きを加速させている。
一方で、核融合と聞いて多くの人が思い浮かべるのは、巨大かつ近未来的な装置だろう。また、「安全性は大丈夫なのか」「どこに建てるのか」「本当に実用化できるのか」。そんな疑問を感じている人も少なくないはずだ。
そうした中で、「小型・低コスト」を前提に、異なるアプローチから核融合の実用化を目指すプロジェクトが動き始めている。巨大な国家プロジェクトではなく、大学発の研究を起点に、民間のスピード感で試行錯誤を重ねていくという発想だ。
本記事では、「FRCミラー方式」と呼ばれる新しい核融合炉に取り組む株式会社LINEAイノベーション(リニアイノベーション、以下LINEA)を取材。日本の制約条件の中で、核融合をどう社会につなげようとしているのか。その現在地を追った。
想像以上にコンパクトだった研究施設
案内されたのは、日本大学理工学部 船橋キャンパスの一角にあるプラズマ理工学研究施設だ。核融合の研究施設と聞いて思い浮かべていた巨大な建屋とは異なり、大学の実験室に装置が整然と並ぶ、意外なほどコンパクトな環境だった。
茨城県にある実験装置「JT-60SA」や岐阜県の大型ヘリカル装置といった国内の大規模な核融合実験装置とは、その規模感がまったく異なる。装置の全体像を一度に見渡せる空間で、核融合に向けた実験が進められている。そのギャップにまず驚かされる 。
研究者の説明を受けながら、装置のすぐそばまで寄って見学した。複雑な構造を間近で見ながら、仕組みについて一つひとつ解説を受ける。大型施設とは違い、装置全体との距離が近いことも、この研究環境の特徴だ。
そして照明が落とされ、装置の内部がほんの一瞬だけ光り、プラズマが発生しているのがわかった。
他方式の核融合炉が、数千トン規模の構造物と複雑な周辺設備を前提とするのに対し、ここにある実験装置は実験室の一角に収まるサイズ感だ。研究者がその場で調整し、必要があれば手を入れて試す。その様子は、巨大プロジェクトというよりも、モノづくりの現場に近い。この手の届くサイズ感こそ、FRCミラー方式の特徴だ。
なぜ核融合炉は、巨大になってきたのか
現在、核融合研究の主流となっている方式は、トカマク型とヘリカル型だ。どちらも、強力な磁場を使って高温のプラズマを閉じ込めるという点では共通している。
トカマク型は、ドーナツ状の磁場の中にプラズマを閉じ込める方式で、世界中で研究が進んできた。実績も多く、国際熱核融合実験炉(ITER)をはじめ、国家プロジェクトの中心にある。一方、ヘリカル型は、こちらもドーナツ状のねじれた磁場構造によってプラズマを安定させる方式で、日本では大型ヘリカル装置(LHD)が知られている。
ただし、両方式には装置がどうしても大きくなるという共通する課題がある。高温・高密度のプラズマを安定して閉じ込めるためには、強く、かつ精密に制御された磁場が必要になる。その結果、巨大な磁石や複雑なコイル構造を持つ装置が前提となり、施設全体も「重厚長大」にならざるを得ない。
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トカマクでもヘリカルでもない。FRC×ミラーという発想
LINEAが取り組むFRCミラー方式は、これらの核融合炉とは発想が大きく異なる。巨大な装置でプラズマをがっちり囲い込むのではなく、プラズマそのものの性質を活かし、できるだけシンプルな構成で核融合を成立させようという考え方だ。
この方式は、国内の2つの大学で進められてきた研究が組み合わさって生まれた。ひとつは、日本大学で長年研究されてきたFRC(Field-Reversed Configuration:磁場反転配位)。プラズマ自身がつくる磁場によって、高温・高密度のプラズマを閉じ込める効率が高い手法だ。もうひとつが、筑波大学で研究されてきた「ミラー」と呼ばれる直線型の磁場構造で、こちらも安定的な稼働で装置を比較的シンプルに構成できる。
LINEAが目指しているのは、このFRCとミラーを組み合わせることだ。巨大なドーナツ型の装置ではなく、直線的でコンパクトな構成の中で、核融合反応を成立させる道を探っている。






































