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40年の歴史を持つ日本最大規模のソフトウェア団体でリーダー交代

デジタル前提の社会に作り替えていく ソフトウェア協会(SAJ)の田中邦裕新会長が語る

2022年06月02日 10時00分更新

文● 大河原克行

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 一般社団法人ソフトウェア協会(SAJ)は、さくらインターネットの田中邦裕社長が新会長に就任すると発表した。2022年6月8日に開催する第37回定時総会で正式決定する。2022年5月31日に行なった会見で田中新会長は、「ソフトウェア業界で働く会社や組織、人が発展することで、社会を発展させたい。デジタルを前提にした社会に作り替えることに力を注いでいく」と抱負を述べた。

ソフトウェア協会 新会長の田中邦裕氏(さくらインターネット 代表取締役社長)

700もの社・団体が加入する日本最大規模のソフトウェア業界団体

 SAJは、1982年にソフトバンクグループの孫正義会長が設立した日本パソコンソフトウェア協会を母体に、1986年に「日本パーソナルコンピュータソフトウェア協会(JPSA、パソ協)」として社団法人化。40年の歴史を持つソフトウェア業界の団体である。

 当初はパソコンパッケージソフトウェアを対象にしたソフトウェアの著作権保護、違法コピー撲滅に関する活動などを推進。その後、税制改正要望や政策提言などを行ないながら、徐々に対象範囲を拡大。2006年には「一般社団法人コンピュータソフトウェア協会(CSAJ)」に団体名称を変更。さらに2021年にはコンピュータに限らず、すべてのソフトウェアを対象としてデジタル社会を推進するという意味を込めて、「ソフトウェア協会(SAJ)」に名称を変更している。現在では、ソフトウェアベンダーだけでなく、データセンターやクラウドサービスを提供する事業者、ソフトウェアのユーザー企業なども参加。2022年3月には会員数が700社・団体を突破している。

SAJの歩み

 同団体はソフトウェア業界で働く社員のために、「関東ITソフトウェア健康保険組合」や「日本ITソフトウェア企業年金基金」を設立。2014年には将来の人材育成を目的に「U-22プログラミング・コンテンツ」の運営、会員企業による経営指導や出資などを行なう「CSAJスタートアップ支援事業」もスタートした。2016年には日本のIT関連団体を束ねる「日本IT団体連盟」の設立を主導。2018年には日本のデジタル化を推進する政治家を応援するための「デジタル社会推進政治連盟」の設立をリード。現在では、日本で最大規模のソフトウェア関連団体になっている。

 ビジョンに「ソフトウェア(国)の未来を創る」を掲げ、ミッションに「ソフトウェアに関わるすべての組織(チーム)・人をサポートすること」を掲げている。

ソフトウェアの業界団体の会長に、データセンター事業者の社長が就く意義

 田中新会長は、「協会設立時に、ソフトウェアは創作物であり、ソフトウェアに著作権を認め、コピーしてはいけないという文化を作ったことは、当協会の大きな成果である。だが、工業製品のようにひとつずつソフトウェア製品を作る構造も残っており、多重請負が生まれ、現場のエンジニアが十分な報酬を得られないという状況もある。だが、その一方で、クラウドの時代になり、ひとつのソフトウェアで、多くの人に利用してもらえる究極の著作権を持った製品になる時代がやってきた」と発言。

 また、「今回、ソフトウェアの業界団体の会長に、データセンター事業者の社長が就くことが不思議に思えるかもしれないが、さくらインターネットの売上げのうち、データセンター事業は約2割。いまはソフトウェアサービスで成り立っている。ハードウェアを持っているソフトウェア会社というのが、いまの姿である。ハードウェア、ソフトウェアを縦軸に、サービス提供、モノの販売を横軸にとった4象限でみると、ソフトウェアとサービス提供の組み合わせ部分には、パッケージソフトウェアも、クラウドサービスも含まれる。ソフトウェアをモノ売りとして提供している受託開発の仕組みを変えたいと思っている人は多いが、そうした変化の流れを支えていくことも、SAJの役割のひとつである。クラウドファースト時代を生き延びていけるように発展していくことが重要である」などとした。

 田中氏は、6年前からSAJに参加しているが、当初は自社のために時間を使う方が会社が発展すると考え、業界活動は時間の無駄と思っていたという。「だが、社会が発展することや業界が発展することで、自社が発展するということを目の当たりにした。そこで、SAJの活動にコミットした」と振り返る。

 今回の会長就任の背景を説明については、「企業には事業を通じて社会を変える力があるが、政治力などを使って、旧態依然とした体制を維持したいという人たちがおり、それが日本の停滞の原因になっていると感じることがある。良質な政治力の存在を感じたのが、SAJに参加してからの6年間である。自社のためにという、我田引水の考え方は、1年、2年の期間では儲かるが、10年、20年を考えると綻びがでる。社会が良くなるためにどうするかを考えていると、結果として、それが自社に返ってくる」と説明した。

 さらに、「明治維新以降、社会の仕組みは重層化し、ミルフィーユのようになっている。法律や教育、働き方など、それぞれの層は価値があるものだが、ひとつ欠けているのがデジタルである。すべての層はデジタルがない時代の考え方がベースにあり、上層にデジタルを乗せているだけである。すべての層がデジタルを前提にした構造に変わることで、社会の生産性が大きく改善し、人生のクオリティが高まる。デジタルを前提にして社会を作り替えていく取り組みをひとつずつやっていくことが、SAJ会長としての任務になる。日本の産業が良くなるように、大所高所から政策に対する要望をしていかなくてはならないと考えている。さまざまな場面でデジタルが不要であるというロビー活動をする人たちがいる。それに対抗するには、私たちも、しっかりとロビー活動をする必要がある。デジタル化をどうすべきかを明確に伝える必要がある」などとした。

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