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科学技術振興機構の広報誌「JSTnews」 第65回

【JSTnews1月号掲載】NEWS&TOPICS 戦略的創造研究推進事業ERATO 酒井複素ゲルプロジェクト

手術後の胆汁の漏れを防ぐ新たなハイドロゲルを開発

2026年01月21日 12時00分更新

文● 中條将典

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 肝臓がんや胆管がんの治療における肝切除手術では、手術後に胆汁が体内に漏れ出す「胆汁漏(たんじゅうろう)」が重大な合併症の1つとして問題視されています。胆汁には血液のような凝固機能がないため、胆汁の漏れを防ぐために止血用ゲルなどが使われていますが、既存の製品では漏出を十分に防げなかったり、肝組織に炎症反応を起こしたりする場合があるため、新しい材料が求められています。

 東京大学大学院工学系研究科の石川昇平助教と酒井崇匡教授らの研究グループは、肝切除後の胆汁漏を防ぐためのハイドロゲルを新たに開発しました。生体適合性が高く、医薬品や化粧品にも利用されている合成高分子「ポリエチレングリコール」を基材として採用。独自の「時間差2段階反応」を編み出し、第1段階で瞬時にゲル化して出血や胆汁漏を遮断した後、遅れて進行する第2段階の反応でゲルと生体組織表面のアミノ基(-NH₂)を化学的に結合させ、長時間安定した接着を実現しました。ラットによる実験では、肝切除後1分以内に止血を達成し、1カ月にわたる観察で胆汁漏は1例も発生しませんでした。さらに、手術後7日間の評価では、炎症や肝障害がほとんど観察されず、組織の境界面の安定した接着が確認されました。

 手術直後の体液漏出の遮断と長期的な安定接着を両立させた今回の成果は、膵(すい)液漏れ、肺切除後の空気漏れ、血管損傷部位の止血など、体液やガス漏出を伴う外科的課題にも展開できると考えられます。さらに、ゲル化時間や接着強度を精密に設計することで、ドラッグデリバリーや再生医療用足場といった分野に発展することも期待されます。

2液を混合すると(左)、ゲルネットワークが形成されて瞬時に固化し(中央左)、続いて徐々に組織表面と化学結合し(中央右)、組織と強固に接着する(右)。

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