午前2時、誰もいない新幹線ホームの「東京駅ミッドナイトツアーの皆様へ」という電光掲示板にワクワクが止まらない夜ふかしツアーに潜入!

文●オシミリン(LOVEWalker編集部)

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電光掲示板

 1日に120万人以上が利用する巨大ターミナル駅・東京駅。地下鉄や在来線が発着するほか、多くの新幹線の起点となっているため、都内に住む人だけでなく、日本全国、そして海外から来た方々も多く利用する駅となっています。

 1日中多くの人でにぎわう東京駅は、終電後、人がいなくなるとどんな様子なんだろう…そんなふうに考えたことはありませんか? そんな思いに応えてくれる、終電後、深夜のJR東日本東京駅を巡る「東京駅ミッドナイトツアー」が東京ステーションホテル主催で開催されました。

終電を迎えたJR東京駅

 重要文化財である東京駅丸の内駅舎内に位置する「東京ステーションホテル」では、10月24日(金)と11月24日(月・祝)の2日間、各日10名限定で「ホテルツアー付き東京駅ミッドナイトツアー宿泊プラン」が開催されました。

 このプランでは、お昼にはホテルツアーを実施。(詳細はこちら→https://lovewalker.jp/elem/000/004/353/4353414/

 そして夜には、このプランの目玉となる、東京駅ミッドナイトツアーが実施されました。

 ミッドナイトツアーは終電後のJR東日本東京駅を巡るということで、スタートは夜中の0時30分。そんな時間に東京駅にいるなんて経験がそもそも初めてのことなので、子供の頃に夜更かしをしたようなワクワク感を覚えます。

 ツアーの始まりとなるのは、丸の内南口のドーム内。天井ドームには美しいレリーフが飾られていますが、人の多い昼間はゆっくり見上げるのも難しいもの。ですが、終電間際ともなると人はほとんど通らず、まるで貸し切り状態で見放題です。

南口ドーム

静かな南口ドーム内は、レリーフの美しさも相まって、厳かな雰囲気すら感じます

 いよいよJR東京駅にこの日最後の電車が到着し、乗客のほとんどが駅をあとにしたところで、南口のシャッターが閉じられていく様子を見学します。改札口を背にして1番左のシャッターから閉まっていき、3つあるすべてのシャッターが閉じられました。シャッターが下りてしまうと、外の音も聞こえにくくなり、ますます静けさが増します。

シャッター

だんだんとシャッターが下りていきます

シャッター

完全にシャッターが閉まりました

ドーム

すべてのシャッターが閉まり、ドーム内に閉じ込められてしまったかのよう!

 すべてのシャッターが閉じられたあと、振り向いて改札を確認すると、どの改札も入れないようになっています。電光掲示板にはすでに、翌日の始発の案内が表示されています。

改札

関係者以外は通れないように終電後は改札が閉ざされています

 ここで一旦通用口を通り外へ。深夜の東京駅丸の内駅舎を眺めます。

東京駅丸の内駅舎

真夜中の東京駅丸の内駅舎

 丸の内駅舎といえば、都内屈指のフォトスポットと言っても過言ではありませんが、普段は観光客や、ウエディングフォトを撮る多くの人たちで賑わっている駅舎前も、さすがに人気がありません。

 ここで、このツアーだけの素敵なサプライズが! なんと、丸の内駅舎がライトアップ!

ライトアップされた丸の内駅舎

ライトアップで照らされた丸の内駅舎、見事です!

 この日はあいにく雨が降ったりやんだりだったのですが、地面がぬれていたおかげで光の反射がとってもきれいでした。

 さて、再び駅舎内に戻ります。ここからはもう駅の中に一般のお客さんはいません。関係者以外立ち入り禁止の深夜の東京駅を巡っていきます!

人のいない東京駅へいざ潜入!

 電車に乗らずに駅の中へ入るには、入場券が必要になりますが、今回は特別に自動改札が普及する前に使われていた「改札鋏(かいさつきょう)」というハサミで入場券に切れ込みを入れてもらいます。

ハサミで入場券に切れ込みを入れてもらう

ハサミできっぷに切れ込みを入れてもらうなんて初めて!

切符

穴の形は駅によって異なっていたそうで、これは実際に東京駅で使用されていた形なんだとか

 いよいよ改札内へ。いつも利用している東京駅に人がいない様子はまるで異空間に迷い込んでしまったかのよう。とはいえ、場所によっては盛んに工事が行われていて大きな音がしているため、ちゃんとここは現実世界だ、とちょっと安心感を覚えます。

東京駅構内

人がいない東京駅、不思議な感じ…!

東京駅構内

いつもはおみやげを買う人でにぎわうグランスタ東京も無人です

エスカレーター

もちろんエスカレーターにも誰も乗っていません

 ところで皆さん、東京駅から新幹線に乗る時、大きな荷物があるのに階段を上らないと行けなくて不便だな…と思ったことはありませんか?

階段

新幹線の改札口に行くには、こういうちょっとした階段を上らないといけないですよね

 実は東京駅にこういうちょっとした階段が多いのは、東京駅が拡張を繰り返し、乗り入れる路線を増やしてきたという歴史があるから。現在東京駅の地上ホームは在来線と新幹線を合わせて10面。しかし、開業時の1914年には4面しかホームがありませんでした。そこから拡張を繰り返す過程で、東京駅周辺の建築物などの状況によって基礎の高さを変えなければならず、こうした状況が生まれてしまったといいます。少し不便に感じられることもあるかと思いますが、階段を上る時、東京駅の歴史に思いをはせてみるのもいいかもしれません。

新幹線ホームへGO!

 続いては東北新幹線のホームへ。ホーム上の電光掲示板にはなんと!「『東京駅ミッドナイトツアー』ご参加の皆様」と、特別なメッセージが流れています。これはテンション上がる!

電光掲示板
電光掲示板

翌日の始発列車の案内の下に、このツアー限定のメッセージが流れています

 また、この日訪れた20・21番線ホームの地面には、タイルでこんな模様が描かれています。

タイル

地面にあるタイル

 タイルの真ん中をよく見てみると「0Km POINT」と書かれているのが分かりますか? 電車の路線には、起点駅からの距離を示す距離標(キロポスト)という標識が設置されています。起点駅の場合はもちろん起点からの距離は0キロ。そのため「0キロポスト」が設置されるのですが、多くの路線の「起点駅」となっている東京駅では、起点であることを示す「0キロポスト」が数多くみられます。このタイルも、ここが「0キロポスト」であることを示すもの。実際に視線を横に向けて路線の方を見てみると、そこにも「0K000」と表示があります。

0キロポスト

東京駅の0キロポストには凝ったデザインのものもあるそうなので、いろいろ探してみるのも楽しそう!

 そして、ホームには運よく新幹線が停まっていました! 誰もいない新幹線の写真を撮れるっていうだけでも貴重ですよね。

新幹線

間近で見る新幹線、かっこいい!

震災復興への願いを込めた石絵

 最後に訪れたのは、JR東京駅丸の内地下南口の動輪の広場付近に展示されている「輝く」というアート作品の前。この作品は、宮城県石巻市雄勝産の天然スレートという石材を20㎝角に加工したものに、1枚ずつ雄勝の小学生たちが着彩したものを組み合わせた石絵です。

石絵

鮮やかな富士山が描かれた石絵

 スレートは硯などに使用される素材ですが、建造物の屋根に使用されることもあり、丸の内駅舎の屋根にも使用されています。丸の内駅舎を創建時の姿に戻すために行われた復原工事でも一部雄勝産のものが使われたのですが、復原工事の完成は2012年。工事期間中に、雄勝にも甚大な被害をもたらした東日本大震災が発生しました。そのため、スレートの多くが津波で流されてしまうという被害も発生。こういった事情があったことから、復興への思いを込めたシンボルとしてこの作品が制作され、縁のある東京駅に設置されたということです。

 いつも利用している東京駅に、そんな思いが込められた作品があるとは知りませんでした。

 さあ、楽しかったツアーもついに終わりの時です。0時30分に集合し、終了したのは3時前。約2時間半という長丁場、しかも普段なら布団に入っていてもおかしくない時間でしたが、それを感じさせないほどのワクワクが止まらないツアーでした。

 このツアーは東京ステーションホテルが110周年を迎えることを記念して企画されたツアーだったため、今後の開催は未定とのこと。ですが、こんなに楽しいツアー、2回限りで終わってしまうのはもったいないような気がします。今後の開催を期待したいですね。

 真夜中の東京駅を歩くツアー、大満足の夜更かしとなりました!

東京駅

翌朝の東京駅。今日もたくさんの人が東京駅を利用しているんだろうなあ

東京ステーションホテル
住所:東京都千代田区丸の内1-9-1


文 / オシミリン(LoveWalker編集部)

大阪生まれ。
趣味は読書と写真を撮ること、おいしいものを食べておいしいお酒を飲むこと。