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科学技術振興機構の広報誌「JSTnews」 第43回

【JSTnews11月号特別版】

北川進博士がノーベル化学賞を受賞

2025年11月18日 12時00分更新

文● 科学技術振興機構(JST)

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北川進博士/京都大学理事・副学長/高等研究院特別教授(写真提供:京都大学高等研究院)

 2025年のノーベル化学賞を、北川進博士(京都大学理事・副学長/ 特別教授)ら3氏が受賞することが決まった。授賞理由は「金属有機構造体(Metal-Organic Frameworks(メタルオーガニックフレームワークス)、MOF)の創出」。二酸化炭素(CO2)や水素(H2)などさまざまな気体を効率良く分離・貯蔵するMOFを開発した。JSTは戦略的創造研究推進事業ERATO「北川統合細孔プロジェクト」などを通じ、現在に至るまで、材料化学の新分野を切り開く北川博士の研究を応援し続けてきた。MOFには、環境浄化や化学工業などへの応用に強い期待が寄せられている。世界が認めた独創的な成果が本格的な社会実装につながることを願いたい。

「MOF」とは?

 炭素を含む有機化合物と銅などの金属イオンから成り、ナノサイズの分子が入る無数の孔(あな)を持つ構造体。金属イオンを溶かした溶媒に相手となる有機配位子を加えると、自己集合的に構造体が成長する。配位子や金属イオンの種類を変えると、孔のサイズや性質を自在に調節し、目的の物質のみを閉じ込めることができる特徴がある。

 多孔性材料に欠かせない規則的な構造を保ちながら柔軟性も備えていることから、以前からある無機物の活性炭やゼオライトを超える新たな多孔性材料としてさまざまな応用が進む。MOFは化学賞を共同受賞する米カリフォルニア大学バークレー校のオマー・ヤギー教授の命名。北川博士は多孔性配位高分子(Porous Coordination Polymer(ポーラスコーディネーションポリマー)、PCP)と名付けた。

MOFの模型。金属イオン(銀色の玉)と有機分子(玉をつなぐ棒)からできている。性質の違う有機分子(棒の色の違いで表している)を組み合わせることで、さまざまな気体分子を直方体の隙間に入れ込むことができる。

一酸化炭素(CO)だけを選択的に吸着するMOF。粉末では使いにくいため板状にするなどの加工を施してから試験機に装着する。青い色は、使われている銅イオンに由来する。

JSTとの関係

2007年~14年
戦略的創造研究推進事業ERATO「北川統合細孔プロジェクト」 研究総括
2012年~18年
戦略的創造研究推進事業 研究領域「低エネルギー、低環境負荷で持続可能なものづくりのための先導的な物質変換技術の創出」(ACT-C) 研究代表者 ※事業は18年3月に終了
2013年~18年
戦略的創造研究推進事業ACCEL「PCPナノ空間による分子制御科学と応用展開」 研究代表者 ※事業は22年3月に終了
2013年~14年
研究成果展開事業研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)「イオン伝導性配位高分子を用いた燃料電池への応用研究」 研究責任者
2015年~20年
A-STEP「イオン伝導性配位高分子を電解質に用いた燃料電池の研究開発」 研究責任者
2020年~23年
A-STEP「多孔性配位高分子を用いた高性能メタン吸着材料の開発」 研究責任者
2024年~
戦略的創造研究推進事業さきがけ「材料の創製および循環に関する基礎学理の構築と基盤技術の開発」研究領域研究総括
2024年~
戦略的創造研究推進事業ERATO 選考・推進パネルオフィサー
2025年~
グローバル卓越人材招へい研究大学強化事業(EXPERT-J)京都大学 事業統括

ERATOからACCELへ、基礎研究をリード

 JSTと北川博士の関係は長く、MOFに関する基礎研究と、それらの実用化に向けた研究開発が進展してきた。2007年12月から約6年にわたり、北川博士はJSTの戦略的創造研究推進事業ERATO の研究総括として「北川統合細孔プロジェクト」を指揮。新しい機能を持つMOFを次々と生み出し、学術界や産業界にインパクトを与えた。12年10月から5年間は、戦略的創造研究推進事業の研究領域「低エネルギー、低環境負荷で持続可能なものづくりのための先導的な物質変換技術の創出」(ACT-C)における研究課題「多孔性配位高分子を反応場に用いたメタノール合成の開発」の研究代表者として、MOFを触媒として使う先導的な物質変換技術の研究を進めた。

 2013年12月からは、JSTが新たに始めた戦略的創造研究推進事業ACCELで「PCPナノ空間による分子制御科学と応用展開」の研究代表者を務めた。ERATO「北川統合細孔プロジェクト」の研究成果を発展させ、MOFのガス吸蔵・放出能力を最大限に生かし、省スペース・省エネルギーで高効率なガス分離技術の実現に向けた研究開発に取り組んだ。選択性向上を目指すだけでなく、特殊な元素を含まないより安価なMOFの開発や大量合成、性能評価や実用化のため、粉体であるMOFを成形する技術開発に着手するなど、プログラムマネージャーと共に産業応用に向けた取り組みも進めた。

燃料電池、メタン吸着…A-STEPで実用化へ 

 こうした基礎研究の成果を基に、北川博士は2013年12月から1年間、研究成果展開事業研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)(シーズ顕在化タイプ)の研究課題「イオン伝導性配位高分子を用いた燃料電池への応用研究」を進めた。15年11月にはA-STEP(シーズ育成タイプ)にも採択され、同年12月から4年余りにわたった研究課題「イオン伝導性配位高分子を電解質に用いた燃料電池の研究開発」で、また、20年12月からの約2年はA-STEP産学共同(本格型)の研究課題「多孔性配位高分子を用いた高性能メタン吸着材料の開発」で、企業責任者と共に、それぞれ実用化を目指した産学連携による研究開発を率いた。

 さらに2024年4月からは、戦略的創造研究推進事業さきがけの「材料の創製および循環に関する基礎学理の構築と基盤技術の開発」研究領域で研究総括を務め、環境問題や資源問題に関する材料の創製および循環に関する基礎学理の構築と基盤技術の開発に向けて、後進の育成にも精力を注いでいる。また、25年からJSTが新たに開始した、海外機関で活躍する優秀な若手研究者を世界水準の処遇で日本のトップレベルの大学に招へいまたは受け入れるグローバル卓越人材招へい研究大学強化事業(EXPERT-J)で、京都大学の事業統括を務め、日本全体の研究力の強化にも取り組んでいる。

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