ほぼ毎年、Hot Chipsでなにかしらの新製品を発表するIBM。といっても2024年はzシリーズのTelum IIであり、Powerシリーズは2020年のHot Chipsで公開されたPOWER10まで遡ることになる。Power11は実に5年ぶりの新製品という格好だ。
Powerシリーズはzシリーズと並ぶIBMのメインフレーム向けプロセッサーである。余談だが以前は"POWER"と全部大文字だったが、今回のスライドは全部"Power"に変わっている。以前はPowerPCシリーズとの誤解を避けるためか全部大文字だったが、PowerPCが事実上消滅した現在となってはもう誤解もへったくりもないということか?
| zシリーズとPowerシリーズの違い | ||||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| z | 高い信頼性とセキュリティを特徴とし、ビジネスやミッションクリティカル、高頻度トランザクションといった用途に向けたもの。CISCベースのアーキテクチャー。 | |||||
| Power | AIやビッグデータ、最近だとクラウドネイティブアプリケーションとかMicroservicesなどに向けたプロセッサーで、RISCベースのアーキテクチャー。 | |||||
実のところ現時点でzシステムとPowerシリーズでは、その境界があいまいになっている。本来の差別化要因は上表のとおりだが、そのPowerもzシリーズ並みの高信頼性やセキュリティを搭載するようになってきており、一方zシリーズも命令セットこそCISCながら(x86同様に)内部のパイプラインはRISCベースになっているわけで、もう純粋に命令セットの違いになるかもしれない。
ちなみに信頼性に関して言えば、少し古いデータだがITIC(Information Technology Intelligence Consulting Corp.)が2023年8月に出した"ITIC 2023 Global Server Hardware, Server OS Reliability Report"というレポートによれば、IBM z16が1月あたりのダウンタイム(運用が止まった時間)が3.15ミリ秒、IBMのPOWER10は315ミリ秒とされている。
この数字だけ見ればzはPowerの100倍信頼性が高い、という言い方もできるわけだが、そのPowerも1ヵ月間の平均ダウンタイムが1秒未満ということで、十分高い信頼性を確保できているともいえる。
したがって、その信頼性を核に現在では珍しいスケールアップ方向の改良を重ねているPowerシリーズの最新が、今回説明するPower11である。
障害からの回復性能が高い
IBMのサーバー用プロセッサー「Power11」
そんなPower11であるが、基本的な部分はPOWER10と大きな違いはない。もともとPOWER10の段階で実装されていたEnterprise FoundationとAI Infusionはそのまま継承しつつ、CPUコアの改良とコア密度の向上、実装方法などを図った。加えてセキュリティの強化やメモリーアーキテクチャーの改良も施されたとする。
Enterprise Foundationの説明。PowerAXON経由のマルチプロセッサー構成、それとOMIを利用した広帯域なメモリーの両方でスケールアップに対応する。コアは6命令解釈/4命令実行のスーパースカラーである
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