【JSTnews10月号掲載】NEWS&TOPICS 戦略的創造研究推進事業 さきがけ/研究領域「 物質探索空間の拡大による未来材料の創製」 研究課題「 電場による非平衡反応場を利用した合成化学」
抗菌・抗ウイルス性のある「人工ヘチマスポンジ」を開発
2025年10月15日 12時00分更新
少ない資源量で大きな物体を作ることができる低密度・多孔質ポリマーは、持続可能な未来の実現において重要だと目されています。しかし既存の人工多孔質ポリマーは乾燥状態でも力学強度が小さく、もろいことが難点でした。
東京大学大学院工学系研究科の伊藤喜光准教授らの研究チームは「ヘチマスポンジ」に似た3次元の網目構造を持ち、乾燥状態での密度が通常のポリマーの半分程度の薄膜を開発しました。材料の硬さを表すヤング率は通常の樹脂の約3~4倍。これほど強靭(きょうじん)な人工の多孔質ポリマー材料は、特殊加工された繊維を除けば史上初ということです。
市販の安価な試薬であるレゾルシノール(C₆H₆O₂)とホルムアルデヒドの水溶液に電極を入れ、5ボルトの電圧をかけると、正極の表面全体を均一に覆う形で重合反応が進行。厚さ70ナノメートル(ナノは10億分の1)の薄膜が無欠陥で生成されます。反応が進む際には、溶液中のモノマーとポリマーが共に負に帯電し、正極上に集積します。モノマーやポリマーは電荷によって互いに反発し合うため、隙間が生まれて多孔質化する仕組みです。
この薄膜は、軽量・超強靭であるだけでなく、アルカリ性溶液の中では柔らかく膨らむ性質のほか、抗菌・抗ウイルス性を併せ持っています。水溶液のpHに応じて物質透過のオン・オフを自動的に切り替えるスマート膜分離への応用や、感染防止フィルターへの展開なども見込まれます。

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