ビーガンは富裕層の道楽? 庶民の味方“納豆菌”が食の格差を覆す
お腹にもお財布にもやさしい、日本流プロテイン
ビーガン食って、正直ちょっとセレブでおしゃれなイメージが先行しすぎて、逆にアンチを育ててる気がする。けれど、日本は昔から豆腐や納豆を日常的に食べてきた国だ。というのも、私は決してビーガンではないのだが、この夏は猛暑で胃腸が弱り、やむなく豆腐や大豆ミートのお世話になった。大豆タンパクはお腹にもお財布にもやさしく、お肉やお魚より効率よく吸収できるので、栄養不足の心配もいらない。
持続可能なたんぱく質という課題
ところで、過去のビーガンは「動物愛護」というイメージが強かったが、いま世界で注目されているのは、地球環境や資源問題の観点からの「持続可能なタンパク源」だ。
2024年のWWFレポートによると、2050年には世界人口が現在の約1.6倍に増え、それに伴い食料需要は約2倍に膨らむと予測されている。特にタンパク質は、肉や魚に依存すればするほど飼料や水、土地を消費し、温室効果ガスも大量に排出してしまう。畜産に頼り続けるのは、環境的にも経済的にも限界が見え始めている。
最近は大豆などを使った代替肉や培養肉なども出回るようになってきたが、どれもまだ高価で、現状は先進国の一部でしか手に入らない。食糧不足に直面する地域や、紛争地で必要とされる「安くて安定的に作れるタンパク質」には、まだ届いていないのが実情だ。
ご利益ありそうな、納豆菌の粉「Kin-pun」
そんな中で、「安くて、どこでも、すぐ作れるタンパク質」として注目されているのが、日本の庶民の味方・納豆菌だ。慶應義塾大学先端研発のフェルメクテス株式会社は、この身近な微生物を“食べられる粉末”に変えることに成功した。その名も「kin-pun(菌粉)」。
納豆菌は成長スピードが驚異的で、条件さえ整えば15〜30分で倍増する。畑も牧草地もいらないから、土地や水の制約をほとんど受けない。さらに、米ぬかや酒粕、ホエイといった副産物を培地に利用できるため、既存の食糧生産と循環させることも可能だ。
粉末化された「kin-pun」は、グルテンフリーで高タンパク質。干し納豆のタンパク質含有量が33%程度なのに対し、菌粉は60%以上という高い栄養価を誇る。しかもパンや麺、菓子、ソースなど、さまざまな食品に混ぜ込んで活用できる。
日本の食卓を支えてきた納豆が、地球から宇宙へ
フェルメクテスは、プレシリーズAで約2.5億円を調達し、量産体制の構築も進めている。納豆は、日本で千年以上ものあいだ庶民の健康を守ってきた実績がある。次は地球規模で人類のタンパク危機を救う役割を担おうとしている。
ちなみに納豆菌は、宇宙空間でも生き延びるほどタフな微生物として知られている。もし将来、火星での食糧生産が始まるとしたら、最初の“開拓者”は納豆菌かもしれない。








































