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宇宙をインターネットのように身近に スペースデータ佐藤航陽氏が描く宇宙の民主化

SPACETIDE 2025セッションレポ―ト

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 今回で10周年を迎えた民間宇宙カンファレンス「SPACETIDE 2025」が、2025年7月7日~10日に東京の虎ノ門ヒルズフォーラムで開催。8日には株式会社スペースデータ代表取締役社長の佐藤航陽氏が「デジタル技術を活用した宇宙の民主化とデュアルユース」と題した講演を行なった。

 IT業界で約15年間を過ごした後、宇宙業界を「次のフロンティア」と見定めて参入した佐藤氏は、現在の宇宙産業を「専門的に難しく、参入ハードルが高く、儲からない」という分野であると分析した。佐藤氏は、このような宇宙産業を専門性がなくても気軽に参入できる、現在の「インターネットのように身近にしていく必要がある」と言及した。この「宇宙の民主化」を実現するため、スペースデータでデジタルツインとシミュレーショターによる、「誰でも触れる宇宙のバーチャル実験場」の構築を進めている。

株式会社スペースデータ代表取締役社長 佐藤航陽氏

 たとえば国際宇宙ステーション(ISS)の船内外を再現し、仮想空間上の挙動シミュレーションにより、「実機を打ち上げなくても宇宙開発ができる」可能性を示した。この「宇宙ロボットシミュレーター」は一般にも提供されており、世界中で利用され宇宙を身近に感じる機会になっている。さらに生成AIを活用し、大規模な3Dモデルの自動生成や、高速な物理シミュレーションを可能にし、仮想社会、人間生活を用いた社会実験にまで応用。AIとデジタルツインの融合による「自己進化するエコシステム」の構築を目指し、最終的に「森羅万象」を計算する「プラネタリーコンピューティング」を技術ビジョンとして掲げている。

 もうひとつの重要なアプローチを「デュアルユース(軍民両用)」の推進であると、安全保障分野の技術を民生転用、また民間の先端技術を安全保障に活用する相互恩恵の世界が必要と解く。佐藤氏は、これまでの宇宙業界が「科学技術の振興に寄りすぎている」とし、安全保障や産業利用も視野に入れた開発の必要性を訴え、「安全保障」、「科学」、「産業」を融合していく重要性を強調した。すでに同社は国連と連携した世界1800以上の都市での防災計画シミュレーションや、国土交通省の3D都市モデル「PLATEAU(プラトー)」と連携する地図作成などの事例を創出し、人々の生活を守る基盤強化を目指している。

 佐藤氏は、宇宙技術が実際に「人々の命を守る」ような「鍵の技術」となるべき、宇宙はインターネットのような「誰もが必要とする産業」へと進化し、真に民主化されていくと締めくくったと述べた。今回、民間宇宙館ファンレンスのSPACETIDEが10周年を迎える節目に、日本において防衛や産業だけでなく、宇宙がより身近な存在へと連携を進める事例が増えるであろう見通しを示していた。

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