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連載:今週の「ざっくり知っておきたいIT業界データ」 第190回

IT市場トレンドやユーザー動向を「3行まとめ」で理解する 6月21日~6月27日

日本企業のDXには“成果を測る指標”が足りない/アジェンダ、スキーム、KPI… 横文字多用文化は「一体感」も生む? ほか

2025年06月30日 08時00分更新

文● 末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 本連載「ざっくり知っておきたいIT業界データ」では、過去1週間に調査会社などから発表されたIT市場予測やユーザー動向などのデータを、それぞれ3行にまとめてお伝えします。

 今回は(2025年6月21日~6月27日)、日本・米国・ドイツ企業における「DXの取り組みと成果」の比較、Webサービスなどへのログイン体験に対する消費者の評価、堅調に成長する国内サービス市場、他業界からSaaS業界に転職した人が感じる“ビジネス用語の多用”文化についてのデータを紹介します。

[DX] 日本・米国・ドイツ企業のDX比較、日本は“内向き”型で他国より「成果が出ている」割合が低い(IPA:情報処理推進機構、6月26日)
・DXの「成果が出ている」企業、日本は6割弱、他国は8割超と大きな差
・日本は「コスト削減」など内向き型、他国は「売上/利益増」を狙う外向き型
・日本は他国と比べて「DXの成果を把握する指標」の設定率が大幅に低い

 日本・米国・ドイツの企業を対象に、DXの取り組みや成果などについて調べた「DX動向2025」より。DXに取り組む企業の割合は3カ国とも同水準だが、米国・ドイツは「DXの成果が出ている」企業が8割超に達し、日本の6割弱と差がある。日本の取り組みは「コスト削減」「製品提供日数削減」といった“内向き”の取り組みが中心である一方、米国・ドイツは「売上/利益の増加」「顧客満足度向上」など“外向き”の成果が多い。そのほか「DXの成果指標」「DX人材の充足率」などの点でも大きな違いがあると指摘している。

 ⇒ 日本で進むDXが、社内の業務改善にとどまる“内向き”型、という指摘は納得ではないでしょうか。調査では、米国・ドイツが「全社最適化」を目指す一方で、日本は「個別業務の最適化」になりがちという指摘もあります。まずは成果を測定する指標の設定からスタートすべきかもしれません。

DXの取り組み状況(上の3つが、2022~2024年度の日本)。全社的にDXに取り組む企業の比率は、米国やドイツ(下の2つ)と変わらない(出典:IPA)

DXの成果。日本(上3つ)も6割弱が「成果が出ている」とするが、米国やドイツ(下2つ)とは大きな格差が生じている(出典:IPA)

経営面での成果。日本(黒線)は「コスト削減」だけに大きく偏る。米国(赤線)やドイツ(緑線)は「売上高増加」「利益増加」「顧客満足度」を主目的とする(出典:IPA)

DXの成果を把握する指標の設定。日本は「設定していない」が63.5%と最多。一方、米国やドイツは「設定している」が最多で対照的だ(出典:IPA)

[セキュリティ][ユーザー体験] 「ログインに不満でも使い続ける」日本の消費者、パスワード重視の姿勢は変わらず(Okta Japan、6月25日)
・「長いサインアップ・ログインフォーム」が最大の不満要因、世界は62%、日本は71%が回答 ・日本の離脱率は17%、世界平均23%を下回る ・パスワードは「安全性」評価が低いが「利便性」でトップ、パスワード再利用率71%と高リスク状態

 世界9カ国の消費者・6750人を対象に、Webサービスなどへのログイン時の体験(ログイン体験)についての評価を調査した「Customer Identity Trends Report 2025」より。日本の消費者の「ログイン体験に対する不満」は深刻で、71%の消費者(調査国中最多)が「長いサインアップ・ログインフォームへの入力」に不満を持っている。そのほかにも、文字数や文字種などの「パスワード要件」にも61%(世界平均46%)、「アカウント作成・ログイン時間」60%(世界平均47%)など、高い不満率を記録。ただし、「ログイン問題でオンライン購入を断念」した経験は17%(世界平均23%)と低く、日本の消費者の“不満があっても使い続ける”特異な姿が浮き彫りになった。

 ⇒ “不満があっても使い続ける”という結果は不思議ですが、利用できるサービスの選択肢が少ないからでしょうか。デジタルの“おもてなし”は苦手という、日本の特徴がかいま見えます。前出のDX調査でも、DXを通じて「顧客満足度」を向上させる取り組みをしている企業は少数(22.7%)でした。

個人アカウントにサインアップやログインする際に不満を感じること(青色:世界平均、水色:日本)(出典:Okta Japan)

「便利」だと思う認証要素。近年は生体認証なども普及しているが、相変わらず「パスワード」がトップ(出典:Okta Japan)

「安全」だと思う認証要素。こちらでは「指紋認証」がトップとなり、「パスワード」は5位に(出典:Okta Japan)

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