連載:今週の「ざっくり知っておきたいIT業界データ」 第189回
IT市場トレンドやユーザー動向を「3行まとめ」で理解する 6月14日~6月20日
IT技術者の生成AI「実装経験」はまだ少数/日本人の70%が感じる「国の衰退」/メーカー研究者の情報収集は様変わり、ほか
2025年06月23日 08時00分更新
本連載「ざっくり知っておきたいIT業界データ」では、過去1週間に調査会社などから発表されたIT市場予測やユーザー動向などのデータを、それぞれ3行にまとめてお伝えします。
今回は(2025年6月14日~6月20日)、ITエンジニアの「生成AIスキル習得」の現在地、堅調なデータプラットフォーム市場、ポピュリズムの背景となる自国の現状への各国民意識、2024年のAIインフラ市場が2倍超の成長を見せた理由、製造業の研究者/製品開発担当者の情報収集手段の変化についてのデータを紹介します。
[エンジニア][スキル] ITエンジニアの8割超がAIスキル習得を希望、ただし「何を学べば?」の声も(サーバーワークス、6月17日)
・ITエンジニアの8割超が「生成AIスキルを身につけたい」と回答
・現状の生成AIスキル、「基礎用語の理解」レベルが多く「実装経験」は少数
・最も学びたいスキルは「アプリや業務への組み込み方法」(44.8%)
企業勤務のITエンジニア279名を対象に「生成AIスキル」を尋ねた調査。生成AIに対する知識レベルは、「基礎用語は知っている」が最多の31.7%。一方で「業務で活用・導入経験がある」は18%、「生成AIの実装・開発経験がある」5.4%にとどまる。生成AIの知識がある232名のうち、81.5%がスキル習得を希望しており、具体的には「アプリケーションや業務への組み込み方法」(44.8%)、「プロンプトエンジニアリング」(37.1%)、「LLMの仕組み」(32.8%)を学びたいとの声が多い。ただし「何を学べばいいのかわからない」も16.4%あった。
⇒ 技術が日進月歩で進化している生成AIの世界。情報のキャッチアップだけでも大変な分野なので、「何を学べば……?」という戸惑いも無理はないと言えそうです。
[データ] データプラットフォーム市場、AI活用拡大などが後押しして年平均7.7%で成長(IDC Japan、6月17日)
・2025年の国内データプラットフォーム市場予測、前年比7.7%増の7371億円
・2024~2029年の年平均成長率(CAGR)は7.7%、2029年には1兆円近い規模に
・「AI技術進化」と「データガバナンス強化」のニーズが市場成長を牽引
データの統合、保存、管理、ガバナンスの基盤を提供するデータプラットフォームの国内市場予測。2025年のソフトウェア売上規模は、前年比7.7%増の7371億円と予測。企業においてデータドリブンな意思決定が浸透し、データ基盤への継続投資も見込まれるため、市場は2024~2029年の間、年平均成長率7.7%で推移し、2029年には9934億円規模に達すると見込む。今後は生成AI、AIエージェント、マルチエージェントシステムの発達で、データ活用の場面が大きく拡大し、企業は高度な分析/予測/業務自動化に向けて、データプラットフォームの刷新や機能拡張を進めるとみている。
⇒ データの「活用」が進展するのと並行して、データライフサイクル管理、データセキュリティ強化、データ/AI利用の規制順守など、「データ運用におけるリスク管理」の重要性も高まっているとのこと。
[社会][政治] 日本人の70%が「国が衰退している」と感じる、31カ国3位(イプソス、6月18日)
・「自国は衰退している」と感じる日本人は70%、9年前調査の約1.8倍に
・「既存の政党や政治家は私を気にかけていない」も68%、9年前の約1.7倍
・「社会が崩壊している」は53%で22ポイント増、調査国の中で最高の増加率
世界31か国、2万人超を対象に調べた「ポピュリズムレポート2025」より。「自国は衰退している」と感じる日本人は70%で、調査を開始した2016年から30ポイントの増加(約1.8倍)。これは調査対象国中で3番目に高い数字。「既存の政党や政治家は、私のような人間を気にかけていない」も68%で、2016年比で29ポイント増加(約1.7倍)。過去の推移を見ると、特に2019年から2021年にかけて急上昇しており、コロナ禍を経て「政治への期待感」が回復していない状況が浮き彫りに。また「自国の社会は崩壊している」は53%で、2016年の31%から22ポイント増加。増加率としては調査対象国中で最高となった。
⇒ イプソスでは調査結果に対し、政治に期待できない、将来や夜会に不満や悲観論を抱く人が増えており、日本は他の主要国と比べてもその傾向が顕著だと指摘しています。
[インフラ][AI] 2024年の国内AIインフラ市場は前年の2倍以上に、牽引役は「GPU助成金」(IDC Japan、6月19日)
・2024年の国内AIインフラ市場、前年比120.0%増で5000億円近い規模に
・経済産業省の助成金もあり、国内クラウド事業者のGPUサーバー投資が加速
・2025~2029年の年平均成長率は5.7%、「政府の支援」「人口減少対策」が牽引
AI学習/推論向けのサーバー、ストレージで構成されるAIインフラ市場の実績と予測。2024年の国内市場規模は、前年比120.0%増の急成長となり4950億円に達した。内訳はサーバーが4780億円(前年比122.0%増)、ストレージが170億円(同75.6%増)。背景としては、国内のクラウドサービスプロバイダーにおけるGPU搭載サーバーを中心としたAI基盤投資の加速、グローバルサービスプロバイダーの日本国内への投資強化などがある。続く2025年の市場規模は前年比3.5%増の5120億円、2029年まで年平均成長率5.7%で推移し、6530億円に到達すると予測。
⇒ 国内でAIインフラ投資が急加速した背景には、「経済安全保障推進法」に基づく経済産業省の国産GPUクラウドサービス事業者支援があります。最大助成額は合計1250億円超に及び、各事業者のぶんも合わせると投資額はその2~3倍という規模です。
[製造][検索][生成AI] メーカー研究者の情報収集手段、「生成AI」「YouTube」など時代を反映(テクノポート、6月17日)
・大手メーカーの研究者/開発者、技術情報収集の手段で「生成AI」が2割超に
・従来の「展示会」「論文」に加えて「ウェビナー」「YouTube」などチャネルは多様化
・「問題解決のための調査」でも、4人に1人が生成AIを活用
大手製造業に勤務する研究者/製品開発担当者269名に、技術情報の収集方法などを聞いた。日常的な技術情報の収集手段として、ChatGPTなどの「生成AI」を活用するとした回答者は21.2%。特に「概念整理」「原理の把握」といった初期フェーズで活用されているという。情報収集チャネルも、従来の「展示会」(49%)や「論文」(37%)に加え、「ウェビナー」(33%)、「YouTube」(19%)など多様化している。
⇒ 今回の調査は製造業の技術情報を対象にしていますが、それ以外でも生成AIは新たな情報検索ツールとして、またウェビナーやYouTubeは新たな情報収集チャネルとして定着化しているのではないでしょうか。

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