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連載:今週の「ざっくり知っておきたいIT業界データ」 第185回

IT市場トレンドやユーザー動向を「3行まとめ」で理解する 5月17日~5月23日

「AI普及によるセキュリティリスク」企業IT担当者は警戒/大学生の就職先選びは「給与」より「勤務地」重視、ほか

2025年05月26日 08時00分更新

文● 末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 本連載「ざっくり知っておきたいIT業界データ」では、過去1週間に調査会社などから発表されたIT市場予測やユーザー動向などのデータを、それぞれ3行にまとめてお伝えします。

 今回(2025年5月17日~5月23日)は、企業のセキュリティ担当者が警戒する「AIのセキュリティリスク」、来春卒業予定の大学生に聞いた就職人気企業と選定ポイント、「第3のプラットフォーム」の市場規模についてのデータを紹介します。

[AI][セキュリティ] 「AI活用による情報漏洩リスク」をセキュリティリーダーの過半数が懸念(ガートナージャパン、5月22日)
・セキュリティリーダーの56.6%が「AI活用で情報漏洩のリスクが高まる」と懸念
・63.3%が「ビジネス部門の従業員は、セキュリティ当事者意識が低い」と指摘
・ビジネス現場で「データ活用」と「データ保護」の両方を醸成する工夫を

 国内セキュリティリーダーへの情報漏洩対策に関する調査より。AI/生成AI/AIエージェントの活用により、これまで以上に情報漏洩が発生することが不安、という回答が56.6%を占めた。一方で、従業員は情報漏洩対策の責任はセキュリティ部門にあるとし、自分自身の役割と責任を自覚していないという回答は63.3%に達している。

 ⇒ 今年は“AIエージェントの年”と言われ、導入機運も高まっていますが、情報漏洩などのセキュリティに関する議論、エンドユーザーへの啓蒙もセットで進める必要がありそうです。

生成AI/AIエージェント活用における情報漏洩リスクの捉え方(出典:ガートナージャパン)

「現場ユーザーはセキュリティの役割と責任を自覚していない」と見るセキュリティ担当者が63.3%(出典:ガートナージャパン)

[AI][セキュリティ] 約70%の企業が「AIの急速な普及は最大のセキュリティ懸念」(タレスDISジャパン、5月21日)
・約70%の企業が、最大のセキュリティ懸念は「生成AIなどAIの急速な普及」
・「AI特化型セキュリティツール」に投資している企業は73%
・世界では攻撃手法の3位に後退した「ランサムウェア」、日本ではまだ2位

 世界21カ国/15業界のIT/セキュリティ担当、3100人への調査に基づき最新のデータセキュリティ脅威、トレンドなどをまとめたレポートより。多くの企業が生成AIの活用/統合で業務変革を進めている一方で、「急速なAIの普及」がセキュリティ上の最大の懸念としている。7割超の企業がAIに特化したセキュリティツールに投資しているが、購入手法は「クラウド事業者から」(3分の2)、「既存セキュリティベンダーから」(5分の3)など多様化している。

 ⇒ 世界では「ランサムウェア」は3位に後退しましたが、日本では相変わらず2位(1位:マルウェア、2位:ランサムウェア、3位:フィッシング)と報告されています。

[就職] 4大生が希望する就職先、選定ポイントで「勤務地」が「給与」を上回る(リスクモンスター、5月21日)
・就職したい企業トップ3は「地方公務員」「国家公務員」「三井住友銀行」
・トップ20には化学工業3社、飲食製造業2社、電気機器製造業2社などがランクイン
・就職先選定で気になる点のトップ3は「勤務地」「給与額」「福利厚生」

 2026年3月卒業予定の大学3年生を対象とした「就職したい企業・業種ランキング」調査。人気トップの「地方公務員」(10.8%)、2位の「国家公務員」(6.9%)は7年連続でのワン・ツーを堅守したが、ほかの上位企業は大きな変動を見せた。就職先の選定で気になる点として、長年にわたり“不動の1位”だった「給与額」が大幅減(前回52.0%→今回32.3%)で2位に後退し、「勤務地」(前回23.9%→今回32.6%)がトップに。

 ⇒ 厚生労働省によると、2024年平均有効求人倍率は1.25倍で“売り手市場”が続いています。選定ポイントで「給与額」を選ぶ学生が大きく減った背景が気になります。

第11回「就職したい企業・業種ランキング」トップ20(出典:リスクモンスター)

就職したい企業の選択理由(出典:リスクモンスター)

文理別ランキング(出典:リスクモンスター)

就職先選定で気になる点(出典:リスクモンスター)

[デジタル化] 「第3のプラットフォーム」国内市場規模予測、トランプ関税の影響は少ない?(IDC Japan、5月21日)
・「第3のプラットフォーム」2025年の国内市場規模は前年比9.0%増、27兆7040億円
・2024~2029年のCAGR(年間平均成長率)は5.5%
・産業別では消費者直結の「小売」「運輸」「個人向けサービス」が平均を上回る

 「第3のプラットフォーム」※注の国内市場予測。2025年の市場規模(支出額ベース)は、前年比9.0%増の27兆7040億円を見込む。地政学的な不確実性、景気悪化リスクなどの不安要素はあるものの、「レジリエンスの強化」や「脱炭素化の取り組み」に積極的な産業/企業が牽引するかたちで、デジタルビジネス向け投資が継続するとみる。

 ⇒ なおIDCでは、米国の“トランプ関税”の影響に関しては「日本国内におけるIT/デジタル支出への影響は比較的軽微」と予測しています。

※注「第3のプラットフォーム」:IDCが提唱。「クラウド」「モビリティ」「ビッグデータ/アナリティクス」「ソーシャル技術」という4つの主要技術で構成される技術プラットフォームと、その上に展開される「AI」「AR/VR」「IoT」など7種のイノベーションアクセラレーター技術からなる市場を指す。

国内第3のプラットフォーム市場、支出額予測(出典:IDC Japan)

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