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夜は発電できない。太陽光の限界を補う“メタン発電”という選択肢

特集
未来を変える科学技術を追え!大学発の地味推しテック

「いつか田舎で、自給自足の暮らしをしたい」

 そんな夢を描いたことがある人は多いだろう。太陽光で電気をまかなえば、オフグリッドな暮らしも夢じゃなさそうな気がする。

 しかし、現実はそう甘くない。「曇りや雨の日は?」「夜はどうする?」「冬の光熱費は足りる?」――。“再エネ=太陽光”という選択肢には、意外なほど多くの“穴”がある。いざ実現しようとすると、電気、水道、トイレ、あらゆる現実的な課題が次々と立ちはだかる。

太陽光だけでは足りない。再エネの“穴”を埋める技術

 太陽光や風力ではまかないきれない、そんな“再エネの穴”を埋める存在として、いま「メタン発電」が再び注目されている。 愛知県の大学発スタートアップ、株式会社豊橋バイオマスソリューションズが開発するのは、家畜の糞尿からメタンガスを取り出して発電する小型バイオマス装置。メタン発電は以前からある技術だが、これまでは「臭い」「非効率」「装置が巨大すぎる」という課題があった。

夜でも安定発電、しかも資源循環ができる

 装置は小規模農場にも設置できるサイズで、天候に左右されず、夜でも安定して発電できるのが大きな特長だ。しかも、発電後に残るスラリー(液肥)を肥料として再利用することで、エネルギーと資源が地域で循環する仕組みが完成する。

これは“夢の田舎暮らし”だけの話じゃない

 こうした“オフグリッド”型のエネルギーは、個人の夢だけでなく、地域の現実的な課題にも効く。

 現在、日本では送電網の老朽化や電力インフラ維持の人手不足といった問題が、地方を中心に深刻化している。総務省も「分散型エネルギーインフラ」への移行を掲げており、こうした小型バイオマス発電は有力な選択肢のひとつになりつつある(参考:総務省「分散型エネルギーインフラプロジェクトの推進について」)。
 
 「太陽光に頼らない」「地域の資源で電力をまかなう」「夜でも止まらない」メタン発電は、地域の資源循環や災害時のレジリエンス強化にもつながる。自給自足の“夢”と、地域インフラの“現実”の両方に応える、新しいかたちのエネルギーソリューションとして注目したい。

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