このページの本文へ

連載:今週の「ざっくり知っておきたいIT業界データ」 第179回

IT市場トレンドやユーザー動向を「3行まとめ」で理解する 4月5日~4月11日

データセンター建設コストが1年で1.5倍に急騰/AIエージェント導入率、世界平均は5割超え……日本は?、ほか

2025年04月14日 08時00分更新

文● 末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 本連載「ざっくり知っておきたいIT業界データ」では、過去1週間に調査会社などから発表されたIT市場予測やユーザー動向などのデータを、それぞれ3行にまとめてお伝えします。

 今回(2025年4月5日~4月11日)は、2兆円規模に近づく国内エッジインフラ市場、フリーランスエンジニア向け案件の平均単価の変動、データセンター建設コストの急騰と投資意欲への影響、AIエージェント導入に対する世界と日本の取り組みの差、ローコード開発の導入状況についてのデータを紹介します。

[エッジ][AI] AI実装が後押し、2025年の国内エッジコンピューティング支出額は1.9兆円規模に(IDC Japan、4月8日)
・2025年の国内エッジインフラ市場支出額、前年比で約13%の伸びを予測
・成長要因は「エッジでのAI実装」、まずはハードウェア投資から
・セクター別投資シェアでは「製造/資源」が最大、全体の約3割を占める

 集中型データセンターの外部で実行されるICT処理を「エッジコンピューティング」と定義し、27のセクター(産業分野)を対象に、そのエッジインフラ市場を調べた。AI実装がエッジ領域で進むことなどを成長要因として、2025年の市場規模予測は前年比12.9%増の約1兆9000億円。さらに2023~2028年の期間、年平均成長率(CAGR)11.8%で成長を続け、2028年には約2兆6000億円に達すると予測している。

 ⇒ AI実装のための投資分野として、現時点ではAIアクセラレーターなどの「ハードウェア」が最も重視されているが、2028年までには「サービス」(IaaS/PaaS/SaaSなどのプロビジョンドサービス、プロフェッショナルサービスを含む)がそれを上回ると予想しています。

国内エッジインフラ市場の支出額予測 2023~2028年(出典:IDC Japan)

[仕事][エンジニア] フリーランスエンジニア向け案件、月額平均単価は75.5万円(エン・ジャパン、4月11日)
・フリーランスエンジニア案件、平均単価は月額75.5万円、最高単価250万円
・開発言語では「Go」「Python」が前月比で単価アップ
・職種別では「コンサルタント」が高単価、「クラウド」「セキュリティ」も単価上昇

 フリーランスエンジニア向け案件検索エンジン「フリーランススタート」に掲載された、2025年3月度の求人情報を集計・分析した。フリーランスエンジニア案件の月額平均単価は75.5万円、最高単価は「SAP」案件の250万円だった。平均単価のトップ3は、開発言語別では「Go」「Ruby」「Kotlin」、フレームワーク別では「Ruby on Rails」「Flutter」「Next.js」だった。また前月比の増減を見ると、増加(単価アップ)した言語は「Go」「Python」「PHP」など、フレームワークは「Django」「Vue.js」「SpringBoot」などだった。

 ⇒ エン・ジャパンの発表をさかのぼると、同調査は2024年12月度から結果が公表されているようです。このときの月額平均単価は「74.9万円」だったので、今回の結果はわずかに増加しています。この流れが続いて“フリーランスも賃金アップ”となるでしょうか。

開発言語別の月額平均単価(出典:エン・ジャパン)

フレームワーク越の月額平均単価(出典:エン・ジャパン)

職種別の月額平均単価(出典:エン・ジャパン)

[データセンター] 国内データセンターの建設コスト、わずか1年間で1.5倍に急騰(IDC Japan、4月7日)
・データセンター建設コストが1年間で約1.5倍に膨張、「人手不足」「資材高騰」などが背景
・ただしコスト高でも投資意欲は減退せず、投資額も高い伸びに
・国内データセンター投資額、2028年には「1兆円超え」の予測

 国内に設置される事業者データセンターの建設投資(建物/電気設備/冷却システムなどの新設、増設にかかる投資額)の予測。建設業界の人手不足、世界的インフレ、建設資材の価格高騰などがコスト高につながり、2025年第1四半期の建設コストは前年同期比で約1.5倍になっているという。ただし、クラウドサービス市場が高い成長を続けているため、建設コストの高騰も「データセンター投資意欲を縮小させる要因となっていない」と述べている。

 ⇒ コストが大きく膨張しても投資マインドには影響しない、というのは驚きです。2024~2029年の予測を見ると、2029年には現在の3倍近くの投資額が予測されています。

国内事業者データセンターの新設/増設投資予測 2024~2029年(出典:IDC Japan)

[AIエージェント] 9割超の企業が生成AIよりもAIエージェントの導入に注力(PagerDuty、4月10日)
・企業のAIエージェント導入率、世界平均の51%に比べ、日本は32%と出遅れ
・世界では94%が「生成AIよりAIエージェントを迅速に導入している」
・生成AIの全社導入率は、世界平均が63%、日本は44%

 米国、英国、豪州、日本のIT/ビジネス部門幹部1000人を対象とした調査より。AIエージェントを導入している企業は、世界平均で51%に達したのに対して、日本は32%と大きく後れを取っている。また、世界では94%の企業が「生成AIよりもAIエージェントの導入を優先させて」いることも分かった。AIエージェントにどの程度のROI(投資対効果)を期待しているかという調査では「平均171%」という数字も出ている。

 ⇒ AIエージェントの導入において、多くの企業が「生成AI導入時の失敗を繰り返さない」ことに注力しているとのこと。課題としては「計画不足での導入」(44%)、「コスト管理」(40%)、「従業員教育の改善」(37%)などが挙がっています。

世界平均のAIエージェント導入率。「導入済み」が51%を占め、「今後1~2年の予定」も35%と、とても急速に導入が進行している

[ローコード] 97%が「開発プロセスの一環としてローコードを使用」(Mendix Technology、4月4日)
・日本の回答者の97%が「開発プロセスの一環としてローコードを使用」
・71%が「ローコードにより組織のイノベーションが向上する」
・ローコード導入に関する意思決定に「COO」(46%)や「CEO」(44%)も関与

 日本の300人を含む、2000人を対象としたローコード開発に関する調査。日本の回答者の97%は「開発プロセスの一環としてローコードを使用」しており、71%が「ローコードにより組織のイノベーションが向上する」と回答した。メリットは「技術チームの生産性向上」(80%)、「開発プロセスの効率化」(76%)など。

⇒ 新しいテクノロジーの受け入れとなると、一般に「日本は世界に遅れている」という結果になることが多いのですが、この調査では日本と世界の差は少ないようです。ただし「97%」という数字はちょっと高すぎるのでは? という印象も持ちました。

ローコード開発を取り入れるメリット。日本はピンク色の列(出典:Mendix Technology)

日本におけるローコードの主要な活用方法。「DX」が最多で44%(出典:Mendix Technology)

カテゴリートップへ

この連載の記事

アクセスランキング

  1. 1位

    デジタル

    実は“無謀な挑戦”だったルーター開発 ヤマハネットワーク製品の30年と2025年新製品を振り返る

  2. 2位

    ITトピック

    「全国的に大変な状況になっています」 盛岡のSIerが見た自治体システム標準化のリアル

  3. 3位

    ゲーム

    信長を研究する東大教授、『信長の野望』を30年ぶりにプレイ 「若い頃だったら確実にハマってた」

  4. 4位

    ゲーム

    92歳 vs 95歳が『鉄拳8』でガチ対決!? “ご長寿eスポーツ大会”が海外でも話題に

  5. 5位

    sponsored

    SIer/ネットワーク技術者こそ知ってほしい! 「AV over IP」がもたらすビジネスチャンス

  6. 6位

    デジタル

    ヤマハ、2026年夏にWi-Fi 7対応アクセスポイント投入 スケルトンモデルも追加で「見せたくなる」デザインに

  7. 7位

    TECH

    NTTが日比谷を「光の街」に。次世代通信技術を都市にインストール

  8. 8位

    ITトピック

    セキュリティ人材の課題は人手不足ではなく「スキル不足」/生成AIのRAG導入が進まない背景/日本で強いインフレ悲観、ほか

  9. 9位

    ビジネス・開発

    10年先にいる「将棋界」から学ぶ 強豪将棋AI・水匠チームが語る“人を超えたAI”との向き合い方

  10. 10位

    TECH

    2026年度始動の「サプライチェーンセキュリティ評価制度」 企業セキュリティが“客観評価”される時代に

集計期間:
2025年12月21日~2025年12月27日
  • 角川アスキー総合研究所