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2025年は「AIプラットフォーム」と「次世代CRM」に注力

ServiceNowが目指す、数百の業務エージェントを“人とAI”が監督する世界

2025年04月07日 10時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

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 さまざまな業務をつなぐワークフローのプラットフォームを提供するServiceNow。AIエージェント時代においても、特定業務に特化したAIエージェントを連携させることで、企業全体でのワークフロー自動化を推進する。

 ServiceNow Japanは、2025年4月2日、2025年の事業戦略と「Now Platform」の最新メジャーアップデート「Yokohama」に関する説明会を開催。重点領域として「AIプラットフォーマーとしての進化」を挙げつつ、AIエージェント関連のアップデートについて紹介した。

 ServiceNow Japanの執行役員社長である鈴木正敏氏は、「2025年は、AIエージェント元年を迎える。重要なのは、いかにAIエージェントの価値をスケールさせていくかだ。その実現に不可欠なのがプラットフォーム」だと説明する。

ServiceNow Japan 執行役員社長 鈴木正敏氏

AI機能を業務に深く浸透させるプラットフォームが鍵に

 ServiceNowのグローバルでの2024年度業績は、売上高が109億8400万ドル(約1兆6千億円)に達し、日本市場も「グローバル全体の成長率を大きく越え、素晴らしく好調な1年」(鈴木氏)だったという。

 加えて鈴木氏は、昨年掲げた“5+1の事業方針”(業界向けビジネスの加速、“Beyond CRM”による進化した顧客体験の実現、日本発のパートナーエコシステムの確立、中堅/成長企業市場での本格的事業展開、お客様ファーストの価値提案・支援+お客様ビジネス上での生成AIの価値創出)も「プラン通り進捗した」と報告した(参考記事:ServiceNow、2024年の日本市場戦略として“5+1の事業方針”掲げる)。

2024年度のビジネスの状況、日本の事業方針の進捗

 そして、2025年の重点領域として挙げたのが、「AIプラットフォーマーとしての進化」と「“次世代CRM” ~お客様体験の革新」の2つだ。

 前者について、鈴木氏は、「AI活用が進んでいるが、重要なのは、AI機能を業務に深く浸透させるプラットフォーム」と説明。ServiceNowは、さまざまな業務プロセスをつなぐ「デジタルワークフロー」のプラットフォームを提供しており、ここに生成AI機能を載せることが、AIの価値を最大化するポイントだと強調する。

 ServiceNowのプラットフォームには、業務で使えるユースケースが具備されたAIが用意され、他システムも含めてデータを一元管理して、活用するための仕組みがある。そして、ワークフローとの連携でAIのアクションまでをサポートする。「AIが導き出したインサイトを業務に即つなげて、その業務を社内全体に浸透させる」(鈴木氏)ことがServiceNowのAIプラットフォームとしての強みだという。

ServiceNowのAIプラットフォームがもたらす価値

多様なユースケースのエージェントを“人とAI”が監督

 ServiceNowは、AIの全社活用を支える機能として、生成AIアシスタント「Now Assist」を2023年に発表、2024年には日本語環境でのフルサポートを開始した。

 そして、Now Assistを発展させ、「人が業務でAIを利用する(Humans “In” the loop)」段階から「AIが行う業務を人が監督する(Humans “On” the loop)」段階へと移行させるべく、製品開発を進めている。最新メジャーアップデートであるYokohamaでも、この方針のもとでAIエージェント関連の機能強化を図っている。

 まず、AIエージェント機能である「AI Agents」では、特定の業務・用途に特化したエージェントを拡充した。

 同社のAIエージェントの仕組みとしては、リクエスター(ユーザー)の依頼を受けて、業務ワークフローが始まると、「オーケストレーター」が一時的に依頼を受け取る。オーケストレーターは、業務の実行計画を立案して、業務・用途に特化したプリビルドのエージェントを集めて、チームを編成する。そして、オーケストレーターの指示のもと、各エージェントが、WorkflowsやNow Assistのスキルセット、プラットフォーム内外のデータを組み合わせながら、業務を遂行していく。

 加えてすべてをオーケストレーターに任せるのではなく、適切なタイミングで人が判断に介入することも可能だ。

ServiceNowのAI Agents

 ServiceNow Japanの常務執行役員 COO(チーフオペレーティングオフィサー)の原智宏氏は、「オーケストレーターの監督下で、エージェントが個々の業務を推進する。そのため、業務プロセスが部門やシステムをまたがっている場合にも、一気通貫で業務を実行できるのが、ServiceNowのプラットフォーム上でAIエージェントを提供する価値」と説明する。

 現在、プレビルドのエージェントは、ServiceNowが適用している各サービス領域や主要なユースケースに合わせて用意されている。今後も、5月の年次イベント「Knowledge」などを通じて、数百のユースケースに対応するエージェントが登場予定だという。

プリビルドのAI Agent

 さらに、AIエージェントビルダーによって、複雑な業務に対応するエージェントを開発することも可能だ。Yokohamaで追加された「AI Agents Studio」は、自然言語を介して、カスタムAIエージェントを設計可能であり、「プレビルドなAIエージェントとも連携させ、AIエージェントに任せられる業務を増やしていくことができる」(原氏)という。

AI Agents Studio

 AIエージェントを効果的かつ安全に利用するための仕組みも整えている。

 AIのデータ活用において中核となるのが、「Workflow Data Fabric」だ。従来ServiceNowのワークフローは、同社のプラットフォーム上に蓄積されたデータを活用していた。ワークフローを駆動する対象がAIに広がる中で、プラットフォーム外の基幹システムやデータレイクなどに蓄積されたデータを一元管理して、所在を意識することなく活用するための仕組みとしてWorkflow Data Fabricが用意されている。

 また、AI活用における信頼性を担保するためのガードレール機能「Now Assist Guardian」では、AIの不正利用やAIの不適切な成果物によるリスクを制御・モニタリングするための機能を提供している。

Workflow Data Fabric

Now Assist Guardian

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