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コーポレートベンチャリングにおけるサービス提供会社との付き合い方

スタートアップ協業の新しい流れとは?

連載
オープンイノベーション入門:手引きと実践ガイド

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https://gellify.com/

 大企業がベンチャー・スタートアップ企業との協業を通じて戦略的/財務的目標を達成しようとする活動をコーポレートベンチャリングと呼び、近年のオープンイノベーション活動の中でも大きな割合を占めている。しかしながらコーポレートベンチャリングは複雑なプロセスであることから、その実施主体である大企業が、さまざまな支援組織を活用せざるを得ない状況となっている。

 中でも重要度が高いパートナーがサービスを提供することに特化した組織であり、拙著「オープンイノベーション担当者が最初に読む本:外部を活用して成果を生み出すための手引きと実践ガイド」(以下、「OI担当者本」)では、「オープンイノベーション仲介業者」とまとめている。例えばベンチャー企業の探索に活用できるスカウティングや、アクセラレータプログラム、ベンチャークライアントなどの実施を支援したり、マッチングプラットフォームを運営したりしている民間企業/公的機関である。
*羽山友治 [2024],『オープンイノベーション担当者が最初に読む本:外部を活用して成果を生み出すための手引きと実践ガイド』 ASCII STARTUP,角川アスキー総合研究所。

 これに関連して本稿では、大企業のオープンイノベーションや新規事業開発の担当者に向けて、2024年6月27日に報告された、Mancusoによるコーポレートベンチャリングの新しい研究の流れを示唆する論文を紹介したい。そのうえで、前述のような組織との付き合い方について筆者の見解を示す。
*Mancuso, Ilaria, Antonio Messeni Petruzzelli, Umberto Panniello, Federico Frattini and Manlio Del Giudice [2024], "Nurturing strategic agility through corporate venturing advisory: An exploratory analysis," Industrial Marketing Management, 121, 1-15.

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コーポレートベンチャリングアドバイザリー

 これまでの研究においては、ライセンスアウト・インキュベーション・スピンオフのようなインサイドアウト型のアプローチと、VC投資・株式取得・戦略的パートナーシップのようなアウトサイドイン型のアプローチによるサービスを提供する組織が別々に検討されてきた。本報告では、それらを包括的に提供する組織に対して、「コーポレートベンチャリングアドバイザリー」という名称が用いられている。

 背景には、変化する現在において、新たな価値を創造・獲得するために戦略を継続的に修正・適応させていく能力を大企業側が身につける必要に迫られている点がある。生まれてくるさまざまなニーズは、単一のサービスだけでは解決できない。コーポレートベンチャリングアドバイザリーは、強固なネットワークを活かし、複数のサービスを組み合わせて顧客企業とスタートアップ企業の間を取り持つことで変革を支援する。

 コーポレートベンチャリングアドバイザリーの具体例として、BCGのBCG Digital Ventures、AccentureのVentures and Open Innovation、McKinsey & CompanyのNew Venturesの名前が紹介されている。

 事例研究の対象はイタリアとスペインに拠点をおいて活動しているサービス提供会社のGellifyで、従業員やベンチャー企業の関係者に対してインタビューが実施された。

https://gellify.com/service/business-innovation-venturing/

Gellifyの特徴:
▷従業員数:230名以上/拠点数:6/2022年度の売上高:24百万EUR(約40億円)
▷2021年にフィナンシャルタイムズが取り上げた欧州の急成長企業1,000にランクインした
▷自社独自のサービスをブランド化/特許化している

主要なサービスとその特徴:
▷ベンチャークライアント
ベンチャー企業からの製品/サービスの調達を支援する
 ▶活動内容:
  ●各技術分野の専門家による講演会を実施する
  ●ベンチャー企業の技術を紹介した物理的なハブでイベントを実施する
  ●顧客企業とベンチャー企業の協業契約を仲介する

▷ベンチャー買収
ベンチャー企業の買収を支援する
 ▶活動内容:
  ●顧客企業ごとにカスタマイズしたデジタルプラットフォームを通じて得られた知見を元にロードマップを設計し、ベンチャー企業の技術と顧客企業の意思決定者を巻き込んだワークショップで検証する
  ●保有するネットワークを使ってベンチャー企業を抽出し、ファネルアプローチを通じて選定する
  ●ベンチャー企業の技術を顧客企業の構造に統合するプロセスを設計し、商業化のための オペレーションを構築する

▷新規事業開発
企業内の新規事業開発を支援する
 ▶活動内容:
  ●戦略的判断・アセット評価・市場分析を実施する
  ●財務シナリオ分析・MVPの構築・市場モニタリングを実施する

▷ベンチャービルダー構築
ベンチャー企業を継続的に創出・育成・拡大する専門組織の設立を支援する
 ▶活動内容:
  ●対象となる範囲・エコシステムにおけるパートナー・社内のチームを定義し、組織を立ち上げる
  ●顧客企業やパートナーの資金を使って複数のベンチャー企業を経営する

 Gellifyの各サービスは、リソースや戦略、リーダーシップの点で企業に与える影響の種類や変革に寄与する大きさが異なっている。後者に関して、ベンチャークライアントは小さく、ベンチャー買収と新規事業開発は中程度、そしてベンチャービルダー構築は大きい。これは取り組みの難易度にも比例していることから、まずはベンチャークライアントが利用しやすいサービスという位置づけにある。

 また本報告の結論として、顧客企業は自社のニーズや限界を綿密に評価し、最も適したサービスを選択すべきであることが主張されている。

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