エリアLOVEWalker総編集長・玉置泰紀のアート散歩 第28回
1970年代ロボット・アニメ×現代アート、“デレマス”のアイドル190名×神絵師が所沢でポップ・オーバーするぞ
株式会社KADOKAWAは、ポップカルチャーをテーマにした周遊型アートフェスティバル『Pop Over Musashino』(略称:POM展)を埼玉県所沢市で2025年2月7日、スタートした(〜3月30日)。 POM展は、ところざわサクラタウン・角川武蔵野ミュージアムでの『イラストレーター展 FR@GMENTS of THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS』と、日本初の飛行場の跡地に建てられた所沢航空発祥記念館での『ロボット展 Fighting Robots 現代アーティストたちによるサイドストーリー』と、2カ所で展開している。
1970年代のロボット・アニメで育った筆者は、現代アートとアニメ作品が響きあう「ロボット展」に合わせて2025年2月8日、「所沢市民文化センター ミューズ」マーキーホールで開催されたスペシャルイベントに駆け付け、展示も取材してきたぞ。
「Pop over」には、その場に気軽に立ち寄るという意味がある。POM展のコンセプトは、太古から移民が交り合い、新たな文化が生まれてきた武蔵野という土地に「Pop over」しながら、「Pop Culture(ポップカルチャー)」と地域文化との「Overlap(重なり合い)」が楽しめる、新たな体験を提供するというもの。
第一会場の角川武蔵野ミュージアムでは、地域の歴史的風土をテーマに、SNSで注目を集める新進気鋭のイラストレーター数十名が描く新作を公開する企画展を開催。モデルは“デレマス”の愛称で親しまれる「アイドルマスター シンデレラガールズ」のアイドル190名。武蔵野の自然や施設、人々の暮らしなど、地域の「今」を視覚的に感じるだけでなく、そこに赴きたくなるような仕掛けを施したアート作品が一堂に会する。
第二会場の所沢航空発祥記念館では、70年代の空飛ぶロボットアニメをテーマにした現代アート展を開催。『マジンガーZ』『勇者ライディーン』『超電磁マシーン ボルテスV』『機動戦士ガンダム』といった名作をモチーフに、現代アーティストたちが造形・インスタレーション・映像・絵画など様々な手法で表現する。
筆者が駆けつけた「所沢市民文化センター ミューズ」のスペシャルイベントでは、井上伸一郎氏をモデレーターに、ロボット・アニメ界の巨匠である大河原邦男氏、永井豪氏、安彦良和氏、高千穂遥氏が登壇して貴重な当時のエピソードを披露、株式会社KADOKAWA・株式会社ドワンゴによるクラシック音楽バーチャルアーティストプロジェクト「ポルタメタ」からデビューした、東京交響楽団特別監修のバーチャルピアニストである潤音ノクト氏によるピアノ演奏×ロボットアニメソングのコラボレーションも披露された。
■開催概要
期間:
2025年2月7日~3月30日
第1会場:
『イラストレーター展 FR@GMENTS of THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS』(角川武蔵野ミュージアム)
第2会場:
『ロボット展 Fighting Robots 現代アーティストたちによるサイドストーリー』(所沢航空発祥記念館)
POM展特設サイト:
https://tokorozawa-sakuratown.com/special/pom/
日本の航空発祥の地で、ロボット・アニメを、5人のアーティストが新しい現代アートに生まれ変わらせた
『ロボット展 Fighting Robots 現代アーティストたちによるサイドストーリー』は、日本初の飛行場が作られた所沢で開催される、空を飛ぶロボットアニメをテーマにした現代アート展。日本発のロボット・アニメは1970年代、高度成長期が終わって閉塞感があった日本で、画面はモノクロからカラーへ、さらに単なる“正義VS悪”ではない、戦争のリアリティやドラマ性を追及した作品も多く生まれたことで、海外をも巻き込み、第一次全盛期を迎えた。本展では、海外でも人気の高い70年代の作品をテーマに、アーティスト5名が、まったく新しい現代アートとして生まれ変わらせた作品を展示する。
池内啓人
『#2501』
科学技術は人類の進歩を支える一方、破壊の手段にもなりうる二面性を備えている。この作品に使用されているドローンも平和的用途にも兵器としても使用される。『マジンガーZ』では科学技術そのものには意思は無く、使用者によって善悪は決定される。恩恵と危険が隣り合わせの状況を「あしゅら男爵」をモチーフに再構築した作品になっている。
池内氏は、「ブリコラージュの手法を用い既製品を分解、再構築した作品を製作する。これらは事物が持つ本来の意味を解体し、鑑賞者の主観によって変化する新たな価値を提供する。 作品のモチーフの多くはロボットアニメなど日本のカルチャーや海外SFに源流を持ち、レトロフューチャーとしてあり得たかもしれない現在を作り出す」(公式サイト)。
小松美羽
『アニメの作中で描かれなかったモブの私が、実は命尽きるその瞬間に筆を握っていたという設定で湧き上がる鎮魂の絵』
ロボット・アニメの中で、小松氏は自分はいつもモブであるというイメージを持っていた、と言う。そして、メインストーリーに巻き込まれ、ひっそりと倒れ消えていく。しかし、ただ亡くなるのではなく、片隅で筆を取り鎮魂の絵を描いていた。この絵はそうして出来上がった。
小松氏は、「幼少期より自然豊かな環境で様々な生き物と触れ合い、その死を間近で見届けてきた経験から独特の死生観を構築する。万物に魂が宿る八百万神の概念や古くから伝わる神話に登場する神獣を中心に日本の伝統的な文化と現代的な芸術感を融合させた独自の表現によって現在、世界に大調和(The Great Harmonization)という概念を提唱し、『祈り』のメッセージを発信する」(公式サイト)。
藤 浩志
『来るべき困難に向かう』
子供たちから集めたおもちゃのプラスチックの破片から制作した。石油化学製品は私たちの生活を革新する一方で、地球環境の負荷を増大させもする。1万2000年前に海底に沈んだ古代文明の賜物である「勇者ライディーン」が目覚め、敵と戦う姿は、まさに未来の困難に立ち向かうことそのものだ。
藤氏は、「4歳の頃よりカエルのキャラクター切り抜きスクラップブックを制作。デビュー作『鴨川泳いだこいのぼり』以降、様々な企画で『カエル』が象徴的ワードに。世界人口の増加をモデル化した『2025カエルの池シンポジウム』では2nd JASグランプリ受賞。2000年より遊ばなくなったおもちゃで子どもの遊びの場を作り出す『KAEKKO(かえっこ)』を全国配布。現在、壊れたおもちゃの山と暮らす」(公式サイト)。
山本高之
『ヴイ・トゥギャザー2025』
1977年から全40話が放送された『超電磁マシーンボルテスⅤ』は世界中のテレビ局に輸出された。ボルテスⅤはマルコス政権下のフィリピンで放映され人気番組となったが、終盤の数話は当時の政府により放送されなかったという。今回のプロジェクトではフィリピンに赴き、主題歌が今も熱くカラオケで歌われる様子を収めてきた。
山本氏は、「小学校の教員免許を持ち、その経験をもとに、子どもたちとワークショップ型の活動を行いながら「なにかを知る」という体験を探求する作家。コチ=ムジリス・ビエンナーレ(インド、2016年)参加。国際芸術祭あいち(2022年)ではラーニング・キュレーターを務めた」(公式サイト)。
弓指寛治
『ガンダム、翔んでゆけ』
機動戦士ガンダムは放映開始から46年の月日が経っても人気コンテンツ。46年前に子供だった人も、再放送で知った人も、令和の子供たちも見て知っている。弓指氏は「ガンダムは大人も子供楽しめるコンテンツだけれど、これからもずっと『大人のモノ』にならないと良いなと僕は思います」と語る。
弓指氏は、「『自死』や『慰霊』をテーマに創作を続ける。ゲンロンカオス*ラウンジ新芸術校の第一期生として学んでいた2015年に、交通事故後で心身のバランスを崩していた母親が自死。出棺前に浮かんだ『金環を持った鳥のモチーフ』が、多くの作品で彼の表現の核となっている。2018年「第21回岡本太郎現代芸術賞展」岡本敏子賞受賞、2021年『VOCA展2021』佳作賞受賞」(公式サイト)。
『ロボット展 Fighting Robots 現代アーティストたちによるサイドストーリー』
【休館日】
毎週月曜日(ただし、祝日と重なる日はその翌平日)
【会場】
所沢航空発祥記念館(埼玉県所沢市並木1丁目13 所沢航空記念公園内)
【所沢航空発祥記念館HP】
https://tam-web.jsf.or.jp/
【料金】
大人520円(税込)、小中学生100円(税込)
※所沢航空発祥記念館「展示館」の入場料として。当日窓口購入のみ。
※障がい者手帳を所持している人は手帳の提示で入館料免除(無料)となる。
「アイドルマスター シンデレラガールズ」のアイドル190名のオフショットを、X総フォロワー数770万超・総勢111名のイラストレーターが描く
ところざわサクラタウン・角川武蔵野ミュージアムでの『イラストレーター展 FR@GMENTS of THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS』では、“デレマス”の愛称で親しまれる「アイドルマスター シンデレラガールズ」のアイドル190名が、X総フォロワー数770万超・総勢111名のイラストレーターによる美麗イラストで彩られる。
2005年にアミューズメント施設向けゲームからスタートした、株式会社バンダイナムコエンターテインメントによる「アイドルマスター」シリーズは、ライブイベントやTVアニメ、映画など多岐に渡るメディアミックス展開で人気を博し、2025年に記念すべき20周年を迎える。
イラストレーターたちが描くのは、武蔵野を舞台にしたアイドルたちのオフショット。今回の展示会場でもあり、隈研吾氏がデザイン監修した角川武蔵野ミュージアム(ところざわサクラタウン内)をはじめ、日本初の飛行場の跡地である所沢航空記念公園、かつてデレマスのライブが行われたベルーナドーム、そのほか古くから街道の要所で、自然豊かな環境の中に歴史的景観が共存する武蔵野の様々な象徴的な場所を、アイドルたちが生き生きと躍動感を持って駆け回る姿が描かれる。武蔵野に「Pop Over(立ち寄る)」するアイドルたちの素顔が垣間見える、ところざわサクラタウンでしか楽しめない、史上初の展覧会となっている。
『イラストレーター展 FR@GMENTS of THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS』
【休館日】
毎週火曜日(火曜日が祝日の場合は開館)
【会場】
角川武蔵野ミュージアム5階(ところざわサクラタウン。埼玉県所沢市東所沢和田3丁目31-3)
【角川武蔵野ミュージアムHP】
https://kadcul.com/
【料金】
当日券1,800円(税込)※窓口販売
※当日窓口購入のみ、障がい者手帳を所持している人と同伴者1名まで、割引が50%適用される。
武蔵野回廊プロジェクトについて(公式サイトより)
「Pop Over Musashino」は「武蔵野回廊プロジェクト」の一環として開催します。武蔵野回廊プロジェクトとは、総合エンターテインメント企業のKADOKAWAがところざわサクラタウンを中心に埼玉県から東京都西部を広く「武蔵野」としてとらえ、文化芸術による地域振興に取り組むプロジェクトです。太古から広大な土地で様々な移民が交り合い、新たな文化が生まれてきた武蔵野の歴史を伝える、さまざまなワークショップやアートイベントを年間通して実施しています。
https://www.instagram.com/musashino_kairo_pj/
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