エリアLOVEWalker総編集長・玉置泰紀のアート散歩 第19回

ルシウスも納得の「テルマエ展」が汐留にやってきた。お風呂でつながる古代ローマと日本の秘密が丸わかり

文●玉置泰紀(一般社団法人メタ観光推進機構理事)

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 人類史上に輝く繁栄を誇った古代ローマ。その豊かなくらしと優れた建築技術を象徴するのがテルマエ(公共浴場)。ヤマザキマリ氏の漫画『テルマエ・ロマエ』では、浴場を通路にして古代ローマのテルマエ設計者のルシウスが、古代ローマと現代の日本を行き来する。そして、古代ローマ人と現代の日本人が、同じく無類のお風呂好きであることに気づく。パナソニック汐留美術館での展覧会は、世界でも有数の風呂好き民族の文化を繋ぐ、湯加減ばっちりのユニークな展覧会になっている。筆者の旧知のヤマザキマリ氏に会いに内覧会に行ってきたぞ。

記者会見でのヤマザキマリ氏と、同展とコラボしている東京都浴場組合の公式キャラクター「ゆっポくん」

 本展は、ナポリ国立考古学博物館所蔵の絵画、彫刻、考古資料を含む100件以上の作品や資料、映像、模型などを通して、テルマエを中心に古代ローマの人々の生活を紹介し、併せて、独自の風土のなかで育まれた日本の入浴文化もとりあげる。『テルマエ・ロマエ』の主人公ルシウスが浴場を通して日本とローマを往復したように、それぞれの入浴文化を比較し、体感することのできる展覧会になっている。

 今回の見どころは以下の3点。

1.イタリア・ナポリ国立考古学博物館から《恥じらいのヴィーナス》や《アポロとニンフへの奉納浮彫》など、32件が来日

 古代ローマでは、ローマ市内に大規模なテルマエがいくつも建設され、温泉もまた、医療や健康と結びついて利用されていた。庶民は、毎日の仕事のあとのテルマエと、特別な日の見世物を楽しんだ。まさに、サーカスとパンとテルマエ。古代ローマのテルマエと人々のくらしを伝える貴重な絵画、彫刻、考古資料が展示されている。

2.映像や模型などを通して古代ローマと日本の浴場文化を分かりやすく紹介

 古代ローマのテルマエを想像復元したCG映像や、カラカラ浴場を250分の1のサイズで復元した模型など、様々な展示作品、資料を通して古代ローマと日本の入浴文化を身近に感じられる。

3.日本での、温泉や銭湯から内風呂まで、国内のお風呂文化の歴史と地域性も紹介

 一方、日本では、家で風呂に入り、時に銭湯に行き、旅行で温泉を訪れるなど、入浴は日々のくらしに欠かせない習慣と愉しみになっている。こうした日本の入浴に関する美術品や資料も紹介し、入浴文化を通して日本の歴史の一端を見ることができる。

第3章:テルマエと美術テルマエのコーナーは撮影が可能。当時のテルマエが再現されており、床には水に強いモザイクが好まれた。ローマの大規模なテルマエには、数多くの大理石彫刻が飾られ、皇帝や浴場の建設者の肖像のほかに、神々の像や古代ギリシャの有名作品のコピーが壁面のニッチや円柱の間の台座の上に並んでいた。主題は適当に選ばれたわけではなく、浴場にふさわしいものが選択されていた

『アグリッパ胸像』(写真右。1世紀前半。オリジナルは前1世紀末。大理石。ルーヴル美術館)と『カラカラ帝胸像』(写真左。212〜217年。大理石。ナポリ国立考古学博物館)。アグリッパはローマ市最初のテルマエを建設した。カラカラ帝の胸像は、ファルネーゼ家によるカラカラ浴場の発掘で発見された全身像を胸像に作り替えたと言う説があるが、その胸像ではないかと言う指摘がある

カラカラ帝が3世紀に建設した大浴場、カラカラ浴場を250分の1のサイズで復元した模型。東京造形大学の上田ゼミ12名による制作

左から『水道のバルブ』(1世紀。ポンペイで出土。青銅。ナポリ国立考古学博物館)、『水道のバルブ』(1世紀。ポンペイで出土。青銅、鉛。ナポリ国立考古学博物館)、『ライオン頭部形の吐水口』(1世紀。エルコラーノで出土か。青銅、テラコッタ。ナポリ国立考古学博物館)

都市ローマのテルマエと水道

展覧会場内で筆者

第4章:日本の入浴文化コーナー。一部エリアは撮影可能。写真手前は三浦宏『湯屋模型』(1980年代。個人蔵)。江戸時代後期の湯屋の模型。

『「永生湯」銭湯の暖簾』(昭和29年・1954年。布。町田忍蔵)、『「入浴の御注意」ホーロー看板』(昭和30年代。金属。町田忍蔵)、『ケロリンの桶』(昭和38年・1963年~平成時代頃。木、樹脂。町田忍蔵)。「ケロリン」は解熱鎮痛剤。広告媒体としての桶に注目をした広告代理店・睦和商事が内外薬品に提案して誕生した

●会場内のルシウスを探せ

 会場内では、漫画『テルマエ・ロマエ』のルシウスが様々なトリビアを紹介してくれる。ポスターなどでも大活躍。

●遊び心と良い湯加減のグッズが楽しい

 グッズも強力。ヤマザキマリ氏や、イラストレーターの白根ゆたんぽ氏が、テルマエ展のオリジナルイラストを書き下ろした商品はテルマエ展の限定。ほかにも、ケロリンとのコラボグッズからサウナハットまで多彩だ。

●異色コラボで実現したスタンプラリーでステッカーをゲット

 異色コラボレーションとして、パナソニック汐留美術館と都内約440軒の銭湯が加盟する東京都浴場組合が、スタンプラリーキャンペーンを実施する。東京都浴場組合に加盟している銭湯2軒とパナソニック汐留美術館、計3個のスタンプを集めると(先着200名)、「テルマエ展」オリジナルステッカーがプレゼントされる。

【スタンプラリー実施要項】

■実施期間:2024年4月6日~6月9日
※パナソニック汐留美術館「テルマエ展」の会期と同じ。

■東京都浴場組合加盟の銭湯をめぐって、銭湯2軒(2種類)のスタンプを集める。スタンプラリー台紙は加盟銭湯で配布するほか、パナソニック汐留美術館のホームページからダウンロードも可能。
※同じ銭湯のスタンプを複数押すことはできない。

■2軒のスタンプを集めた後、パナソニック汐留美術館に来館。

■展覧会「テルマエ展 お風呂でつながる古代ローマと日本」
〔会期:2024年4月6日~6月9日〕に入館。

■展覧会鑑賞後、ミュージアムショップでパナソニック汐留美術館のスタンプが付与される。

※景品交換は一人1回につき、1個。
※先着人数に達した場合はパナソニック汐留美術館のウェブサイトやX(旧Twitter)で通知する。

■開催概要

会期 :2024年4月6日~6月9日

会場 :パナソニック汐留美術館(東京都港区東新橋1-5-1 パナソニック東京汐留ビル4F)

休館日 :水曜日(ただし6月5日は開館)

開館時間 :午前10時より午後6時まで(入館は午後5時30分まで)
     ※5月10日(金)、6月7日(金)、6月8日(土)は夜間開館午後8時まで
     (入館は午後7時30分まで)

入館料 :一般:1,200円/65歳以上:1,100円/大学生・高校生:700円/中学生以下:無     料 
     ※障がい者手帳提示の方、および付添者1名まで無料で入館出来る。

公式サイト :https://thermae-ten.exhibit.jp/

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