自動車業界の信頼性評価からバイオ、新産業へ 創業30年にIPOでの成長を決意したクオルテック
信頼性評価を行なう独立系検査会社として初の東証上場を実現、不良品ゼロへの挑戦と独立独歩の精神が育んだ企業理念
「お客様の困りごとを解決する」企業理念と共に成長を続けるクオルテック
創業当初から技術を重視する一方で、人材の採用にも苦労を重ねてきたクオルテックだが、2023年の上場以来、自社を取り巻く環境が大きく変化した。スタートアップ設立をめざす起業家や立ち上げた会社の運営に悩むファウンダーにとって有用な情報となるであろうその変化について聞いてみた。
「IPO以前であれば関西圏や中部圏での取引がほとんどだったが、上場以降は全国規模の知名度が得られたためか、いろんなところからの仕事が入るようになった。そこで気が付いたことのひとつに、多くの企業が南海トラフなどのBCPのことを気にしているということがある。一方で従業員が通いにくい場所に事業所をつくった結果、人が辞めていってしまっては意味がない。そういったところは公的な支援が欲しいし、一企業ではできないことを他の企業と一緒に取り組めたらうれしいと思っている。
また、人材も全国から応募してもらえるようになったし、素晴らしい経歴の人を採用できるようにもなった。そういった人の新しい視点を、クオルテックに備わっている技術や知見と上手く融合させて、長く繁栄する会社にしていきたいと思っている」(山口氏)
クオルテックの事業所は堺市の北半分に集中している。2024年11月に開所したパワエレテクノセンターもJR津久野駅にほど近く、従業員にとって通勤しやすい場所に置かれている。ハザードマップを見ながら1年以上の時間をかけて場所の選定を進めていたそうで、従業員の安全確保の面からもBCPの面からも好条件の場所を見つけることができたとのことだ。
IPOは企業の成長にとって欠かせない活動である一方で、それに集中するあまりに成長を鈍化させた側面があったと反省点を挙げている。
「上場することが成長につながるというのは間違いないが、IPO前後で人材に求められるスキルセットも変わってくる。その部分でもっと上手く人材の割り振りをできたのではないかと反省している」(山口氏)
クオルテックの企業理念には、技術者としての情熱と客観的なデータの蓄積によって、困りごとを抱える顧客に満足を提供するとともに社会貢献できる企業をめざすとある。同社が支えている日本のモノ作りは省エネや環境課題の解決などを通じて社会への貢献を実現している。
「例えばお客様の製品づくりが上手く行かないことがあると思うが、その結果クオルテックに依頼いただいている検査もキャンセルになることがある。こちらの技術者もお客様の技術者も困ってしまう状況になる。そういった場合、通常はキャンセル料をいただくことになるが、それではお客様の困りごとを増やすことになってしまう。なのでキャンセル料をいただかずに済ます場合もある。
設備の稼働率が下がってしまうことになるが、それよりクオルテックの理念を大事にしていきたい。その方が長い目で見たときに会社の成長につながっていくと考えている。もちろん中にはどんどん検査予約してどんどんキャンセルというところも出てくるが、そこに意識を集中するより、困っているお客様の技術者がさらに困ることがないようにと思っている」(山口氏)
クオルテックが実践してきた理念に忠実な企業経営は、同社への信頼感を高めるとともに、透明性や公平性など検査会社に必須の企業体質を培ってきた。同時に堺市という場所もまた、その理念の実行を後押ししてくれていると山口氏は語る。
「堺市という土地が持っている独立独歩の伝統のイメージも大事にしている。信頼性評価や分析を行なう会社は絶対に不正をしてはいけない。堺市はそういう会社が集まるにふさわしい場所だと思うし、お客様からもそのように記憶していただくという優位性はあると感じている」(山口氏)
30年を超える技術と知見の蓄積と共に、新規事業への取り組みにも積極的なクオルテックは、日本が復活をめざすモノづくりの最先端に位置する。そこは研磨のような職人技と、AIのようなデジタル技術が融合する現場であり、同社はそのルールメーカーになるべく「トータル・クオリティ・ソリューション」を磨き上げている。
スタートアップは製品開発における信頼性確保をどのようにすれば良いか悩むこともあると思う。そんなときにクオルテックは頼れるパートナーになってくれると感じた。

































