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世界最大テックイベント「CES 2025」現地レポート 第8回

AMD、CES 2025にて「Ryzen 9 9950X3D」「Radeon RX 9000シリーズ」の概要を発表

2025年01月07日 05時30分更新

文● 加藤勝明(KTU) 編集●北村/ASCII

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最大50TOPSのAI性能を誇る「Ryzen AI Max」シリーズ
(2025年第1四半期~第2四半期発売)

 最後の大物は究極のAI搭載ノートを構築するためのRyzen AI Maxシリーズだ。これは既存のRyzen AI 300シリーズの上位に位置付けられるが、Ryzen AI 9の上であるため「Ryzen AI Max+」「Ryzen AI Max」というネーミングになる。

 そしておのおのにビジネス向けのラインとして「Ryzen AI Max+ PRO」と「Ryzen AI Max PRO」も用意される。アップル製品のようなネーミングになったのはなんとも残念だ。

アップル製品みたいなネーミングで登場した“Strix Halo”ことRyzen AI Maxシリーズ

 フラッグシップであるRyzen AI Max+ 395はZen 5ベースのCPUコアを16基、RAND 3.5ベースのCU(GPUコア)を40基した「Raden 8060S」、さらに50TOPSに到達するXDMA 2ベースのNPUを搭載するスペックを誇る。

 それと同時に内蔵GPUやNPUのために帯域幅の非常に広い新メモリーインターフェースも組み込んでいるという。これにより世界で初めて70兆パラメーター(70B)のLLMをRyzen AI Maxシリーズだけで動かすことを可能にしている。

 「LM Studio」を利用した検証では、RTX 4090よりも2.2倍高速であり、かつTDPもRTX 4090の半分以下(87%)と省エネであることをアピールしている。

 またRyzen AI MAX+ 395はAI処理以外においても既存のCPUを圧倒するとAMDは主張する。「Core Ultra 9 288V」に対してはクリエイティブ系アプリで平均2.6倍、グラフィック描画処理では平均1.4倍上回る。ゲームにおけるパフォーマンス情報は未公開だが、内蔵GPUのみを利用する構成であれば、GPUが強力なぶんRyzen 9 9955HX3Dをも上回る性能が期待できるだろう。

Ryzen AI Maxシリーズのレンダリングイメージ。パッケージ上にメモリーチップを2基搭載しているのでHBMかと思ってしまうが、HBMであるという発表もないためLPDDR5Xであると考えるのが自然だ

Ryzen AI Maxは既存のRyzen AI 300シリーズの上位に位置付けられる。天使の輪(Halo)のごとく神々しいイメージだが、なぜそれが「AI Max+」という製品名になるのか理解に苦しむ

Ryzen AI Maxシリーズのラインナップ。基本的には数字型番の大小だけで格付けが判断でき、下二桁でコア数が判断できる(95なら16コア、85なら8コア)。内蔵GPUのCU数が40基なものだけが「Max+」を名乗れる。「PRO」が末尾につくのはセキュリティーを強化したビジネス向けの製品だ

Zen 5コアにRDNA 3.5、XDNA 2という構成はRyzen AI 300シリーズと同じだが、Ryzen AI Maxではスペックの限界値が引き上げられている。メモリーインターフェースは新設計らしいが、具体的な内容については語られていない

Ryzen AI Maxシリーズは70兆パラメーターのLLMを動かせるCopilot+ PC向けCPUとなる。LM Studioにおける文章生成ベンチではRTX 4090の2.2倍の性能を叩き出し、半分以下の電力で動作する。Ryzen AI Max+ 395は“AMD Reference Board”かつTDP 55W設定で動かしているとのこと。つまりデスクトップスタイルの製品でテストしているようだ

Core Ultra 9 288VとRyzen AI Max+ 395を3Dレンダリング速度で比較すると後者の方が3~4倍の性能を叩き出すという脅威の数字。ここでもAMDリファレンスボードが使われているがTDPが明記されていない。つまりTDPを最大に盛っている可能性がある(一方Core Ultra 9 288VはASUS「Zenbook X 14」を使用)。ゆえにこの数値を鵜呑みにするのは危険だ

「3DMark」を利用したCore Ultra 9 288VとRyzen AI Max+ 395の比較。これもRyzen AI Max+ 395が大差を付けて勝利しているが、Ryzen AI Max+ 395がどういった設計のハードなのか不明なので、あくまで参考値として捉えておきたい

M4 Proを搭載したMacBook ProとのCGレンダリング性能比較。「CINEBENCH 2024」のように14コアのM4 ProにRyzen AI Max+ 395が負けるものもあるが、「V-Ray」のように大差で勝利するものもある。これもAMDリファレンスボードを使った比較であり、TDPは明記されていない

Ryzen AI Maxシリーズはノート型ワークステーション(左)や小形ゲーミング2in1ノート(右)のほか、デスクトップスタイルのミニワークステーション(中央)のような製品に搭載される。発売時期は今年の上半期のどこかになるだろう

AMDの勢いは感じられるが、そこに“虎の威”を借りてしまうのはなぜ?

 AMDのCES 2025における発表内容は、全体的に漠然(特にRadeon)としているものの、AMDの攻めの姿勢が十分感じられるものだった。Ryzen 9 9950X3Dのように“性能はある程度想像がつく”製品もあるが、RX 9000シリーズやモバイル向けの3D V-Cache搭載CPUやZ2など、1日も早く検証してみたい製品が多く、非常に期待できる内容であった(注:これはリサ・スーCEOではなく、AMDの広報による素っ気ないプレゼンを見た上での感想だ)。

 しかしAMDのネーミングセンスは最悪だ。新Radeonの型番ルールを、なぜGeForceと誤認しやすくいものに変更してしまったのだろうか? 自社技術の粋を満載したモバイル向け最強CPUに「AI Max」という既視感のある名前をつけ、どんなアイデンティティを確立しようとしているのか?

 AMDは業界を牽引するプロダクトを排出しているトップランナーであることに疑いの余地はないが、発表された新製品のネーミングからはAMDがシェアを奪いとる気迫が感じられない。AMDは製品が売れるなら既視感なんて上等だという考えなのかもしれないが……。

 新年早々、老害の説教みたいな〆になってしまったが、製品の出来に対する期待が高いがゆえに言いたくなった次第だ。今回AMDが発表した製品に対しレビューの機会が巡ってくるとは断言できないが、可能な限りレビューできるよう筆者もがんばっていきたい。

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