チップの上に直接DRAMを積層することで
メモリー帯域とメモリー容量問題の解決を図る
2つ目がメモリーの問題。下の画像が従来のメモリー構成であり、Ponte Vecchioなど4階層のメモリーを搭載しているわけだが、そのPonte Vecchioですらメモリー帯域と容量が足りていないので、もう少し別の方法を考える必要がある。
そのPonte Vecchioの後に出てきたAI向けプロセッサーが、いろいろな意味で限界までメモリー量とメモリー帯域を引き上げているのを見れば、この方向でもう少し頑張るしかないわけだ。
一番考えやすいのは、さらにHBMのスタックを積み上げる(=容量を増やす)とともに信号を高速化するなどで帯域を引き上げることだが、これは言ってみれば小手先の改良であって、大きく性能を改善する助けにはならない。
この方面に関して明確な解が示されているわけではないのだが、1つのアイディアとして示されたのがStacked Embedded DRAMである。要するにチップの上に直接DRAMを積層するというアイディアだ。
実はこれ、連載798回で取り上げたMN-Core 2の後継であるMN-Core L1000で実装されようとしている。
要するにHBMの消費電力が多いのは、インターポーザー経由になっている(つまり先の話で言えばFan Outでの接続になる)部分が少なからず関係する。つまり、DRAMをHybrid Bondingで接続するようにすれば、信号速度を控えめにしても帯域が確保しやすく(これは配線の本数を大幅に増やせるから)、またHybrid Bondingだからインターコネクトの電力も低く抑えられる。
チップの上のDRAM積層に関しては、MN-Coreのアーキテクトである牧野淳一郎博士のXへのポストがなかなか興味深い。
DRAM 3 次元実装についての牧野の https://t.co/kvYWywQzrq 19年前の文章
— Jun Makino (@jun_makino) December 11, 2024
これは、Hybrid Bondingを使う限り熱抵抗が大幅に減るので、DRAMをチップの上に載せても放熱に問題が出にくい、という話である。理屈はわかるのだが、それはロジックダイの発熱が穏当なものの場合だろう。
これがH200や、身近なところではCore Ultra 9でもいいのだが、要するに90度以上で連続動作するような状態ではDRAMの記憶保持時間が相当短くなりそうで心配である。したがってこの手法は、ロジックダイ側の動作周波数を相当低く抑えるか、液冷などで強制的に50~60度に抑え込む必要がありそうではあるが、1つの可能性ではあるかと思う。
コストを度外視すればSRAMを大量に3D実装という選択肢もありそうだが、これは本当にコストが論外になりそうではある。

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