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なぜ商品化しない?本物を証明する見えないタグ

特集
世界に挑むICTスタートアップリーグ 成功への道

ステルスタグにレーザーを当てると特殊な波形が出現

 最近、フリマや通販の商品すり替え詐欺が話題だが、特許庁の調査によると、世界の模倣品被害額は約50兆円を超えるという。正規品の判別にはラベルやタグを付ける方法があるが、直接貼ると外観を損ねてしまうし、取り外して流用される恐れもある。次世代の不正防止策として注目されているのが“見えない”ステルスタグだ。ICTスタートアップリーグに採択されている株式会社アーカイラスは、金ナノ粒子で唯一無二を特定できるステルスタグを開発している。

 同社のステルスタグは、目に見えない光を発現する金のナノ粒子のフォトニクス(光工学)現象を利用したもので、ごく微量の粒子を商品に直接塗布して使う。粒子にレーザーを当てると、特有の波形として識別ができるという。紙や布に塗布しても目に見えず、水洗いしても簡単には落ちないそうだ。すでに、リバースエンジニアリングの防止策となる技術「ステルスナノビーコン」や、タグの検出装置も独自開発し、スマートフォン用の簡易的な検出アプリまで開発済みだ。

 特許も複数登録し、すぐにも実用化できそうだが、同社によると、さらなる検出の簡便化や精度向上が必要だという。ディープテック界隈では、「完璧な製品を目指すあまり、市場投入が遅れてビジネスチャンスを逃す」、「技術を楯にビジネス側の意見を聞かず、招き入れた外部人材が効果をなさない」という話もないわけではない。同社が独自の技術でどのような展開を進めるのか、期待して見守りたい。

文:スタートアップ研究部

ASCII STARTUP編集部で発足した、スタートアップに関連する研究チーム。起業家やスタートアップ、支援者たちの活動から、気になる取り組み、また成長・成功するためのノウハウやヒントを探求している。この連載では、総務省のICTスタートアップリーグの取り組みからそれらをピックアップしていく。

※ICTスタートアップリーグとは?

ICTスタートアップリーグは、総務省「スタートアップ創出型萌芽的研究開発支援事業」を契機として2023年度からスタートした官民一体の取り組み。支援とともに競争の場を提供し、採択企業がライバルとして切磋琢磨し合うことで成長を促し、世界で活躍する企業が輩出されることを目指している。
https://ict.startupleague.go.jp/

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