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最新パーツ性能チェック 第458回

“Battlemage”世代の尖兵「Arc B580」レビュー【後編】

Arc B580のRTX 4060/RX 7600超えは概ね本当、11本のゲームで検証してわかった予想以上の出来

2024年12月19日 10時00分更新

文● 加藤勝明(KTU) 編集●ジサトライッペイ/ASCII

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 2024年12月13日23時、インテルの新ディスクリートGPU「Arc B580」を搭載したビデオカードの国内販売が始まった。インテルの純正モデルを筆頭に、ASRockやSparkleといったメーカーが製品を投入し、概ね5万円スタートになった。Arc B580のライバルはGeForce RTX 4060(以下、RTX 4060)やRadeon RX 7600(以下、RX 7600)といったフルHDゲーミングの主力GPUとなる。

 そして、この両者にWQHDゲーミングでも優位に立つ、という非常にニッチなところを突いてきたGPUとも言える。RTX 4060/RX 7600搭載カードのスタートが概ね4万円〜であることを考えれば、初値で勝負することは厳しいのだが、インテルはArc B580に12GBのVRAMを搭載することで血路を開こうと試みているのだ。

 Arc B580レビューの2回目となる本稿では、前編と同じくインテル純正の「Arc B580 Limited Edition」を使用し、ゲーム11本におけるパフォーマンス検証を試みる。イマドキのゲームをプレイするにあたり、RTX 4060やRX 7600よりも価値を示せるのか? 様々なデータから検証していきたい。

Arc B580 Limited Editionは4万9800円前後。初回の流通量は少なかったためか、すでに売り切れのお店が続出している

Arc A750、RTX 4060、RX 7600と比較

 今回の検証環境は前編とまったく同じ。Arc B580 Limited Editionを筆頭に、Arc A750 Limited Edition、RTX 4060とRX 7600を用意した。ドライバーはArc B580の検証用に配布されたβ版、A750がバージョン6319、GeForceはGameReady 566.36、RadeonはRadeon Software 24.12.1である。

 また、CPUはゲームにおけるパフォーマンスを考慮し、あえて「Core i9-14900K」を選択。CPUの電力制限はデフォルトの「Performance Profile」とした。ゲームにおけるPコアとEコアの割り振りを最適化する、APOこと「Intel Application Performance Optimization」も有効にしているが、APOがないと性能が伸びないゲームはチョイスしていない(はずだ)。

検証環境
CPU インテル「Core i9-14900K」 (24コア/32スレッド、最大6GHz)
CPUクーラー NZXT「Kraken Elite 360」(簡易水冷、360mmラジエーター)
マザーボード ASRock「Z790 Nova WiFi」(インテル Z790、BIOS 7.01)
メモリー Micron「CP2K16G56C46U5」(16GB×2、DDR5-5600)
ビデオカード インテル「Arc B580 Limited Edition」(12GB GDDR6)、MSI「GeForce RTX 4060 VENTUS 2X BLACK 8G OC」(GeForce RTX 4060、8GB GDDR6)、AMD「Radeon RX 7600リファレンスカード」(8GB GDDR6)
ストレージ Micron「CT2000T700SSD3」(2TB M.2 SSD、PCIe 5.0)、Silicon Power「PCIe Gen3x4 P34A80 SP002TBP34A80M28」(2TB M.2 SSD、PCIe 3.0)×3
電源ユニット ASRock「TC-1300T」(1300W、80 PLUS TITANIUM)
OS Microsoft「Windows 11 Pro」(23H2)

 検証にあたり、Secure BootやResizable BAR、メモリー整合性、HDRといった機能はひと通り有効化している。前編と同様、Arc B580とA750環境ではGPUの省電力性能を十全に引き出すためにPCI ExpressのASPMを「L1」に、Windows側の電源管理でもPCI Expressの省電力機能を「最大限の省電力」とした。

 なお、今回はGPUの力比べであるため、GPUの負荷は特記がない限りは最高設定やそれに準ずる設定としている。解像度はフルHD(1920×1080ドット)、 WQHD(2560×1440ドット)、 4K(3840×2160ドット)の3通りに設定。

 eスポーツ性の強いタイトルに関してはアップスケーラー(DLSS SR、FSR、XeSS-SR)やフレーム生成は使用せず、そうでないゲームは逆に積極的に使用している(例外あり)。アップスケーラーを使用する場合は「クオリティー」、あるいはレンダースケール(RS)67%設定で統一している。これらの技術を使用している場合はグラフ中にも「XXXXXX(XeSS-FG)」のような形で記載した。

 そして、フレームレートはすべて「CapFrameX」で計測し、ベンチマーク中にビデオカードが消費した電力データは「Powenetics v2」を用いて収集。これらのデータをもとに、各ビデオカードが消費した電力10Wあたりの平均フレームレートを「ワットパフォーマンス」として算出した。また、AFMF2に関してはフレームレート計測ツールを統一できないという観点から使用していない。

「Overwatch 2」

 Overwatch 2では画質「エピック」をベースにレンダースケール100%、フレームレート上限600fps、FSR 1およびFSR2はオフに設定。マップ「Eichenwalde」におけるBotマッチを観戦中のフレームレートを計測した。

Overwatch 2:1920×1080ドット時のフレームレート

Overwatch 2:2560×1440ドット時のフレームレート

Overwatch 2:3840×2160ドット時のフレームレート

 Arc Aシリーズでは3DMarkでは優秀なのに実際のゲームでは……というパターンもあったが、Arc B580ではしっかりその実力を発揮してくれた。どの解像度においてもArc B580の平均フレームレートはほかのGPUを上回っている。

 フルHD時の最低フレームレートこそRTX 4060やRX 7600に負けているものの、WQHD領域の優位性はしっかり確保できている。VRAM搭載量が多いので、「快適」とは言えないフレームレートだが、4Kでもそこそこ動かせているという点も見逃せない。

Overwatch 2:ベンチマーク中におけるTBPの平均値(単位:W)、および10Wあたりのワットパフォーマンス(単位:fps)

 上のグラフは左側が検証中に観測したビデオカード単体の消費電力、右側が10Wあたりの平均フレームレート(ワットパフォーマンス、「wperf」と表記)となる。前編において、Arc B580の高負荷時(3DMarkの「Steel Nomad」実行時)における平均消費電力は190Wを微妙に超える程度だったが、フルHD〜WQHDまでに限定すればそこまで高くならない。

 解像度が低いと消費電力が下がるという動きは、筆者の経験上、GeForce RTX 40シリーズの上位モデルに近い挙動である。VRAMを多めに載せ、さらにL2キャッシュも多めに搭載していることがこの結果を生んだと考えられる。

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