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スタートアップは何度でもピボットしていい。ビジョンさえブレなければ

特集
世界に挑むICTスタートアップリーグ 成功への道

 事業の方向性を戦略的に変える「ピボット」は、スタートアップが生き残るためには必要な試行錯誤だ。Instagramはチェックインアプリから画像投稿サービスへ、Slackはゲーム会社の内部開発向けツールからビジネス向けにターゲットを変えて成功した。

 2度の起業経験があり、現在はICTスタートアップリーグの支援をしているデロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社の高木一彰氏は、「10年後に同じビジネスモデルだったスタートアップはほとんどいない。ビジョンさえブレなければ何度でもピボットしていい」と話す。例えば、同氏が過去に支援した株式会社ORANGE kitchenは、慢性腎臓病の患者向けに塩分摂取量を見える化するIoT機器開発からスタートしたが、開発コストとニーズが見合わず、専属の管理栄養士によるオンライン食事指導サービスへと軌道修正した。結果、伴走型による離脱率の低さから順調に売り上げを伸ばし、現在は、飲酒習慣や睡眠習慣の改善支援などへ事業を拡大しているそうだ。

 ビジネスモデルが変わると求められる技術や人材も変わる。ORANGE kitchenのケースでは慢性腎臓病患者を救うというビジョンは同じだが、ハードウェア開発から伴走支援サービスへと大きく転換した。同社の場合は代表自身が管理栄養士であり、知り合いに声をかけて人材を確保できたようだが、ピボットのタイミングでメンバーが離脱し、事業が立ち行かなくなるケースは少なくない。スタートアップが生き残れるかどうかは、どの方向に転換しても仲間を集められるビジョンの強さや巻き込み力にあるのかもしれない。

文:スタートアップ研究部

ASCII STARTUP編集部で発足した、スタートアップに関連する研究チーム。起業家やスタートアップ、支援者たちの活動から、気になる取り組み、また成長・成功するためのノウハウやヒントを探求している。この連載では、総務省のICTスタートアップリーグの取り組みからそれらをピックアップしていく。

※ICTスタートアップリーグとは?

ICTスタートアップリーグは、総務省「スタートアップ創出型萌芽的研究開発支援事業」を契機として2023年度からスタートした官民一体の取り組み。支援とともに競争の場を提供し、採択企業がライバルとして切磋琢磨し合うことで成長を促し、世界で活躍する企業が輩出されることを目指している。
https://ict.startupleague.go.jp/

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