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低遅延/低ゆらぎのIOWN APNを活用、データ損失なしのDRサイト構築、分散型データセンター実現も

世界初! 関東-関西の距離600kmでリアルタイムデータ同期 日立とNTT Comが共同実証

2024年12月06日 17時00分更新

文● 大河原克行 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 日立製作所と日立ヴァンタラ、NTTコミュニケーションズ(NTT Com)は2024年12月6日、IOWN APN(オールフォトニクスネットワーク)を活用した分散型データセンターの技術検証を行い、世界で初めて600kmを超える長距離間のリアルタイムデータ同期に成功したことを発表した。

 実用性が証明されたことで、遠隔のデータセンター間をリアルタイムに連携させる分散型データセンターの実現や、災害発生時のDR(災害対策)サイトへのシームレスなシステム切り替え/復旧が見込めるという。また、すでに提供中のサービスと製品を組み合わせた実証であることから、今後は顧客のニーズや仕様に合わせてチューニングをしながら提案を進めていく方針としている。

今回の実証実験の概念図。関東/関西のネットワーク距離にあるデータセンターに設置したストレージを、IOWN APN経由でリアルタイムに同期させた

日立製作所 社会ビジネスユニット 社会システム事業部 テレコム・ユーティリティソリューション本部 テレコム・ユーティリティ第三部 主任技師の小川貴央氏、NTTコミュニケーションズ プラットフォームサービス本部 マネージドセキュリティサービス部の今野真希氏

これまでの“100kmの壁”を軽々とクリア、関東-関西間で遠隔データ同期

 今回の技術検証では、関東-関西間に相当する600kmのネットワーク距離にある2つのデータセンター環境を仮想的に構築。両環境に設置した日立ヴァンタラのストレージ「Hitachi Virtual Storage Platform One Block(VSP One Block)」間をIOWN APNで結び、VSP One Blockストレージどうしを常時データ同期させて、応答時間や障害発生時の切り替え/復旧時間を計測した。ここでは証券会社のオンライン取引トランザクションを模したベンチマークツールを使用したという。

今回は600kmの距離(関東-関西)で2つの検証を実施した

 2024年5月に発売されたVSP One Blockは、2台の物理ストレージ間を常時同期させて、1台の仮想ストレージを提供する「GAD(global-active device)」技術を備えおり、データセンター分散やDRといった用途でシンプルに活用できる。ただし、物理ストレージ間のネットワークレイテンシ(往復応答時間)に「20ミリ秒以下」という制限があり、従来方式のネットワークでは「100km以内」(東京-静岡間相当)の距離が限界だった。

 1つめの検証として、低遅延/低ゆらぎを特徴とするIOWN APNを用いて実験した結果、600kmのネットワーク距離での書き込みは「7.5ミリ秒」、読み込みは「0.1ミリ秒以下」と、GADが求める水準を大きくクリアすることが確認できた。なお、IOWN APNであれば、GADの推奨上限値である20ミリ秒以下を「1000km」の距離で実現できることも分かったという。

日立ストレージの仮想ストレージ技術「GAD(global-active device)」の仕組み

1つめの検証では、GADの仮想ストレージ機能が600kmの遠隔でも使えるかどうかが試された

 もうひとつの検証では、600km離れたDR環境(メインデータセンター/サブデータセンター)を想定し、メインデータセンター側に障害が発生した場合でも、GADの仮想ストレージが問題なく稼働し、シームレスにサブデータセンターに切り替わって業務継続ができるかどうかを確認した。

 実験の結果、メインデータセンターの障害発生から「約10秒」で、データ損失もなく自動的に切り替え(フェイルオーバー)が行われ、サブデータセンターを使ってサービスが維持された。なお、約10秒というフェイルオーバー時間は、同一データセンター内で構成する一般的なサーバークラスタと同程度だという。これにより、災害時にもシームレスな業務の継続ができると結論付けている。

もうひとつの検証では、関東-関西でDR構成をとった場合に、自動切り替えが問題なく動作するかを確認した

 説明会に出席した日立の小川貴央氏は、これまで100kmを超える距離で仮想ストレージを構成する場合は非同期型での運用を提案していたが、「IOWN APNと組み合わせることで、100kmの壁を超えられることが実証できた」と説明。「関東-関西のデータセンター間をつないだ広域のデータ同期によって、ビジネス継続性の向上、災害復旧の迅速化、システム管理と運用の簡素化が可能になる」と期待を述べた。

 また、NTTコミュニケーションズの今野真希氏は、最近の激甚災害の増加に伴って「レジリエンスの強化」が課題となり、金融業界やインフラ事業者を中心にDR構成の導入ニーズが高まっていると述べた。そのほか、生成AIやビッグデータ処理の増加によって、都市部のデータセンターではキャパシティや電力容量の限界を迎えているが、今回実証された技術を用いて地方のデータセンターと結び、分散型データセンターを実現することにもつなげられるとした。

 両社では今後の取り組みとして、ミッションクリティカルな業務を担う金融機関や社会インフラ事業者、クラウド事業者などを対象に、日立ヴァンタラのストレージとIOWN APNの組み合わせによる遠隔地バックアップやDRの提案を行う。また、仮想ストレージ技術でエリアを意識しない広域のデータアクセスが実現するため、分散型データセンターの実現、次世代ITインフラシステムの提供も目指す。将来的には、国境をまたぐ国際間のデータセンター接続への適用も想定していると述べた。

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