年1.9兆円の経済損失を防げるか?“体の変化”に挑むにはデータが足りない
誰にでも訪れる更年期。経済産業省は、女性の更年期症状による労働損失等の経済損失を離職やパフォーマンスの低下などから年間1.9兆円と試算している。国は解決に向けて治療を推進しているが、専門医が15%以下と少なく、更年期に悩む女性の70%は医師にかかれていないのが現状だ。
問題の解決策がない背景は、症状の個人差が大きく、定量化されたデータが存在しないためだという。令和5年度のICTスタートアップリーグに採択されている株式会社YStoryはそのような問題を解決しようと、ヘルスケア管理アプリ「JoyHer」を提供。更年期に関わる過去10年間の国際論文データを機械学習させたアドバイス機能があるアプリで、日々の症状を入力するとパーソナライズされたセルフケアを提案してくれる。参加ユーザーが増えれば、蓄積された症状とセルフケアの記録を医療機関にデータ提供することで、将来的な治療へとつなげる計画もあるという。
同社は、大企業向けに従業員の健康管理としての導入を進めている。アプリの導入で一定の離職抑制効果などが得られれば、他の企業や個人へも広がるだろう。更年期症状のようにデリケートな悩みは課題自体が表面化しづらかったが、アプリの普及から社会の理解が得られることでデータも集めやすくなりそうだ。
文:スタートアップ研究部
ASCII STARTUP編集部で発足した、スタートアップに関連する研究チーム。起業家やスタートアップ、支援者たちの活動から、気になる取り組み、また成長・成功するためのノウハウやヒントを探求している。この連載では、総務省のICTスタートアップリーグの取り組みからそれらをピックアップしていく。
※ICTスタートアップリーグとは?
ICTスタートアップリーグは、総務省「スタートアップ創出型萌芽的研究開発支援事業」を契機として2023年度からスタートした官民一体の取り組み。支援とともに競争の場を提供し、採択企業がライバルとして切磋琢磨し合うことで成長を促し、世界で活躍する企業が輩出されることを目指している。
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