危機情報の可視化・予測ソリューション、アジアで“リープフロッグ”を起こせるか
日本発の「BOUSAI(防災)」テックで世界一を目指すSpectee フィリピン政府が採用
2024年12月05日 09時30分更新
防災テックスタートアップであるSpecteeは、2024年12月2日、海外進出を開始することを発表した。まずは、日本と同様の災害大国であるフィリピンに事業体制を築き、すでにフィリピン政府および地方自治体における導入も決定している。
Specteeがグローバルで展開するのは、AIを活用したリアルタイム防災・危機管理サービス「Spectee Pro」。日本の災害対策で実績を重ねた日本発の“防災(BOSAI)”ソリューションを武器に、2030年には災害対策市場で世界一位を目指すという。
Specteeの代表取締役 CEOである村上建治郎氏は、「災害大国日本だからこそ、防災における技術やノウハウが溜まった。それを世界に輸出していく」と意気込みを見せた。
東日本大震災に始まった危機情報の可視化・予測ソリューションは、契約数1100件を突破
Specteeが創業したのは2011年。同年発生した東日本大震災において「いかに被災地の情報を集めるか」というところから事業が始まった。当時はまだスマホの普及率は低かったが、SNSを通じて被災地の情報を集約する仕組みを構築。これが現在の防災・危機管理サービスの礎となった。
2014年には災害情報の個人向けアプリをリリースし、2016年にはPCに対応した法人版を展開。そして、2020年にはSNS以外のデータソースを取り入れ、地図情報とも連携させ、災害を中心としたあらゆる危機に対策できる「Spectee Pro」を提供開始した。
Spectee Proで収集するデータソースは、SNSをはじめ、気象データ、道路・河川のライブカメラ、衛星データ、自動車走行データなど多岐にわたる。これらのデータを、AIがリアルタイム解析して様々な“危機”を可視化。必要な情報はリアルタイムに通知され、水害の影響範囲や物流リスクなどの被害をAIで予測する機能も提供する。
危機情報を集める仕組みとしては、キーワード抽出だけではなく、AIによる自動判別も活用する。SNSにあがった動画や画像などから、火災や土砂崩れ、冠水といった被害をAIが見つけて、他のデータソースとあわせて随時地図上に反映していく。
また、SNSをソースのひとつとして採用しているため、デマ・フェイクに対する監視にも力を入れる。まず、1次チェックとして情報の真偽をAIが解析。加えて、AIでは見抜けないデマに対応すべく、専門チームを設けて、24時間365日の有人チェック体制も築いている。こうしたオペレーションにより、正確性が担保された危機情報がリアルタイムで届けられる。
Spectee Proの契約数は、現在、1100件を超えている。当初は報道機関での採用が多かったが、機能の拡充につれて自治体や民間企業の採用が中心になってきている。公共機関では、神戸市や福井県、大分県、豊田市などが導入しており、石川県では、能登半島地震の被害状況を同ソリューションで把握している。
民間企業では、製造業・物流や小売・不動産、建築・インフラ事業者、金融・保険の領域などで採用が進み、なかでもイオンでは、全国の店舗周辺や配送ルートにおける被害情報の可視化に活用している。製造業・物流においては、サプライチェーンのリスク管理に最適化した「Spectee SCR」もリリースしたばかりだ。