西日本へのネットワーク拡張では、“70%省電力”の富士通製液冷ネットワーク製品を初採用
欧州最大規模の法人向けネットワーク事業者になったColt、APACへの投資も拡大へ
2024年11月29日 12時35分更新
法人向けネットワークサービスを展開する英Coltテクノロジーサービスが、2024年11月28日、グローバルおよびアジア太平洋(APAC)地域、日本国内の事業戦略説明会を開催した。
昨年、米Lumen TechnologiesのEMEA(欧州/中東/アフリカ)事業を買収/統合して「欧州最大規模の法人向けネットワークサービスプロバイダー」となったColtは、日本を含むAPAC地域への投資拡大も進めている。同日には新たに、オーストラリアのシドニーにおけるメトロエリアネットワークの拡充を発表した。
また日本国内の戦略としては、昨年発表した西日本へのネットワーク拡張を来年後半から順次進めることを説明。そのバックボーンネットワークにおいて、“従来比で70%省電力化”を実現するクローズド液冷方式の富士通製ネットワーク機器(光伝送装置)を採用することも発表した。ゲスト出席した富士通からは、この機器の技術的な特徴が紹介された。
グローバル市場戦略:シドニーでもサービス開始、将来構想では低軌道衛星通信も
Coltは現在、40カ国/230都市以上で自社保有のファイバーネットワークを用いたビジネスを展開している。同社のネットワークには、1100以上のデータセンター、3万2000以上のビルが接続されている。
特に昨年は、LumenのEMEA事業を買収し、そのネットワーク資産を統合した。これにより現在は、欧州最大級のファイバーネットワークと、北米東海岸の主要データセンターに接続した大西洋横断海底ケーブルを保有するサービス事業者へと成長している。
ColtでAPAC地域社長を務める水谷氏は、こうしたネットワークの拡大に加えて、Lumenから幹部クラスを含む1300名の従業員を迎え入れたことで、両社のカルチャーや戦略が融合する効果もあったと語る。「Lumenは大企業向け、あるいは政府系のビジネスに深い知見を持っている。そうした知見が一気にColtに入ってきた、という感覚がある」(水谷氏)。
そしてAPACへの投資も拡大していく。その背景について、水谷氏は「欧州に本社のある大手企業から、アジア圏のネットワークに対する引き合いが非常に増えているため」だと説明する。
まず今年6月には、東南アジア6カ国(インドネシア、マレーシア、フィリピン、台湾、タイ、ベトナム)主要都市へのネットワークカバレッジ拡大を発表している。
それに加えて今回、オーストラリア・シドニーへのネットワーク拡大を発表した。オーストラリアにはこれまでColt、Lumenともメトロエリアネットワークを持たなかったが、顧客からのニーズに応じるかたちで新たに提供を決めたという。サービス提供開始は2025年3月から。
また、グローバルでの将来的な取り組みとして、「NaaS(Network-as-a-Service)機能のさらなる強化」「低軌道衛星通信を活用した低遅延バックボーン」の2つを紹介した。
NaaSについては、すでに提供しているオンデマンドサービスをさらに機能拡充していく方針だという。また低軌道衛星通信については、今年10月にRivada Space Networksとの提携を発表しており、2025年からRivadaが打ち上げる600基の低軌道衛星を用いたネットワークサービスを検討していくと説明した。
「Rivadaは600基の低軌道衛星を打ち上げて、宇宙空間でMPLSネットワークを構築するという取り組みを進めている会社。このネットワークが実現すると、おそらく光ファイバーよりも遅延が少ない長距離通信ができると期待している。これまでのネットワークとはかなり異なる用途、たとえば政府系の通信で地政学リスクを回避したい、あるいは特定用途で遅延が少ない通信を行いたい、そういったニーズにははまるのではないかと考えている」(水谷氏)