このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

マルチAIの生成AIアシスタントを中核に、1000人以上が日常活用する環境構築

もはやDX企業の中外製薬 生成AIのアイディアをボトムアップで集めて束ね、“新薬創出短縮”を目指す

2024年11月25日 08時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

AWSのコンサルサービスを活用し、内製主体のアジャイル体制で生成AI開発を進める

 このように生成AI活用の実用化を進める中で、それを支えるための推進体制も整備している。特化した人材を集めるCoE(センターオブエクセレンス)として「生成AIタスクフォース」を組織化。プロジェクトの推進支援をはじめ、独自LLMの構築検討、PoC環境や活用基盤の構築、人材育成、ガバナンスなど、各部門での生成AIの導入・開発を支援する役割を担う。

CoEとして「生成AIタスクフォース」を構築

 ガバナンスにおいては、リスクを「知財・著作権侵害」「偏ったアウトプット」「個人情報・機密データの漏えい」「目的外利用」「信憑性の欠如」「シャドーAI」という6つの領域で特定して、ガイドラインを策定。各国のハードロー(強制力を持つ規則)を待たずに、社内でユースケースごとのリスクレベルを設定して、ガイドラインを都度アップデートしていく“アジャイルガバナンス”の体制を築いた。

 活用基盤としては、マルチクラウドな独自のクラウド基盤「Chugai Cloud Infrastructure」上で、マルチAIの生成AI基盤「Chugai AI Assistant」を構築。「常にトライアンドエラーで、より優秀で使いやすいものを選択できるように、マルチクラウド・マルチAIの仕組みをとっている」と鈴木氏。

マルチクラウドな「Chugai Cloud Infrastructure」上で生成AI基盤を構築

 また、開発のスピードを上げるために、AIプロジェクトはほぼ100%アジャイル開発で進めており、Chugai AI Assistantも、週次ペースでアップデートしているという。俊敏性と柔軟性を重視するために内製主体での開発体制をとっているが、すべてを自社で進めるのは困難であった。

 そのため中外製薬は、AWSと協働することで、ここまでの生成AI活用の体制を築いた。コンサルサービスである「AWS プロフェッショナルサービス」を採用することで、生成AIの開発プラットフォームである「Amazon Bedrock」などの最新アーキテクチャの活用やアジャイル体制の維持・改善に役立ててきた。「まさにアジャイルチームにAWSが加わるという協働の仕方」(鈴木氏)。

 今後、中外製薬では、Amazon Bedrockを利用して、業務に特化したAIエージェントの構築やRAG向けのデータソースの拡充、業界特有のコンプライアンスやデータセキュリティを担保するガードレールの構築など、Chugai AI Assistantの機能を拡充して生成AI活用を加速させていく予定だ。

「Chugai AI Assistant」今後の展開

■関連サイト

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

  • 角川アスキー総合研究所
  • アスキーカード