話題の「自動でピントが合うメガネ」は認知症予防にもなる?
中高年になると目のピント調整機能が低下し、目が疲れやすく、仕事の能率が落ちてしまう。こうした老眼の悩みを解決する「自動でピントが合うメガネ」がいま注目されている。令和5年度のICTスタートアップリーグに採択された株式会社エルシオは、独自の液晶レンズ技術で自動でピントが合うメガネ「エルシオグラス」の開発を進めている。
従来の遠近両用レンズは位置によって度数が変わるためピントを合わせるのが難しく、また、度数差が大きいと歪みや揺れを強く感じやすかった。見えづらい状態で過ごしていると生活の質が落ち、認知症になりやすいというデータもある。エルシオが開発する液晶レンズは、薄型・広視野・度数変化の幅が大きいことが特徴。電圧を変えてレンズ全体の度数を広範囲に調整でき、視界が広く歪みが軽減できる。通常と変わらない普段使いができる見た目のため、高齢者の転倒や認知症予防効果も期待できそうだ。
しかし、ビジネスの面でものづくりスタートアップには量産化の壁があり、製品化は一般的に遠い。これをエルシオは国内OEMメーカーと製造体制を構築し、メガネ店など代理店を通じて販売形での解決を予定している。同社以外にも国内外の競合各社は「自動でピントが合うメガネ」の開発を進めている。競合の存在する領域では、開発段階から量産と販売網を確保し、いち早く市場へ届けることも勝負どころとなりそうだ。
文:スタートアップ研究部
ASCII STARTUP編集部で発足した、スタートアップに関連する研究チーム。起業家やスタートアップ、支援者たちの活動から、気になる取り組み、また成長・成功するためのノウハウやヒントを探求している。この連載では、総務省のICTスタートアップリーグの取り組みからそれらをピックアップしていく。
※ICTスタートアップリーグとは?
ICTスタートアップリーグは、総務省「スタートアップ創出型萌芽的研究開発支援事業」を契機として2023年度からスタートした官民一体の取り組み。支援とともに競争の場を提供し、採択企業がライバルとして切磋琢磨し合うことで成長を促し、世界で活躍する企業が輩出されることを目指している。
https://ict.startupleague.go.jp/