ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第798回
日本が開発したAIプロセッサーMN-Core 2 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU
2024年11月18日 12時00分更新
NVIDIA A100より高性能で
価格は約半分のMN-Core 2
前置きが長くなったが、ここまでは初代MN-Coreの話で、ここからがHot Chipsで説明のあったMN-Core 2の話である。下の画像が初代MN-Coreのまとめであるが、MN-Core 2の次には推論向けと学習向けで異なるラインナップを用意するという話が出ている。
第2世代のMN-Core 2であるが、目標は高い性能/消費電力比を維持しながらコストを下げることにあるとする。
MN-CoreとMN-Core 2の違いは下の画像のとおりで、MN-Core2ではダイあたりのL2Bの数が8つに増えている。とはいえMN-Coreでは4ダイで16個だったから演算器そのもので言えば半減である。
しかしMN-Coreでは500MHz駆動だったのが、MN-Core 2では750MHzと1.5倍になっている関係で、性能はMN-Coreの75%ほどに落ち着いている。実際性能が393TFlops vs 532TFlopsで73.9%ほどに収束しているから、ほぼ計算通りと言える。
細かいところでは、例えばメモリーの搭載量は半減しているが、演算器の数も半分なので実質変わりはないし、むしろLPDDR4→GDDR6Xで高速化されているから、メモリーアクセスのレイテンシーを減らせて性能を上げやすくなっているともいえる。
性能として示されたものが下の画像である。アプリケーションによって差の開き方がだいぶ変わるのだが、ResNet-50の学習で2倍、推論で4倍というのはわりと大きな差だし、姫野ベンチマークでは14倍以上の差がついているのがわかる。姫野ベンチマークについては理研のウェブサイトを参照してもらいたい。メモリー依存度が非常に高いベンチマークである。
問題はLLMに利用するにはあまりにメモリーが足りなさすぎることだ。今年9月にCloud Operator Days 2024というイベントがあり、そのクロージングでPreferred Networksが「自社開発した大規模言語モデルをどうプロダクションに乗せて運用していくか~インフラ編~」という発表をしているのだが、この中でモデルが巨大すぎ、かつCUDAが必須なので現実問題としてNVIDIAのGPUを使うしかなく、しかもH100/H200は全然入手できないのでA100の利用が現実的、という話をされている。
その意味ではMN-Core 2の性能をA100と比較するのは間違っていないのかもしれない。ただ現実問題として16GBのMN-Core 2では大規模LLMが乗り切らないので、ホストメモリーを併用することになるが、こんなことをしたらまともに性能が出るはずもない。
またCUDAで書かれたコードをMN-Core向けに書き直すのも猛烈に大変である。したがって、今のところMN-Core 2をLLMに使うという話が見あたらないのが、現時点での最大の問題かもしれない。
などと考えていたら、11月15日にPreferred NetworksよりMN-Core L1000の開発に関する発表があった。DRAMをチップの上に3次元実装することで、LLMに必要となる大量のメモリーをHBMよりも安価かつ高速に実現できる、という目論見だそうだ。登場時期は2026年の予定となっている。
話を戻すと、すでにMN-Core 2は発売されており、MN-Core 2を8枚搭載するMN-Server 2 V1が2000万円、1枚搭載のMN-Core 2 Devkitが200万円となっている。おそらくMN-Core 2のカード単価で言えば150万~160万円程度。昨今の為替レートを考えると1万ドル前後というあたりで、ラフに言ってA100の半額、インテルのGAUDI 2よりややお高めといったところだろう。
次世代製品については、学習向けではピーク性能10倍とアプリケーション性能30倍、推論向けは性能20倍としている。それはいいのだが、学習向けがSamsungのSF2というあたりに一抹の不安を覚えざるを得ない。ちゃんと製品が作れるのだろうか?
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