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地銀の新サービス創出を支える、“止まらない”ではなく“早く復旧できる”システムの裏側

「勘定系こそクラウドが最適解」SBIHDによる国内初のAWS勘定系、銀行DX普及の第一歩に

2024年11月27日 09時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

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「次世代バンクシステム」におけるオペレーショナル・レジリエンスの裏側

 続いて、次世代バンクシステムの具体的な詳細を紹介する。

 同システムでは、次世代の地銀に必要となる機能をパッケージ化して、コアとなる勘定系システムからリアルタイムデータを提供する統合データマート(DM)を活用した「情報系システム」、勘定系と連動して営業・融資業務を効率化する「Future BANK」、スマートフォンやタブレットに最適化した「個人・法人インターネットバンキング」などを提供する。

 閉域外ではフロント系システムから共通ATM、本部や営業店用のシステムなどを用意して、アット東京のクラウド中継センターでつなげる。

次世代バンキングシステムの全体像

 この次世代バンクシステムは、AWSをベースとした「SBI金融クラウド」上で構築される。金融庁が定める「金融分野におけるクラウドサービスの利用に関する考え方」に基づき、セキュリティ対策や運用支援、CI/CD環境といった金融機関のクラウド環境に必要な機能を、テンプレートとして実装できるソリューションになる。

次世代バンキングシステムを支える「SBI金融クラウド」

 オペレーショナル・レジリエンスの推進においては、東阪のAWSリージョンおよびアベイラビリティゾーン(AZ)を活用して、高可用性・障害性を確保する。ネットワーク(アット東京のクラウド中継センター)についても、東阪でのマルチロケーション、マルチアクセス回線で構築。ノード・AZ障害は通常障害の範囲として、切り替え・切り離しによって1分で自動回復、リージョン障害は「最終防衛ライン」に設定して、1時間で切り替えられる体制をとる。

 また、「Amazon Aurora」データベースを複数のリージョンにまたがってレプリケーションが可能な「Amazon Aurora Global Database」を運用することで、RPO(目標復旧時点)を計画切替であれば“0秒”、予期せぬ切替でも“通常1秒以内”と定義する設計となっている。

次世代バンキングシステムのレジリエンス

 その他にも、福島銀行の次世代バンキングシステムへの移行・運用においては、AWSのレジリエンシーサービスをフル活用している。検証段階では、フルマネージドな障害シミュレーションサービス「AWS Fault Injection Service(AWS FIS)」で耐障害性をテスト、上述の復旧設計を実証している。

 稼働後の運用においては、重要なワークフローに対するインシデント管理を提供する「AWS Incident Detection and Response」を日本の銀行として初めて採用。AWS側でプロアクティブにシステムを監視して、インシデント発生時には5分以内に初期応答するサービスになる。なお、同サービスは、2024年10月1日より日本語サポートを開始している。

 また、積極的なサービス開発を推進するために、コンテナサービスを運用管理する「Amazon EKS」によって、クラウドネイティブなアーキテクチャーで設計されている。従来の勘定系では、インターネットバンキングやATMなど、チャネルの数に応じてアプリケーションを開発する必要があり、修正やテストなどに多くのコストや手間が発生していた。

 次世代バンキングシステムでは、あらゆる機能をマイクロサービス化することで、APIを通じて他システムやFinTechサービスと容易に接続でき、アプリケーションの拡張性と柔軟性を確保した。加えて、利率や優遇情報などの判断基準のロジックを「BRMS(Business Rule Management System)」として切り出して、ロジックを修正するだけで新商品やサービスを開発できるようにした。

マイクロサービス化で生産性の高い開発プラットフォームに

次世代バンキングシステムを通じて、地銀から銀行DXを広げていく

 この次世代バンキングシステムの第1号ユーザーであり、国内で初めてAWS上で勘定系システムの稼働を始めたのが福島銀行である。デジタル化でペーパーレス・印鑑レスを推進でき、フルAPI化で外部連携も容易になり、BRMSによってサービス開発のスピ―ドが上がることなどを理由に移行を決定した。

 現在、同行の利用者は、タブレットで銀行サービスを受けられるようになり、紙やハンコもほぼ不要に。帳票を72%削減するなどコスト最適化にもつながっている。

 新サービスの創出に関しても、BRMSでルール変更することでステップアップ型の定期預金を開始。また、次世代バンキングシステムの周辺サービスを利用することで、スマホATMにも対応した。

 「周辺サービスをどれだけ充実できるかが、今後の鍵になる。次世代バンキングシステムを導入することで、それらのサービスも活用でき、フロントのシステムも自動で更新されていくのが強み。変革やサービスの創出を目指す地銀にこそ届けたい」(木村氏)

福島銀行における店舗のBefore/After

 次世代バンキングシステムは、2025年には、島根銀行での稼働を予定しており、きらやか銀行や仙台銀行、SBIHD傘下の新生銀行でも検討を始めている。新生銀行での検討を経ることで、大規模な銀行でも耐えうるようなプラットフォームへと進化させていく予定だ。

 木村氏は最後に、「勘定系のクラウド化はDX推進のはじめの一歩に過ぎない。これに何をつなげて、どういうサービスを作っていくか。それを支えるために、レジリエンシーを確保して、クラウドのメリットを最大化し、生まれたリソースを新サービスの創出に充てることが重要」と締めくくった。

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