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富士通の勘定系システムを中核に据えたクラウドネイティブなシステムに

ソニー銀行の勘定系がAWS上で稼働開始 ビジネスアジリティとレジリエンシーを確保

2025年05月08日 14時30分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

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 ソニー銀行は、2025年5月6日、富士通との協業によってアマゾン ウェブ サービス(AWS)上に構築した、新勘定系システム「次世代デジタルバンキングシステム」の稼働開始を発表した。

 次世代デジタルバンキングシステムは、富士通の勘定系ソリューション「Fujitsu Core Banking xBank(Fujitsu xBank)」を中核に据え、AWS上に構築した周辺系システムやクラウドサービスを疎結合で連携させた、柔軟なシステム構成となっている。これにより、預金、決済から外貨、融資まで、ソニー銀行の豊富な商品ラインアップをカバーする、クラウドネイティブなシステムを実現した。

ソニー銀行 新勘定系システムの全体像

 ソニー銀行では、新勘定系システムの特徴を3つ挙げている。

 ひとつ目は、「守りのITから攻めのIT」への転換だ。オンプレミスシステムの場合、一定のサイクルで基盤更改が必要となり、システム維持のための固定IT投資が負担となる。新勘定系システムは、クラウドネイティブな構成によって固定IT投資を大幅に低減。より多くの経営資源を、新商品・新サービス開発といった「攻めのIT」につぎ込むことができる。

 2つ目は、「新商品のスピーディな導入」だ。従来システムは、複雑化・肥大化によって、新商品開発の長期化を招いていたという。新勘定系システムは、AWSのマネージドサービスである、「Amazon ECS / AWS Fargate」「Amazon Aurora」を活用したクラウドネイティブなインフラアーキテクチャを採用。この上に、マイクロサービス化した各商品・サービス、業務機能を実装する疎結合なシステムを構築した。インフラ自体も「AWS CloudFormation」でIaC(Infrastructure as Code)化しており、インフラのデプロイや変更作業も自動化して、環境管理の効率性も高めている。

 さらに今回、勘定系業務アプリケーションのプログラム資産規模を、従来の40%まで縮小。これにより、保守や追加開発の効率化を実現している。ここには、データの一貫性保証が必要な処理を見極めて、必要な箇所で同期性を担保する富士通独自のマイクロサービス実装手法が寄与しているという。

 こうした柔軟性と生産性の高いシステム特性によって、迅速に新商品・サービスを展開し、既存商品・サービスを柔軟に改良できる「ビジネスアジリティ」を確保したという。

 3つ目は、「柔軟な外部連携・新技術の導入」だ。新勘定系システムは、勘定系のコア機能そのものがクラウドネイティブな構成で実装されているため、クラウド上の各種サービスを活用し、外部連携や新技術導入を容易に行うことができる。

 なお、ミッションクリティカルな勘定系システムのクラウド移行に踏み切れたのは、2021年にAWSの大阪リージョンが開設され、東阪マルチリージョンでレジリエンシーを確保できる目途が立ったからだ。メインである東京リージョン被災時においても、早期復旧が可能な環境を構築している。

 加えて、新勘定系システムでは、サーバー/コンテナ、データベース、アプリケーション、サービスなどの各レイヤーに対して、統合的な監視を実施。システム障害発生時には即時に通知される仕組みをとっている。ノード障害や単一のAZ障害では、サービス切り替えが発生し、即時に自動復旧できる設計となる。

 また、勘定系データや情報系データは、「Amazon Aurora PostgreSQL-compatible Edition」に格納しており、正常稼働時は「Amazon Aurora Global Database」の機能によって東京リージョンから大阪リージョンへ常時データをレプリケーションしている。これにより、メインリージョンである東京リージョンの被災時においても、「通常1秒未満」の目標復旧時点(RPO)を実現している。

新勘定系システムの災害対策構成概要図

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