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AWSジャパンは新たな金融戦略「Vision 2030」を策定

みずほ銀行が勘定系の一部をAWSへ 障害を前提としたレジリエンス強化を目指す

2025年03月03日 07時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

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 アマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWSジャパン)は、2025月2月25日、金融領域の新たなビジネス戦略である「Vision 2030」を発表した。

 同ビジョンは、生成AIによるマイグレーションやビジネス創出に加えて、「オペレーショナル・レジリエンス(業務の強靭性・復旧力)」の確保を推進する内容となっている。オペレーショナル・レジリエンスとは、業務が中断することを前提に、早期復旧や影響範囲の軽減を担保する枠組みを指す。

 このオペレーショナル・レジリエンスを高めるべく、ハイブリッドクラウドの活用を加速しているのがみずほ銀行だ。同行は、勘定系システムの一部と開発環境を、2026年度を目途にAWSへ移行する。

 AWSジャパンの常務執行役員 金融事業統括本部 統括本部長である鶴田規久氏は、「(Vision 2030は)生成AI活用の支援とレジリエンスサービスのさらなる強化がポイントになる。監督官庁やお客様から、AWSは電気やガスと同様であるため、責任を持って取り組んで欲しいと要望されている。日本社会に対して安定した基盤を構築することは、次のステップのために避けては通れない道」と説明する。

アマゾン ウェブ サービス ジャパン 常務執行役員 金融事業統括本部 統括本部長 鶴田規久氏

4つの柱で日本社会・経済の安定した基盤提供を目指す

 AWSジャパンは、2021年、「金融ビジネスを変革する戦略パートナー」になることを目指すビジネス戦略「Vision 2025」を掲げた。同ビジョンのもとで、「クラウド基盤による金融ビジネスの創出」や「あらゆるチャネルでの顧客関係の構築」、「勘定系のクラウド移行をはじめとするレジリエンスの確保」、「変革を推進する人材育成」といった実績を重ねてきた。

 同ビジョンが5年目に突入したタイミングで、策定されたのが「Vision 2030」である。2030年に向けての新たな目標は、「日本社会・経済の安定した基盤を提供」することだ。

 Vision 2030では、金融機関に対する支援を4つの柱で展開する。

Vision 2030の4つの柱

 ひとつ目の柱は、「戦略領域への投資拡大」だ。金融情報システムセンターが2024年に実施した調査によると、日本の金融産業における戦略投資(新規開発)の比率は「10.6%」に過ぎないという。「この投資比率をAWSのサービスで変えたい」と鶴田氏。

 新規開発の鍵になるのが、生成AIによる開発生産性の加速だ。現在、AWSは、生成AI関連サービスを「インフラ」「開発基盤」「アプリケーション」の3層で提供。特に、構築済みで提供するアプリケーションのひとつ「Amazon Q Developer」は、ソフトウェア開発の生成AIアシスタントとして金融業界のモダナイゼーションを支援する。

 鶴田氏は、「技術者がいなくなり、COBOLによる勘定系システムに手をつけられない金融機関が多く存在する。Amazon Q Developerは、Javaへの変換までサポートするなど、間違いなくゲームチェンジャーとなる」と強調する。実際に、日本総研では、Amazon Q Developerを用いて、Java8からJava17へのモダナイゼーションの検証を終えると共に、メインフレーム上で稼働するCOBOLアプリケーションのJava移行を進めているという。

3層で展開されるAWSの生成AI関連サービス

 2つ目は、「新規ビジネスの迅速な立ち上げ」だ。240を超える同社のクラウドサービスに加えて、生成AI関連サービスで金融ビジネスの創出を支援する。

 中でも、生成AIアプリケーションの開発環境である「Amazon Bedrock」は、利用用途に応じて豊富な基盤モデルを選択できるのが特徴であり、蓄積された顧客データの活用が可能になる。Amazon Bedrockは、2025年2月20日、大阪リージョンに対応したばかりで、「いよいよ業務アプリケーション群にも(生成AIを)展開可能になってきた」と鶴田氏。

Amazon Bedrockで選択できる基盤モデル

 3つ目は、「イノベーション人財の育成」だ。これまでもAWSが手掛けてきた、伴走型で内製化を支援する「デジタルイノベーションプログラム」を、金融機関に対して展開していく。

 りそなホールディングスでは、新任役員の必須研修として、「Working Backwards(Amazon独自の顧客起点のサービスデザイン手法)」を活用したトレーニングプログラムを実施。また、大和総研では、Working Backwardsを活用して、新規ビジネスのピッチコンテストを開催。新サービスの創出につなげているという。

 最後の柱は、過去4年間でも最も注力してきたという「レジリエンシーの更なる強化」だ。オペレーショナル・レジリエンスを確保するためのアーキテクチャーや技術支援、サポートサービスを提供してきた。

 代表的な取り組みが、セキュリティと可用性を備えたシステム構築のためのフレームワーク「金融リファレンスアーキテクチャー(日本語版)」の提供だ。同アーキテクチャーは毎年改善を重ねており、2025年版では、FISC安全対策基準 第13版への対応や実装ガイドの拡充などを行っている。また、オペレーショナル・レジリエンスへの理解を深めるためのワークショップも開催している。

金融リファレンスアーキテクチャー日本語版のアップデート

 レジリエンスを高めるためのサポートも強化している。「AWS Incident Detection and Response」は、プロアクティブな監視とインシデント発生時における5分以内での初期応答を提供するサービスで、2024年10月には24時間365日の日本語対応を開始している。

 Vision 2030で推進するオペレーショナル・レジリエンスへの転換などに賛同して、パブリッククラウドの活用を進めるのがみずほ銀行だ。

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