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業務を変えるkintoneユーザー事例 第251回

3つのステップで進めた、自主的にシステム化できる土壌の醸成

これからは“攻めの情シス”で行こう! 上司の一言でkintone伴走支援班は突っ走れた

2024年10月29日 07時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp  写真●サイボウズ

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 kintoneユーザーによる事例・ノウハウの共有イベント「kintone hive 2024 nagoya」が開催された。

 本記事では、トリを務めた興和工業所、 片山美紀氏によるプレゼン「その常識kintoneで変えませんか。社内を変えた、伴走支援」をレポートする。

興和工業所 情報システム部 片山美紀氏

6年の時を経たkintoneセカンドストーリー、今度の主役は伴走支援班

 「ご安全に!」。興和工業所は、2018年にもkintone hive Nagoyaに登壇しており、前回登壇した関晋太郎氏と同様の掛け声でプレゼンはスタートした(参考記事:製造現場と外注先との情報共有をkintoneで「ご安全に」

 興和工業所は、もうすぐ創業80年を迎える総合エンジニアリング企業だ。主たる事業は「メッキ」であるが、ニーズに応じて金属の成形・溶接・塗装・組み立てなどあらゆる金属加工や表面処理を手掛ける。

 同社のkintoneとの出会いは2017年、「基幹システムのデータを社外と共有したいけど、二重入力はしたくない…」という工場の要望から導入に至り、その変革をkintone hiveでも語った。片山氏が語るのは、その後のkintone普及への物語だ。

 社外との情報共有にkintoneを導入した後に、他の工場からの要望を受けて説明会などを開き、5年半でアカウント数は120個、実運用アプリは200個と、kintoneの活用は広がっていた。客先とのデータ共有も増え、全社的にユーザー数も増えた。

5年半でここまで広まったkintone

 しかし、情シスの課長である関氏は、この普及状況に満足していなかった。大半がほかの人が作ったアプリを使うユーザーで占められ、作れる人はまだまだ少ない。「kintoneならもっとやれるはず」「会社全体でDXを進められるはず」、そして「もっともっとkintoneで業務改善をしてほしい」という想いを秘めていたという。

 kintone普及における課題は、情シスの体制にあった。従業員は1000名、国内だけでも22拠点ある中で、情シスの体制は10名。情シスの仕事は多岐にわたる中で、「一人で100人分の面倒をみないと成り立たない」(片山氏)という状況であり、結果kintone担当は課長ひとりで、積極的なサポートをする余裕はなかった。

総勢10名からなる情シスの仕事は多岐にわたる

 転機となったのは、2023年秋ごろ、片山氏を含めた5名が情シスに加わったことだ。それに伴い、課長と新人3人からなる「伴走支援班」が始動した。

現場のニーズを汲み取る“攻めの情シス”を、目標は“自主的なシステム化”の土壌を育むこと

 伴走支援班の目標は、ただのデジタル化ではなく、「誰でも自主的にシステム化できる土壌を作ること」だ。「そのためには、『自分たちでもできる』と思ってもらえる、“精神的な土壌”を育む必要がありました」と片山氏。その自主的なシステム化を進めるためのツールが、kintoneという位置づけだ。

 そして目標達成のためには、「知名度向上」「個別支援」「盛り上げ」の3つのステップが必要と、チームで話し合った。このステップを循環させることで、kintoneが普及して、いずれは伴走支援班も不要になるはずだ。

 最初のステップである「知名度向上」は、「知り合いが使っているなら興味がわくだろう」という狙いで、「社内事例インタビュー」を作成した。kintoneアプリの作成者に、アプリの強みや作成の苦労を語ってもらい社内発信。記事は好評で、実際に「アプリを使ってみたい」という声をもらうようになった。

アプリの強みや作成の苦労をインタビュー記事で情報発信

 その声を拾い、作者にも許可をとった上で、「お試しアプリ」も作成した。本来は消えてしまう、プラグインの設定やレコード情報まで忠実に再現。それを管理権限ごと全社公開して、設定の確認や再利用を促した。事故で消されてしまったこともあったが、「何度でも作り直すから試して欲しい」(片山氏)という強い意志で運用したという。

作成者に許可を取り、テンプレート機能でお試しアプリ作成して社内公開

 次のステップは手厚い「個別支援」だ。

 たとえば、「効果を出せるか分からないものに、お金を出せない…」と言われたら、情シス負担で3か月分のアカウントを用意して、まずは試してみましょうと提案した。「導入しても触る時間がなく、すぐに効果が出せないから、上司に納得してもらえない…」と言われたら、作りたいアプリのサンプルを渡して、実績を作ってもらった。リクエストに応えるために、プログラミング言語やAPIなどをイチから勉強して、専用プラグインを作成したこともある。

 こうした徹底的な個別支援ができた理由、それは現場のニーズを汲み取る“攻めの情シス”をしようと、上司からの後押しがあったからだ。片山氏は、「費用の負担までして、上司に怒られないかと疑問に思うかもしれませんが、むしろ応援してくれました。『何かあったら責任は取るから、これからは“攻めの情シス”で行こう』と言われ、伴走支援班は突っ走ることができました」と振り返る。

プログラミング言語やAPIなどをイチから勉強して、現場のリクエストに応える専用プラグインを作ることも

 最後は、一人で悩まないよう仲間を作る「盛り上げ」のステップだ。まず社内ユーザー会を開催。申し込み用のアプリも作るという気合の入りようだったが、それに応えるように満員御礼になった。ユーザー会自体で意識したのは、とにかく楽しいと思ってもらうこと。kintoneアプリを見せ合える共有PCも用意して、大盛況となった。

 さらに、初心者向けにはアプリ作成講習会も開いた。貸出PCとお試し環境を用意して、扱いの難しい「ルックアップ」と「関連レコード」を使ったアプリを作成してもらった。

アプリ作成講習会では「ルックアップ」と「関連レコード」を解説した

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