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自動運転バスがすごい 技術開発の熱意を感じた

2024年10月16日 20時00分更新

文● @sumire_kon

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スマート道路灯で死角を排除&遠隔監視もPCで

 ここからは、今回の実験で検証された自動運転を支える技術をご紹介しよう。

●「スマート道路灯」でバスの死角を補う(路車協調システム)

 車両に設置されたカメラやセンサー類で周囲360度の状況を常にチェックできる自動運転バスだが、建物に囲まれた交差点など、車両側の装備だけでは死角の発生が避けられない場面もある。それを補ってくれるのが、「スマート道路灯」を使った路車協調システムだ。

スマート道路灯

スマート道路灯

 スマート道路灯は、灯具部にAIカメラとセンサーを取り付け、周辺を走る車両や歩行者を検知する新しい道路灯システム。検知した情報は随時自動運転車へ送信され、接触・衝突事故を未然に防ぐことができる。

灯具部にAIカメラとセンサーを搭載

灯具部にAIカメラとセンサーを搭載

 今回の実験では、出発してすぐの所にある交差点に設置され、動物園外からこちらに向かってくる車両や歩行者の動きを監視。自動運転バスが安全に交差点を通過できるよう手助けしていた。

 スマート道路灯の見た目は通常の道路灯とあまり変わらず、言われなければ区別がつかない。検知能力もかなり高く、接近する車両、歩行者ともにほぼ100%検知できるという。バイクと自転車のように形状が似ている車両の「区別」は失敗することもあるが、このあたりはAIカメラの学習が進めばいずれ解決するはずだ。

 メーカーによると、試作段階のため価格は未定だが、従来の道路灯より少し高くなる程度に抑える方向で開発を進めているという。

●PC1台あればOK! 遠隔監視システム

 バスなどの公共交通機関でレベル4以上の自動運転を実施する場合、人間の監視員が遠隔からリアルタイムで車両の状況を確認することが求められる。

 今回のケースでは、実験エリアから離れた相鉄バスの営業所内に遠隔監視用のPCを設置。5Gなどの無線通信と光回線を併用し、リアルタイム監視の実用性を検証した。

 営業所側ではバスの車載カメラの映像や走行速度、ハンドルの向きなどの情報をPC上でリアルタイムに表示。バスから営業所への映像送信には、通信回線の帯域にあわせて伝送レートを自動調整する「AV-QoS」という技術を採用し、車両からの映像が途切れにくくなるよう工夫されている。

 本システムはデスクトップPCと複数枚のディスプレーを使った運用を想定しているが、動作に必要なPCのスペックは一般的な事務作業向けマシンと同程度。実際、試乗会の会場ではノートPCを使ったデモも披露されている。自動運転の導入自体に相応のコストが掛かることを考えると、遠隔監視システムを市販のPCで運用できるのはバス事業者にとって無視できないメリットだ。

ノートPCを使った遠隔監視システムのデモ

ノートPCを使った遠隔監視システムのデモ

 さらに、運転手不足が深刻化するバス業界の事情を踏まえ、複数台のバスの同時監視にも対応。うまく活用すれば、これまでより少ない人手で、これまでと同等かそれ以上の運行本数を確保可能だ。とはいえ、1人の監視員が同時に何十台も監視することは現実的ではないため、メーカーでは今後、監視員1人あたりの適正な担当台数を見極める必要があるとしている。

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