「挑戦意欲のある人材に予算と権限を」日米比較の調査結果からPwCコンサルが提言
初動は早かったが、結局生成AI活用で後れを取る日本 理由はリスク対策・保守的な文化
2024年10月07日 13時15分更新
PwCコンサルティングは、2024年10月4日、「生成AIに関する実態調査」の日米比較に関する説明会を開催。
調査によると、日本より米国の方が生成AI活用が進んでおり、「期待を大きく超えた」という企業が、日本は9%だったのに対して米国は33%に上った。
PwCコンサルティングの執行役員 パートナーである三善心平氏は、「日本は技術的な検証などでは他国より先行し、初動はすごく良かった」一方で、「その先の実装や運用、具体的なリスク対策が進まず、“とりあえず危険”“何が起こるかわからないから止めておこう”といった保守的な文化などが障害になり、検証から先に踏み込めていない」と強調した。
生成AI活用の初動は早かった日本、米国と比べた現状は
PwCコンサルティングは、2024年6月に、国内企業を対象とした「生成AIに関する実態調査2024 春」を発表。同調査では、生成AI活用において期待を大きく上回る企業と下回る企業で二極化の兆しがあることを明らかにした(参考記事:生成AIで効果を生む/生まない企業の境目は「ユースケース設定」 ― PwC調査)。
今回、同調査を米国でも実施、日米の生成AI活用の実態を比較した。売上高500億円以上の企業でAI導入に関与している、日本企業の912名(2024年4月調査)および米国企業の300名(2024年5月調査)を対象としている。
まず三善氏は、日本は生成AI活用において、かつては「主要他国を先行していた」と説明。PwCコンサルティングが2023年10月から11月に実施したCEO意識調査では、「過去1年、生成AIは業務に受け入れられているか」という質問に対して、日本は対象国でトップとなる50%が「受け入れられている」と答え、米国は38%だった。「DXで成果を出している企業が少ない中、既存ビジネスの存続可能性の危機感から生成AIに飛びついた企業が多かったのではないか」と三善氏。実際に当時、同社のグローバルネットワークでの情報交換でも、日本はユースケースや技術検証で先行していたという。
しかし今回の調査の「生成AIの社内活用の推進度合い」においては、日本は推進中以上(推進中・活用中)の企業が67%だったが、米国の推進中以上の企業は91%となった。「日本は生成AI活用の初動は非常に早く、これまでと比べてモチベーション高く進んでいたと捉えていたが、残念ながら春時点の日米比較では追い抜かれた」と三善氏。
日米での生成AIサービスに対する認知度も差が出た。日本での生成AIサービス・キーワードの認知度は、GPT・Azure関連が上位を占め、GPT・Azure以外の認知度の平均は15%。米国でもGPT・Azure関連が上位ではあるものの、GPT・Azure系以外の認知度の平均も31%と、日本と比べて16ポイントも高い。三善氏は、「米国は、幅広く生成AIサービスやLLMの情報収集しながら検討している」と補足する。
日本は生成AIで大きな成果を得られた企業はわずか、日米での成功企業の特徴は?
生成AIで成果が得られている企業の割合も差が付き始めている。日本では、生成AIの活用効果を「期待を大きく上回っている」と回答したのが9%にとどまったのに対して、米国では33%に上った。
「期待を大きく上回っている」とする企業にフォーカスすると、日米共に、画像や音声、プログラミングといった高度なコンテンツ生成であったり、新規サービスへの適用を進めている企業の割合が多く、米国はよりその傾向が強かったという。
成果を得ている企業において日米で違いがみられたのが、生成AI導入の進め方だ。日本は全社基盤を導入した上で業務特化の利用を推進する企業が成果を得ている傾向だが、米国は全体的に全社活用の割合は低く、個別の事業部門でのユースケースを先行させる企業の方が成果を得ている。
違いはあれ日米共通の成功要因となっているのが「ユースケース設定」だ。生成AIが期待以上の成果を出した要因として、日米ともに最も多かったのは「ユースケース設定」となっており、「データ品質」、「開発・利用環境の整備」が続いた。挙げた企業は少ないものの、日本より米国が成功の要因として捉えているのが「ガバナンスの整備」だ。
他の調査項目でも、ガバナンスにおける日米の意識の違いが表れており、特に生成AIのリスク対応の状況で大きな差が生まれた。各リスク対応策について、日本は平均26%の実施率なのに対して、米国の実施率は平均46%。まったく実施していない企業が日本では20%存在するが、米国では3%のみであった。三善氏は、「日本は保守的という話もあるが、はたして色々検討した上でのリスクセンシティブなのか。米国では、オペレーションも含めて具体的なリスク対策を講じるところまで進んでいる」と強調する。
もうひとつ顕著な差が生まれたのは、生成AI活用の指標だ。日米ともに「生産性」を最も重要な指標としているが、日本は次点が「工数・コスト」であるのに対して、米国の次点は「顧客満足度」である。「日本は、全社的な効率化の一環で、工数やコストを削減することをメインとしているが、米国は個別事業部門への導入が優先され、社内だけではなく社外にも活用の目が向けられている」と三善氏。