業務を変えるkintoneユーザー事例 第246回
営業管理の質の向上、統一プロジェクトで変えられるか
kintoneで営業報告を5.5倍に 秘訣は「共感を得る仕組み」と「人を動かす仕掛け」
2024年10月10日 09時00分更新
社内浸透には「人を動かす仕掛け」、kintone構築には「居住性」にこだわる
スモールスタートする営業所を選ぶ際、吉原氏が注目したポイントは3つだ。1つ目が、DXに前向きで熱量があること。2つ目が、営業所のメンバーにしっかり落とし込めること。3つ目が、全社展開する時に横展開を手伝ってくれることだ。この条件に合致する所長と会話を重ね、kintone環境を整えていった。
kintoneの構築で特に意識したのは、「ユーザーの居住性」である。社員はPCやタブレット、スマホに加え、紙も併用している。そのため、どのデバイスでも使いやすいようにアプリを作った。「それまでは、最高のUIを持つサイボウズ Officeを使っていました。kintoneに引っ越した時も、居心地がよくなければみんなに使ってもらえない」と吉原氏。
たとえば、顧客管理アプリでは技工所の情報をテーブルに登録しているが、一覧画面で見る際には「表示する」をクリックする必要がある。そこで、プラグインを使って自動表示させた。タブレットで情報を確認する際に、歯科医院名などのフィールドを固定表示したまま、他の情報をチェックできるようにするなど、とにかく使い勝手にこだわった。その他にも、ルート表はメモを書き込んだりするため、「プリントクリエイター」(トヨクモ)で印刷できるようにしている。
目当てのアプリを簡単に開けるよう、ポータル画面にも工夫を凝らした。ボタンには、アイコンに加えて“何をするアプリか”を文字でも表示。やりたいことを選ぶだけでアクセスできる。
入力の手間も徹底的に省いた。活動報告は主にスマホで入力されるため、歯科医院の情報はコードを入力するだけでルックアップで取得でき、他の項目も選択肢を選ぶだけで済む。そのおかげで、20秒もかからず報告できるようになった。
「ただ、ここまでやっても、フィードバックがないなら書かないよ、と言う人が絶対います。そこで、データを『自分ごと化』しました。活動報告の集計結果をポータルに貼り付け、『入力している人は自分は今トップだから行動しよう』、『気になるあの人の結果を見て自分も行動しよう』と、次の入力につながる仕掛けを作りました」(吉原氏)
また、活動報告を月一のレポートに反映させてフィードバックさせる仕掛けも作った。ウイングアーク1stのiPaaS「dejiren」を利用して、ビジネスチャットツールの「LINE WORKS」やBIツールの「Motion Board」とkintoneをつなぎ、kintone内にあるデータを可視化できるようにした。
活動報告数は5.5倍に、8割がマネジメントの質が良くなったと回答
そして2023年12月、トップダウンでkintoneへの移行がスタート。横展開もスムーズに進み、サイボウズ Officeの頃と比べて活動報告数は5.5倍に増えた。2024年に入っても5か月間投稿数はキープしており、kintoneの活用はすっかり定着。社内アンケートでは、約8割の社員がマネプロによってマネジメントの質が良くなったと回答した。
営業社員のモチベーションも高まり、kintoneに興味を持った他部署の社員が構築者になるといった動きもみられるように。そんな様子を見た経営層は、社員の行動量も評価対象にすることを決める。それを聞いた管理職は、それは大変だと、kintoneへの活動報告入力を業務のルーティンに組み込んだ。
吉原氏は、「営業所ごとの行動のベクトルが揃ってきた結果、社内のカルチャーが変わるという大きな成果も得られました。今後は生成AIを気軽に触れる環境を作りたいと思っています。いきなり、ChatGPTに触れるのはハードルが高いので、慣れ親しんでいるkintone内で利用できる環境を作ります」と今後の展望について語る。加えて「“共感を得る仕組み”と“人を動かす仕掛け”を実装したことで結果を出せた」と締めくくった。
プレゼン後にはサイボウズ株式会社パートナー第1営業部 沖沙保里氏から質問が投げかけられた。
沖氏:いろいろなプラグインをうまく組み合わせているという印象があります。どうやってプラグインを見つけているのでしょうか?
吉原氏:プラグインに関してはコストがかかるので、まずは無料で試せるところから当たっています。例えばTISさんのプラグインは無料で試して、望んだ結果が得られたので導入しています。
沖氏:JavaScriptを今まで書いたことがないのに「やってみよう」と思えた、原動力はなんでしょうか?
吉原氏:kintoneへの引っ越しプロジェクトを成功させなければ後がないと、自分を追い込みました。プログラムにはそんなに抵抗なかったので、cybozu developer networkに書いてあることに従いました。崖っぷち感を自分で作ること、あとは楽しむことだと思います。

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