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両社AI協業の成果も披露、「Workday Rising 2024」エッシェンバックCEO 基調講演レポート

Workday年次イベントにSalesforceベニオフCEOが登壇、AIエージェントの価値を語る

2024年09月24日 07時00分更新

文● 末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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Workdayが開催した年次イベントの基調講演に、Salesforce CEOがオンライン出席した

 クラウドERPベンダーのWorkdayが2024年9月16日~19日、米国ラスベガスで年次イベント「Workday Rising 2024」を開催した。18日の基調講演には、6ヶ月前に単独CEOとなったカール・エッシェンバック氏が登壇し、Salesforce会長兼CEOのマーク・ベニオフ氏などSaaS業界の重鎮らとの対談を披露した。

Workday CEOのカール・エッシェンバック(Carl Eschenbach)氏

SalesforceベニオフCEO、「Dreamforce」の開催中にオンラインで出席

 Workday Risingが開催された9月第3週は、米国IT業界における“秋のイベントシーズン”真っただ中だった。前週にはOracleが「Oracle CloudWorld」と「NetSuite SuiteWorld」を開催、そしてこの週は、ラスベガスのWorkday Risingと同時に、サンフランシスコではSalesforceの「Dreamforce 2024」が開催されていた。

 年次イベントの会期が重なってしまったWorkdayとSalesforceだが、仲が悪いわけではない。それどころか、Workdayの共同創業者であるアニール・ブースリ氏が「Workdayを立ち上げる際、最初にアドバイスをもらった人物がベニオフ氏だった」と語るほどだ。現在でも関係は良好であり、今年7月には、AI関連で両社の製品連携を進める計画も発表している。

 こうした背景があるためか、Salesforceのベニオフ氏は、自社の年次イベント「Dreamforce」開催中のサンフランシスコからオンラインで出席した。

 エッシェンバック氏が「業界で最も大切な2つのカンファレンスが、別の場所で同時に開催されるのは残念だ。きちんと日程調整をしなければ」と語ると、ベニオフ氏は「何を隠そう、初年度のWorkday Risingで、最初のスピーカーとして登壇したのがわたしだった。一緒にイベントを開催したいという夢も持っている」と答えた。

アニール・ブースリ(Aneel Bhusri)氏は、「初年度(2007年)のWorkday Risingで着ていた」というユニフォームで登場した

次世代AI「Illuminate」ベースのAIエージェントを披露

 今年のRisingにおいて、Workdayは次世代のWorkday AIである「Illuminate」を発表し、それをベースとした3種類のAIエージェントを披露した。人材のリクルーティングに特化した「Recruiter Agent」、後継者プランニング支援の「Succession Agent」、経費報告・処理の「Expenses Agent」の3つだ。一方で、SalesforceはDreamforceで「Agentforce」の一般提供開始を発表している。

 AIエージェントを提供する意義について、ベニオフ氏は次のように話した。

 「われわれの顧客は、AIのモデルを取得し、ハイパースケーラーからインフラを調達し、データベースを構築し……といった具合に、AIを“DIY”でやっていくことは不可能だと気づいている。AIエージェントの提供で、そうした課題を解決できる」「Salesforceはエージェントファクトリーを用意した。ここサンフランシスコで、このファクトリーを使ったエージェントの構築がすでに始まっている」(ベニオフ氏)

 ベニオフ氏の説明によると、Salesforceでは「SalesCloud」「Tableau」といった同社製品のプラットフォームを再構築し、Data Cloudを通じて深く統合させ、この上にAgentforceを載せるという。Data CloudとWorkdayの統合も深化しているため、「Workdayのデータを使い、Agentforceでエージェントを構築する」こともできるという。

 Workday側でも、「Workdayが用意するAIエージェントだけでなく、顧客が構築したAIエージェントを動かすことができる」(Workday CPOのデビッド・ソマーズ氏)と発言しており、そこではSalesforceのAgentforceの名前も挙がっていた。

 ベニオフ氏は、自律型のエージェントをAI利用の“第三の波”と位置付ける。第一波が予測AI、第二波がCo-pilot(生成AI)、そして第三波が自律型エージェント、という流れだ。第三波までたどり着いたことで「企業はやっとAIから価値を得ることができる」という。

 「業界はこれまで、莫大な額をAIに投資してきた。しかし、顧客企業のうち、AIから劇的な価値を引き出せている会社はごくわずかだ。(自律型AIエージェントは)この状況を変えることができる」(ベニオフ氏)

ベニオフ氏「今年のDreamforceには4.5万人が来場している」、エッシェンバック氏「Workday Risingも3万人だ(オンライン参加を含めて)」、ベニオフ氏「追いつくことはないと思うけど、がんばって!」と、からかいあう一幕も

AI関連の両社製品連携、発表後の共同開発による成果を披露

 基調講演では、7月の発表以降、両社のエンジニアが共同開発を行った成果が3つ披露された。

 1つめは「Workday for Slack」。Slack経由で新入社員が自らWorkday上の連絡先などを更新できる様子をライブデモで見せた。さらに「Slack AI」と「Workday Assistant」(Workday Illuminateをベースとした新たなUI)をシームレスに統合し、ユーザーが自然言語でWorkdayに質問できる。

 2つめはWorkdayとSalesCloudとの連携だ。両者のデータセットから個々人のスケジュールや能力を参照し、新しい取引の担当者を割り当てると、担当者に対して「Salesforce Einstein」が取引成功のために受けるべきトレーニングを提案したり、メンターを推薦したりする。クリックすればすぐアクションにつながる点も特徴だ。

 3つめは、両者のAIエージェント間の通信だ。たとえばWorkday側のWorkday Assistantに「セールスチームのパフォーマンス改善のヒント」をたずねると、エージェントは両者のデータを参照したうえで「チームメンバーが仕事量が多すぎて疲れている」ことを発見する。さらに、チームメンバーが持つスキルセットと現在のワークフローを比較して、「現在のチームではワークフローを満たせない」ことも判明した。Workday Assistantが人を増やすなどの戦略ウランを提案し、従業員の補充依頼を生成するなどのことも半自動的に行えることをライブデモで示した。

 エッシェンバック氏は「AIが文脈を理解して機能することで、作業を大幅に効率化できるだけでなく、仕事のやり方が完全に変わる」と強調した。今年のRisingのテーマは“Forward Forever”。常に変化を受け入れ、前進し続けようというメッセージだ。

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