2024年6月から、中南米・カリブ地域でパ・リーグ6球団の主催試合の放映・配信がスタートしている。ワールド・ベースボール・クラシックの影響で海外での「野球人気」が高まっている中、日本のプロ野球は海外の国々からどのくらい注目されているのだろうか。
主催試合を中南米・カリブ地域で放送することになった背景や今後の展望を、パ・リーグ6球団による共同出資会社「パシフィックリーグマーケティング」(以下、PLM)に取材した。
公式戦を週に3~5試合放送する
今回の「中南米・カリブ地域での主催試合放送」は、アメリカにあるスポーツチャンネル「One Baseball Network」とパートナーシップ契約を結んだことで実現した。
同社は、中南米・カリブエリアをメインとする野球専門チャンネルで、2024年6月から11月の期間、パ・リーグ主催の公式戦を週に3~5試合放送している。
配信プラットフォームはケーブルTVとデジタルの2つで、録画した試合に現地言語でのコメンタリーや字幕を付け、同日中の「視聴しやすい時間」に放送している。リアルタイムでの放送も可能ではあるものの、時差で現地時間5時といった早朝の放送になってしまうため、ディレイ放送となっている。
中南米・カリブ地域は日本のプロ野球需要が高い
中南米・カリブ地域でパ・リーグの主催試合を放送することになった理由について、メディアライツ事業部で海外グループのマネージャーを務める髙木隆氏は「中南米・カリブ地域で放送したいという要望があった」と話す。
髙木氏によると、「中南米・カリブ地域は野球コンテンツへの潜在的な需要が高かった地域」とのこと。そもそも野球の強豪国が多い地域であり、日本でも活躍している選手が多いなど、選手の一大輩出エリアだ。野球文化が根強い国や地域であるため、野球への関心は非常に高いという。
実際に放送開始前から好意的な意見が現地から多く届いており、放送が始まっている現在では、定量的なデータは集計中であるものの、現地の関係者からは高い評価を受けているという。また、日本でプレーしている中南米・カリブ地域出身の選手からも、「日本で活躍する姿を故郷の家族や知人に見せることができる」といった、今回の取り組みへのコメントが届いている。
日本のスポーツコンテンツを広めるきっかけになる
今回の取り組みは、日本プロ野球にどのような影響をもたらすのだろうか。
髙木氏によると「もともとパ・リーグは『国際的視野に立つ職業野球』として結成された。先人たちの想いを継承しながらわれわれは海外事業を推進し、海外にパ・リーグの魅力を広め、新たなファンを獲得すべく活動している。中南米・カリブ地域での放送が実現したことで、まだ放映されていない国や地域からの興味関心は確実に高まる。特に、野球が盛んな国であるものの、まだパ・リーグの試合が放送されていない国や地域に対して良いアピールになると期待している」という。
今後人口が減っていくことで、国内のスポーツ市場が縮小していくことが目に見えている中、海外に目を向けていくことが重要だ。実際に、国を挙げて海外に日本のコンテンツを輸出していく機運が高まっている。
今回の取り組みをきっかけに「パ・リーグの主催試合」を放送する国が増えれば、他のスポーツ業界への良い刺激になるだろう。髙木氏も「日本プロ野球界やスポーツ産業に良い影響をもたらすことができるとうれしい。既に海外進出しているスポーツリーグやチームも沢山おられるので、他のスポーツ業界とのナレッジ共有というのも今後行いたい」と話す。
今後の展望について髙木氏は、「単年ではなく、今後3年4年と長く続けていきたい。また、現地のチームとコラボレーションを行うなどしてパ・リーグのプロモーションを行いたい」とのこと。
海外での日本プロ野球人気が高まれば、日本のスポーツコンテンツを海外に広める大きなきっかけになるだろう。中南米・カリブ地域に続いてパ・リーグの主催試合を放送するエリアが増えていくか、今後の展開に注目したい。