国際バスケットボール連盟が実施するスポーツテック公募事業で、「IMAGICA GROUP」の新しい体験型コンテンツの実証実験が行われた。同コンテンツは、「ボリュメトリックビデオ技術(提供:ニコン)」を活用したもの。では、このボリュメトリックビデオ技術とは、どのような技術で、スポーツ体験にどのような価値を生み出すのだろうか。
ボリュメトリックビデオ技術とは
ボリュメトリックビデオ技術は、空間や被写体を360度あらゆる方向からデータ化する技術。同技術を用いて作成した映像データは、さまざまなアングルやズームで見ることができ、全く別の背景に合成することも可能だ。
映像のアングル変更などは見る側で自由に操作できる。例えば、スポーツ映像であればシュートシーンを好きなアングルで見るなど、従来よりも臨場感のある視聴体験を生み出せる。倍速にしたり、スローモーションにしたりと映像速度も変更可能で、ユーザーそれぞれの楽しみ方ができるのも大きな特徴だ。
IMAGICA GROUP グループ事業戦略推進部で新規事業推進を手掛ける谷本憲佑氏によると、「ボリュメトリックビデオ技術を活用することでスポーツの新しい観戦体験が生み出せるのではと考えました。そこで、ボリュメトリックビデオ技術によるプロダクションサービスを展開するニコン協力の下で、国際バスケットボール連盟が実施するスポーツテック公募事業にエントリーしました」とのこと。
ボリュメトリックビデオ技術が新しい観戦体験を作る
ボリュメトリックビデオ技術による体験型コンテンツの実証実験は、2024年4月27日から3日間開催されたスポーツイベント「FIBA 3x3 World Tour Utsunomiya Opener 2024」で実施された。同実験は、試合観戦に訪れたファンにタブレットを操作してもらいながらボリュメトリックビデオ技術で撮影した映像をいろいろな角度で楽しんでもらう、というもの。
ユーザーの反響について谷本氏は、「今回、初めて一般の方にボリュメトリックビデオ技術を使ったスポーツ映像を見てもらましたが、『こんな風に試合が見られるのは面白い』、『選手の細かい動きが分かる』といった意見がありました」と話す。
指導者目線では「教える際の参考になる」といった意見が寄せられ、運営サイドからは「将来的にこうした技術が活用できるようになると面白い」といった感想が得られたという。他にも、体験型コンテンツをどのように活用すればいいかアイデアの提案があるなど、非常に有意義な実験になったとのこと。
ニコン 映像ソリューション推進室でボリュメトリックビデオ技術を担当する中川源洋氏は、今回に実証実験の成果について、「従来は専用機材を備えたスタジオでしか撮影できませんでしたが、今回は可搬型の撮影システムを構築しました。持ち運びの自由度が向上することで、スポーツをはじめとしたさまざまな領域での活用が広がるのではと思っています」と話す。
また、谷本氏は今後の展望について、「ボリュメトリックビデオは発展途上の技術。まだまだ大きな可能性を秘めています。例えば、バスケットコートにタブレットやAR/MRグラスを向けると、画面にボリュメトリックビデオ技術で撮影した映像が映し出されるといった、現地での観戦がより楽しくなるような工夫ができると面白いです。実証実験を重ねながら、さまざまな企業と協力して現地での観戦を促す魅力的なコンテンツを生み出したい」とのこと。
被写体の動きを好きな角度から見ることができるボリュメトリックビデオは、スポーツだけでなく、小学校の体育の授業などで活用したり、民俗芸能などの無形文化財の記録など広い領域で活躍する技術だ。今後どのような分野で活用されていくのか注目したい。