業務を変えるkintoneユーザー事例 第238回
マシンガン関西弁で打ち込むいつもと違うkintoneセッション(スライド多め)
基幹システム、kintoneでできんちゃう? 実現したマテハン販社のプレゼン強い
2024年08月26日 07時00分更新
基幹システム構築の依頼 アールスリーさんには断られた
川咲氏がまず行なったのは、徹底的な業務の整理。各部署を徹底的にヒアリングし、基幹システムのどの部分を利用しているかを明らかに。利用しているExcelファイルもすべて回収し、業務フローを資料に起こした。
そして、資料の業務フローをkintoneに落とし込んだ場合、情報を交通整理し、こうあるべきという理想の流れをアウトプットし、それを資料化した。この資料をアールスリーに持ち込み、こういう基幹システムを作ってくださいとアールスリーに依頼。しかし、けんもほろろに断られる。「kintoneでできないこともあるし、他社のシステムの方がいいんじゃない?と言うんです。林さんが(笑)」と川咲氏は語る。
「だって、普通断らないですよね。『なんでもできます!』って言いますよね、システム屋さんって。それをアールスリーさんは断るんです」と川咲氏。しかし、この塩対応に川咲氏はむしろ好感を持つ。「そこを、なんとか」と食い下がり、アールスリーインスティテュートに提案してもらうことにした。具体的には、要件の優先順位を説明した上で、kintoneが得意じゃない部分、優先順位がベター以下で、使用頻度が高くない点が重なるところは、開発をあきらめた。
アールスリーが作った提案をワイドループの社長にプレゼンした結果、無事予算は承認。おととしの3月にキックオフが行なわれ、きっかり1年後にローンチに至った。この間、普通はなんかしらのトラブルがありそうだが、このプロジェクトではほとんどなかった。「隔週で行なっていた打ち合わせに鍵があるのではないか」と川咲氏は振り返る。
打ち合わせのポイントはずばり「必要最少メンバーで臨む」こと。「あえて厳しい話をすると、システムに疎い人、論理的じゃない人は、打ち合わせに入れちゃダメですね。無駄に会議が長引く」と川咲氏は提言。もう1点目は、「腹を割って話す」こと。「わからないことはわからないと言う、提案が違ったら、ちゃいまんねんと言う」(川咲氏)ことがなにより重要。変な気を遣って話したり、あいまいな回答を行なないことが、打ち合わせを充実させ、プロジェクトを成功に導いたのではないかと川咲氏は分析する。
最後の抵抗勢力は御年68歳の翁 巻き込むにはやっぱり「あれ」
ラウンチ前2ヶ月は、正式なリプレースに向けて現行システムの並行運用を行なった。その結果、満を持してローンチ……とは行かず、半ば強引にスタート。正式稼働後も2ヶ月間は社内からの問い合わせが鳴り止まなかった。しかし、ローンチから3ヶ月が経ち、問い合わせが落ち着いてくると、社員は「あれ、めちゃめちゃ便利じゃね?これ」とkintoneの魅力に気づき始める。「私、心の中で思いました。せやろと」(川咲氏)。
しかし、会社にいる御年68歳の翁だけは、納得いかない。「前のシステムでは●●ができたのに!きんとんはできないじゃないか」なんでシステム替えたの!」と孤高のレジスタンスのごとくkintoneにあらがう。とはいえ、抵抗勢力を駆逐するわけにはいかない。そこでとった手段が古式ゆかしいジャパニーズ根回しである接待麻雀だ。
「飲み会からの接待麻雀も抜群に効果を発揮しました。おじいさんからすると、自分の孫くらいの若手社員がいっしょに雀卓を囲んでくれるわけで、こんなに幸せなことないですよね。見事、おじいさんのハートをわしづかみ」と作戦は大成功。kintone基幹システムの移行に、社員全員をきちんと巻き込むことができた。
新システムの運用から1年が経ったが、川咲氏は「各現場のオペレーションは出来過ぎなくらい回っている」と語る。最後は、社長のストレスになっていた「会計(決算)が合わない」という問題の検証のみ。昨年度末に行なった検証の結果は、完璧にはあわなかったが、なぜ合わないかの原因が非常に明確になったということ。「来期は完璧に合わせられる自信がある」と語ると、社長も歓喜したという。
最後、川咲氏は構成図を元に今回構築した基幹システムについて説明する。「商品がほしい」という問い合わせが入ると営業の販売案件管理アプリに案件が登録され、無事成約すると経理の請求管理アプリ、入金管理アプリに情報が渡ることになる。また、「売りたい」という依頼が入ると、こちらは買い取り案件管理アプリに案件が登録され、成約すると支払い処理のための発注管理、支払い管理に情報が渡される。
そしてセンター側にもともとあった入出荷管理アプリは、前述した販売案件管理と買い取り案件管理と連携できるようになったことで、「抜群に使いやすくなった」とのこと。「社内のすべての情報をわれわれは一元管理している。これが今の姿」と川咲氏はアピールする。
効果検証はしていない。なぜなら誰が見てもよくなっているから
川咲氏は「本気出せば、kintoneで基幹システムまで作れちゃう」「問題提起とロジカルな情報整理ができる人材が最低1名は要る」「なんだかんだで人間関係が重要」とプレゼンの内容をまとめる。「われわれが良好な人間関係を作るために作ったのが、日報アプリ、39アプリ、そしてときどき接待麻雀です」と川咲氏は語り、圧巻のセッションは終了した。
あまりの迫力に気圧された司会のサイボウズ山田氏は、kintoneの魅力について質問。これに対して川咲氏は「インターフェイスが圧倒的に美しくて、かわいい。使い勝手って結局見た目だと思うんです。スクラッチ開発も、他社のツールも検討しましたが、なにしろkintoneのインターフェイスが美しかったからですね」と語る。
あえて触れなかった基幹システムの導入効果については、「効果検証はしてない。なぜなら誰が見てもよくなっているから。うちのくらいの規模でデータ集めて、時間かけて効果検証するのは無駄。そんな時間あるなら、アプリ1つ作った方がいい」と川咲節なコメント。とはいえ、定点観測している資料を見る限り、見積もりの件数や売上は増えているが、残業時間は減っており、生産性はどう見ても上がっているとのこと。
今までのkintone事例セッションのテンプレをことごとく覆すような川咲ワールドに会場全体が魅了された。大阪の地区代表に選ばれた川咲氏のプレゼンは、11月に開催される「Cybozu Days 2024」で直接見ることができる。これは本当に生で見た方がいい。

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