業務を変えるkintoneユーザー事例 第238回
マシンガン関西弁で打ち込むいつもと違うkintoneセッション(スライド多め)
基幹システム、kintoneでできんちゃう? 実現したマテハン販社のプレゼン強い
2024年08月26日 07時00分更新
リユース業態ならではのカスタマイズで不都合すぎる基幹システム
インパクトの強すぎるイントロの後はいよいよ本題。だが、「社内は超アナログ」「私が一人でkintoneを猛勉強」「kintoneが浸透しない」「社員に寄り添いみんなでkintoneを改善」といったkintone講演テンプレは一切ないという。トピックはスケールの大きな「基幹システムをkintoneでリプレースした」という話。繰り返しになるが、「基幹システムをkintoneでリプレースした」という話だ。
当時、基幹システムとして使っていたのは、某販売管理パッケージだ。このパッケージを用いて、マテハンを販売する営業は見積もりを作成したり、発注を管理。仕入れや調達にあたる買い取り担当は、案件を管理したり、商品のマスターを作成。経理は売上、請求、支払いなどの伝票を作っていた。
営業や買い取りは在庫センターに対して、LINE、メール、FAXなどそれぞれ異なる手段で入出荷依頼をかけており、スケジュールは各センターがExcelファイルで独自に管理していたという。では、なぜこのシステムをリプレースしたのかは、一言で言えば、限界を感じたから。川咲氏はテレビやラジオ番組の投稿よろしく、3つのケースを紹介する。
東大阪市の会社役員が投稿した「あ、これ以上この人といっしょに居られないと思ったとき」の1つ目のケースは、「注文書を作成するとき、どの案件の仕入(原価)なのかを備考欄に入れるというルールを見たとき」だ。モノを売ると売上が立つし、売上を上げるためには、必ず原価(仕入)がかかってくるはず。しかし、当時のシステムは、売上と仕入れが機能として独立していたため、連携が難しかった。これだと経理が困ると言うことでできたルールが、注文書の備考欄に売上の販売番号を手入力するというもの。もちろん、販売番号の漏れやミスは多発し、経理は頭を抱えていたという。
同じく東大阪市の会社役員が投稿した2つ目のケースは、「商品を仮押さえされたまま放置されている在庫が倉庫にあふれているのを目にしたとき」だ。同社の商品はほとんどが中古なので、現品限り。そのため、確度が高いお客さまのために営業は在庫を仮押さえし、失注した場合は開放しなければならない。しかし、「忘れるんですよー捨てたことを。仮押さえしていたことを」とのことで、仮押さえられたままで売れない商品が倉庫にあふれることになる。「物流機器の倉庫がこれじゃあいかんだろうと思った」というのが2つ目だ。
3つ目のケースは、「過去の売上が更新され、会社の決算が合わなくなるとき」だという。たとえば、売れ行きの悪い商品を値引きするのは、通常の商行為では当たり前。でも、1万円の商品で2000円引いたら、過去にさかのぼってすべてを2000円マイナスしなければならない。「バグかと思いました」(川咲氏)。当然、決算に数字が合わなくなるので、年度末に社長は会計士と頭を抱える光景を目にする。「これを見たときに、そろそろ限界なんじゃないかと感じました」と川咲氏は振り返る。
もちろん、もともとのパッケージはこんな無理は生じなかった。ただ、一般の商品販売と異なるリユースという業態だったため、カスタマイズを重ねた結果、いろんなところに歪みが生じてしまったわけだ。
ガチな業務改善だけじゃなく、なぜゆるーいアプリを作ったのか?
そんなワイドループはkintoneを入れたきっかけは社長の「キントーンというシステムのセミナーに行ってきてんけど、なんかええんちゃうか、これ。入れてみてや」という一声。ご多分に漏れず、本来「手段」であるはずのkintone導入が見事に「目的」と化してしまったわけだ。
kintoneを入れるための業務改善として作ったのは、業務の中でもっとも非効率だったセンターへの入出荷を管理するアプリ。「でも、これガチじゃないですか。そうじゃない、もっとゆるーいのが作りたかった」と話すエッジの効きすぎる川咲氏が作ったのは、kintoneで最初に作るシステムと言われている業務日報アプリ。「書いている内容はゆるゆるだけど、実に面白い」(川咲氏)とのことで、2つの日記を紹介した。
1つ目は、本体ではなく付属品を大量に購入するお客さまについての日記。これを読んだ営業対応はお客さまに実際にヒアリングし、購入理由がわかったという。2つ目はセンターで働く、ベトナム人のサンくんがケガしてしまったため、センター長が早めに病院に送ってくれたというエピソード。これに対しては「お前にサンが救えるか?!」(モロ)という川咲氏のコメントと4つのいいねがkintoneに残されている。
もう1つのアプリは、社員同士で評価ポイントを渡し合う「39ポイント」。これはkintone標準では実現できないため、kintoneカスタマイズツールのgusuku Customineを利用することにし、開発まで委託した。これがアールスリーインスティテュートとの出会い。この頃、川咲氏の脳内ではすでに「基幹システム、kintoneでできんちゃう?」という確信を持っていたという。
ガチな業務管理アプリである「入出荷管理」、「業務日報」と「39ポイント」という2つのゆるいアプリを通して、「社員をkintoneに洗脳させる下地は整った。私がハートフルなアプリが欲しいと言っていたのはこのため」と川咲氏。いよいよkintoneの沼へ足を踏み入れていく。

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