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生成AI機能「NetSuite Text Enhance」を含む日本市場向けの新製品/新機能投入

Oracle Netsuite幹部、新製品のEPMソリューションやAI戦略などを語る

2024年08月19日 15時30分更新

文● 大河原克行 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 日本オラクルは、東京で開催した年次イベント「SuiteConnect Tokyo」(2024年7月17日開催)に合わせて、来日したNetSuite幹部による説明会を開催。SaaS型のクラウドERP「Oracle NetSuite」の日本市場向け新製品やAI戦略についての発表を行った。

 日本市場向け新製品では、2024年9月から提供開始する経営管理ソリューション「NetSuite Enterprise Performance Management(EPM)」、AI対応クラウド・データウェアハウス/分析ソリューション「NetSuite Analytics Warehouse」など、Oracle Cloudとの深い連携を背景に実現するソリューション群をアピールした。またAI戦略では、今年(2024年)後半に、日本語に対応した生成AI機能「NetSuite Text Enhance」を提供することを紹介した。

経営管理ソリューション「NetSuite Enterprise Performance Management(EPM)」の概要

Oracle NetSuite プロダクト・マネジメント担当グループVPのクレイグ・サリバン(Craig Sullivan)氏、テクノロジー&AI担当SVPのブライアン・チェス(Brian Chess)氏

日本市場向けに経営管理SaaS「NetSuite EPM」などを投入

 NetSuiteは、昨年(2023年)に創業25周年を迎えた中堅中小企業向けのクラウドERP(SaaS ERP)である。2016年にオラクルが買収し、現在はOracle NetSuiteとして、Oracle Cloud Infrastructure(OCI)を基盤にグローバルでサービスを提供している。7月には、ソースネクストがNetSuiteの販売取り扱いを始めたことも発表された。

 Oracle NetSuiteプロダクト・マネジメント担当グループVPのクレイグ・サリバン氏は、NetSuiteは中堅中小企業向けに設計されており、現在ではOracle Cloudとの連携によってクラウドやAIの活用能力を高めてきたと語る。さらに、これまでの進化の中では「日本市場向けのローカル機能の充実にも力を注いでいる」と強調した。

 日本市場向けの新製品であるNetSuite EPMは、予算管理の「NetSuite Planning and Budgeting」や勘定照合の「NetSuite Account Reconciliation」を含む経営管理ソリューションだ。Oracle Cloudのエンタープライズ向けEPM「Oracle Fusion Cloud Enterprise Performance Management」をベースに構築されており、Oracle Cloudとの深い連携が特徴だという。日本の税務報告基準にも準拠する。

 「NetSuite EPMは、エンタープライズクラスの機能をNetSuiteにシームレスに統合し、簡単に利用できるソリューション。組織全体にわたる計画、予算、予測、勘定調整、決算、レポーティングプロセスを統合し、可視性を高めることで、経営層の意思決定を強化し、成長を促進できる。日本企業向けにローカライズしたかたちでの提供も可能だ」(サリバン氏)

 クラウド・データウェアハウス/分析ソリューションのNetSuite Analytics Warehouseも、Oracle Cloudの「Oracle Analytics Cloud」と「Oracle Autonomous Warehouse」をベースに構築されている。NetSuiteとしては初めてAIによるインサイト(洞察)が可能になるほか、事前構築済みの他社ツールとのコネクタを提供し、NetSuite上のデータと外部データソースを組み合わせたより深いインサイトが可能になるという。複数のNetSuiteインスタンスとの連携も可能で、異なるビジネスを統合したかたちでの分析も可能にする。

「NetSuite Analytics Warehouse」の概要

 製造業特化型の「NetSuite SuiteSuccess Manufacturing Edition」は、財務管理とレポート作成、在庫管理、作業指示、需要計画といった機能を提供する事前設定済みソリューション。日本の製造業向けに、言語や通貨のローカライズだけでなく、日本の税制度への対応や最適なレポート作成なども行っている。

 「製造業には『より効率性を高めたい』『ビジネスプロセスを改善したい』といったニーズがあるが、それらはNetSuiteが得意とする領域だ。(NetSuiteが持つ)“Act Global, Be Local”という考え方に基づいて、日本の消費税への対応などローカライズを行っている。日本の中小製造業はグローバル化を目指しており、海外に製品を売るだけでなく、海外から部品を調達したいという要望も強い。こうしたニーズへのサポートは他社にはできないものであり、日本市場に投入できることを楽しみにしている」(サリバン氏)

製造業向けソリューション「NetSuite SuiteSuccess Manufacturing Edition」の概要

 もうひとつ、ShopifyとNetSuiteの間のデータ転送を自動化するコネクタ「NetSuite Connector for Shopify」も発表した。手作業でのデータ入力を不要にすることで、ヒューマンエラーをなくし、レポート作成にかかる時間も短縮できる。

 「eコマースやPOSの管理でShopifyを利用している企業に対して、(NetSuiteによる)製品情報の管理や注文管理、受注から配送までの処理、返品管理を実現し、在庫の可視化や会計処理の簡素化が可能になる」(サリバン氏)

「AIのないビジネススイートは“車輪のないクルマ”」AI戦略も強化へ

 一方、NetSuiteのAI戦略については、Oracle NetSuite テクノロジー&AI担当SVPのブライアン・チェス氏が説明した。チェス氏は、ビジネスAIの普及は「クラウドの登場と同じぐらいの歴史的変化をもたらすことになり、仕事の仕方を変革していくことになるだろう」と語る。

 「AIのないビジネススイートは“車輪のないクルマ”のようなものだ。NetSuiteでは、財務、営業、人事、製造など製品全体でAIを活用できるようにする。統合されたビジネススイートから提供される最高のデータを活用できるため、AIにおいても優れたポジションを獲得できている」(チェス氏)

 AI戦略においても、オラクルとの連携が大きな価値を持つことをチェス氏は説明する。NetSuiteが独自にAIを開発しなくとも、OCIで提供されているAIサービスや、オラクルとNVIDIA、Cohereなどとのパートナーシップを活用することで、AIソリューションが構築できるためだ。

 2024年後半には、日本市場向けにNetSuite Text Enhanceを提供開始することも発表した。これは、LLMと顧客企業固有のデータを活用して、商品説明、営業メール、発注書、求人情報、従業員の目標といった、幅広い種類のテキストコンテンツのドラフト作成や微調整を行う機能だ。これをNetSuite全体で利用可能にすることで、生産性の向上やビジネスプロセス迅速化を実現するとしている。

 「英語圏以外で、NetSuite Text Enhanceを提供するのは日本が(日本語が)初めてとなる。財務や経理、サプライチェーン、製造、セールス、マーケティング、カスタマサポートなど、ビジネスのあらゆる場面でAIが活用できるようになり、日本の企業が、日本のコンテキストに基づいた形で、コンテンツのパーソナライズを実現できる」(チェス氏)

「NetSuite Text Enhance」の概要

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