このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

GKEなどのGoogle Cloudサービスを用いた負荷軽減と運用効率化のノウハウを披露

「あれ、サーバー代で倒産する…?」大ヒットゲーム・パルワールドが語る、安価で堅牢なインフラ構築

2024年08月14日 08時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

公式サーバー:リアルタイムゲームサーバーをKubernetesで運用する意義

 もうひとつ披露されたのが、ポケットペア自身が運用する「公式サーバー」での取り組みだ。この公式サーバーも、APIサーバーと同様にGKEを採用している。

 公式サーバーは、ステートフルなアプリケーション管理向けのワークロードAPI「StatefulSet」を利用して、1台のPodで並列化せずに運用しており、セーブデータはPersistentVolume(永続ボリューム)に保存している。そして、ゲームクライアントはノードのHostPortに直接接続する。

 「これだけみると、Kubernetesで管理する理由は少ないのではと思うかもしれないが、使ってみるとGKEが便利な場面が沢山あった」(笹氏)

ポケットペア SRE 笹和成氏

 ひとつ目のメリットが、「Kubernetesの仕組みで管理が容易になること」だ。「Kubernetesの仕組みは、ゲームサーバーにおいても運用を助けてくれるものが多い」と笹氏。

 例えば、コンテナの不正終了を検知して自動で再起動したり、CronJobで定期的にバックアップや再起動を実行したり、PreStopでメンテナンスや定期再起動の際にシャットダウン処理を追加で入れることなどができる。

Kubernetesの仕組みで管理が容易に

 2つ目のメリットが「Google Cloudの他のリソースとの連携」だ。特に、セーブデータの管理では、ストレージ周りのバックアップやリストアが必要となるが、Google Cloudとの連携によって容易に実現できたという。

 PersistentVolumeに保存されたセーブデータのバックアップには、Kubernetesの「VolumeSnapshot」リソースを活用している。PersistentVolumeがGoogle Compute Engine(GCE)のディスクと対応しているように、VolumeSnapshotはGCEのスナップショットと対応している。これを利用して、Kubernetesの仕組み(CronJob)だけでバックアップを完結させた。

 これは差分バックアップであるため、前回のスナップショットからの変更データのみが保存され、低コストでの運用が可能だ。また、リストアする際は、PersistentVolumeClaimに、リストアしたい時点で作成したVolumeSnapshotのリソース名を指定するだけで、その時点まで戻すことができる。

Google Cloudとの連携によるバックアップやリストアの実現

 最後は、「管理対象サーバーのマニフェスト化」だ。対象のサーバーは、Kubernetesのマニフェスト形式でコードとして扱えるため、GitHubで管理してGitHub Actionsでデプロイができる。

 オペレーションの共通化や情報取集に役に立ち、実験版やプラットフォーム違いなど、様々なバリエーションのサーバーも手間なく増やすことができる。

サーバーをコード化することで

 最後に中條氏は「この発表によってゲーム業界でGoogle Cloudを採用する方々の参考になれば嬉しい」と締めくくった。

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

アクセスランキング

  1. 1位

    デジタル

    実は“無謀な挑戦”だったルーター開発 ヤマハネットワーク製品の30年と2025年新製品を振り返る

  2. 2位

    ITトピック

    「全国的に大変な状況になっています」 盛岡のSIerが見た自治体システム標準化のリアル

  3. 3位

    ゲーム

    信長を研究する東大教授、『信長の野望』を30年ぶりにプレイ 「若い頃だったら確実にハマってた」

  4. 4位

    ゲーム

    92歳 vs 95歳が『鉄拳8』でガチ対決!? “ご長寿eスポーツ大会”が海外でも話題に

  5. 5位

    sponsored

    SIer/ネットワーク技術者こそ知ってほしい! 「AV over IP」がもたらすビジネスチャンス

  6. 6位

    デジタル

    ヤマハ、2026年夏にWi-Fi 7対応アクセスポイント投入 スケルトンモデルも追加で「見せたくなる」デザインに

  7. 7位

    TECH

    NTTが日比谷を「光の街」に。次世代通信技術を都市にインストール

  8. 8位

    ITトピック

    セキュリティ人材の課題は人手不足ではなく「スキル不足」/生成AIのRAG導入が進まない背景/日本で強いインフレ悲観、ほか

  9. 9位

    ビジネス・開発

    10年先にいる「将棋界」から学ぶ 強豪将棋AI・水匠チームが語る“人を超えたAI”との向き合い方

  10. 10位

    TECH

    2026年度始動の「サプライチェーンセキュリティ評価制度」 企業セキュリティが“客観評価”される時代に

集計期間:
2025年12月21日~2025年12月27日
  • 角川アスキー総合研究所