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最新パーツ性能チェック 第445回

「Ryzen 7 9700X」「Ryzen 5 9600X」のゲーミング性能はゲームキングRyzen 7 7800X3Dに勝てる?

2024年08月08日 15時00分更新

文● 加藤勝明(KTU) 編集●北村/ASCII

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CPUやシステムの実消費電力を交えて検証する

 ここから先の検証では、FF14ベンチと同様に画質は低設定、解像度はフルHDに固定してCPU性能の差が出やすくするという方針に変更はない。ただしフレームレートの計測には「CapFrameX」を用い、同時にHWBusters「Powenetics v2」を通じてベンチマーク中にシステム全体の消費電力(ATX/ EPS12Vx2/ PCIe 8ピンx2/ PCIe x16スロットに流れた電力)と、CPUの消費電力(EPS12Vx2)の平均値も計測する。

 また、フレーム生成であるFSR 3 FGやAFMFは使用しないが、アップスケーラーとしてのFSR 2やFSR 3は利用し(ゲームの初期設定による)、その場合は“バランス”設定を使用することにした。前編ではRyzen 9000シリーズは前世代よりも消費電力が大きく減っていたが、ゲームでもそれが発揮されるのだろうか?

「Overwatch 2」

 まずはeスポーツ性の高いFPSOverwatch 2を使用する。画質はプリセットの“低”を選択、レンダースケールは100%、フレームレート制限は上限の600fpsとした。マップ“Eichenwalde”におけるbotマッチ観戦中のフレームレートを計測した。

Overwatch 2:1920×1080ドット時のフレームレート

 Ryzen 9000シリーズは前世代の同格モデルよりはフレームレートが高くなるが、3D V-Cacheを搭載したRyzen 7000X3Dシリーズには遠く及ばない。最低フレームレートの出方においても、3D V-Cache搭載モデルの方が有利だ。

 ただ3D V-Cacheを搭載しないRyzen 7000シリーズだけを見た場合は、Ryzen 9 7900Xのすぐ後ろにRyzen 9700Xがつき、Ryzen 7 7700Xに至ってはRyzen 5 9600Xに僅差で負ける(控えめに言っても同等といったところか)。旧世代の上位CPUを上回っているという点においては、Zen 5アーキテクチャーはすごいと言えるだろう。

 AMD対インテルでみると、Ryzen 7 9700XはCore i7-14700Kに勝てていない。しかしRyzen 5 9600XはCore i5-14600Kよりも平均フレームレートで上回っているため、このへんはCPU側のコア数が勝敗を左右したと考えるべきだろう。

Overwatch 2:ベンチマーク中のCPUおよびシステム全体の消費電力(平均値)

 続いてはベンチマーク中の平均消費電力だ。前編ではRyzen 9000シリーズは7000シリーズよりも消費電力が明らかに少ない、というデータが出ていたがゲームでは逆にRyzen 9000シリーズの方がCPU単体で3~9W、システム全体では24~30W増加している。

 ゲームの処理においては動画エンコードのようにCPU負荷が常にMax付近で張り付くわけではなく、CPU負荷は状況に応じて激しく変動する。そしてCPU性能が上がればそれだけCPU側の処理するフレーム数も上がるのでCPUの消費電力も増えるのだ。CPUがよく働くようになればなるほど、GPUも働かざるを得なくなるため、システム全体の消費電力上昇はCPU単体の消費電力上昇よりも激しくなる。

 総じて、Ryzen 9000シリーズはゲームにおいては性能が向上したぶん消費電力も上がったが、極端に上昇しているわけではない。インテル勢の消費電力の大きさに比較すると、同条件で約半分程度に収まっている。

「F1 24」

 続くF1 24では、画質は“超低”とし、異方性フィルタリングは16x、アンチエイリアスはTAA&FidelityFXとした。ゲーム内ベンチマーク(条件は“モナコ”+“ウエット”)再生中のフレームレートを計測した。

F1 24:1920×1080ドット時のフレームレート

 Ryzen 7000X3Dシリーズが強いのはこれまで通りだが、Ryzen 9000シリーズのフレームレートの伸びがとてつもなく大きい。Ryzen 7 7800X3Dのすぐ後ろにRyzen 9700Xが来ているが、コア数とTDPで上回るRyzen 9 7950Xを50fps程度上回るとは驚きだ。

 しかしRyzen 5 9600XはRyzen 5 7600Xを上回ることはできたが、Ryzen 7 7700Xは越えられていない。Ryzen 9 7900Xが7700Xよりフレームレートが出ていないという点から、CCDあたりのコア数が6基のモデルでは性能が出にくくなっていると推測される。このあたりはRyzen 9 9900Xが出てくればハッキリするだろう。

F1 24:ベンチマーク中のCPUおよびシステム全体の消費電力(平均値)

 性能が上がれば消費電力も上がる、ということでRyzen 9000シリーズの消費電力は前世代の同格モデルに対して4~10W上昇。Ryzen 7000X3DシリーズにおけるCPUの消費電力が圧倒的に低い理由は、巨大な3次キャッシュがあるがゆえにメモリーへのアクセス頻度が減り、消費電力の高いメモリーコントローラーの負担が減ったためと考えられる。

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