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ASCII Power Review 第261回

もうすぐ発売のキヤノン最新カメラを先行レビューです!!

最強AF撮影も1億7900万画素もやってみた=「EOS R5 MarkⅡ」実写レビュー

2024年08月09日 09時00分更新

文● 写真 岡田清孝 + 編集● ASCII PowerReview軍団

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 キヤノンはフルサイズミラーレス機「EOS R5 MarkⅡ」を8月末に発売する。

 前モデルから約4年振りのモデルチェンジで、同時に発表されたフラッグシップモデル「EOS R1」と同様に従来の画像処理エンジン「DIGIC X」にくわえ新たな映像エンジン「DIGIC Accelerator」を搭載。より高速で高度な処理を実現しているのが最大の特徴だ。

 最近のミラーレス機は高速撮影をアピールする機種が多いが、一般のユーザーにとっては画質や操作性など普段での使い勝手も気になるところ。今回発売前の試用機を借りたので、その点も踏まえチェックしていこう。

量販店価格はボディーのみ65万4500円。「RF24-105mm F4 L」とのレンズキットも用意されコチラは80万8500円。

電源スイッチは上面に
フルサイズHDMIにマルチアクセサリーシュー
クーリングファンもオプションで登場

 外観は一見すると前モデルと大差は無く、サイズもほぼ同等。グリップのホールド感も良好だが、手の小さい人にとってはもう少し細身のほうが良いと感じるところも同じだ。

サイズは138.5×101.2×93.5mm、重量はバッテリーとメディア込みで746g。前モデルは138.5×97.5×88mm、738gだったのでほぼ同等だ。

   

構えてみると見た目よりはスリムに感じるボディー。上面には各種撮影情報が表示される液晶パネルを備える。

   

液晶パネルは露出系と撮影設定を切り換えて表示できる

   

EOSシリーズ伝統のホイール式のダイヤルを備えた背面。210万ドットの背面液晶も変更は無い。

   

背面液晶はバリアングル式。製品の価格帯から考えると、そろそろ3軸式などワンランク上の可動方式を望みたいところ。

 

 ただ細かい部分で変更があり、まず前モデルでは上面左側に配置されていた電源スイッチが弟分の「EOS R6MarkⅡ」と同様に上面右側コマンドダイヤル前に移動した。左側に電源スイッチを配置されると、どうしても両手で構えなければならないが、右側なら右手だけで操作ができるのでスマートだ。

電源スイッチは右側コマンドダイヤル周りに移動。元電源スイッチだった位置は動画/静止画切換スイッチになった。

 

 背面の「マルチコントローラー」も丸み帯びた突起の無い形状に変更された(これも「EOS R6MarkⅡ」と同様)。「マルチコントローラー」は十字キー代わりに頻繁に操作をするため、突起が無いほうが長時間使っていても指先が痛くならない。うれしい改良だ。

丸み帯びた形状が指先になじみ、上下左右への移動もスムーズにおこなえた。

 

 EVFは567万ドット倍率0.76倍とスペック的には変更はないが、接眼窓が大きくなり心なしか覗きやすくなったような気がする(多分気のせい)。

大きくなったEVFの接眼窓。汚れた時に拭きやすいというもの何気ないメリット。

 

 上面のホットシューも通信や一部機器では電源供給も可能な「マルチアクセサリーシュー」を採用。未使用時は防塵防滴対応のためシューカバーの装着が推奨されているが、これが結構ゴツくてカッコイイ。

奥側に端子を備える「マルチアクセサリーシュー」。現状ではストロボに電源供給はできないが、将来的には期待してしまう。

   

付属のシューカバーはしっかりした装着感。着脱が硬めだが、そのぶん防振防滴の面では安心だ。

 

 メディアはCFexpressとSDのデュアルスロットと変わらず、端子類はHDMIがマイクロからフルに変更された。

右側面のメディアスロット。CFexpressとSDのデュアル。

   

側面端子の配置は変わらないが、HDMIがフルサイズに変更。

 

 バッテリーは新型の「LP-E6P」になったが、形状は変わっていないので、連写速度などに制限はあるものの前モデルのバッテリーも使用できる。公称の撮影可能枚数は省電力設定のファインダー撮影で約340枚。実際には満充電からRAW+JPEGで190カット380枚、プリ連写JPEGで123枚を撮影した時点で残11%だった。

新型のバッテリーを採用しても、従来品と互換性を保ってくれるのはうれしい。

 

 またユニークなアクセサリーとしてバッテリーグリップと冷却ファンが一体化した「クーリングファンCF-R20EP」(量販店価格6万4900円)が用意されている。静止画でもプリ連写などでは本体の熱はかなりのものになる。縦位置用のダイヤルやシャッターボタンは無いが、連写を多用する撮影では活躍してくれるだろう。

「クーリングファンCF-R20EP」を付けるとこうなる。

さらに正確になった視線入力
最強化したAFは昆虫もOK?

 機能面で充実したのがAF関連だ。被写体はもちろん特定の人物や競技によるアクションなどを優先した検出、さらに「EOS R3」譲りの視線入力も搭載している。

登録人物優優先は、10名まで登録が可能で、登録人物の優先度も選択できる。子供の運動会などでも活躍しれくれそう。

   

アクション優先検出は、3種類のスポーツから選択が可能。どの程度実用的なのかプロのスポーツカメラマンの意見が聞きたいところ。

 

 動体撮影に慣れていないと正直どのような設定にすればいいのか測り兼ねるが、とりあえず普段の撮影でも活躍してくれそうな被写体検出と視線入力を試してみた。

 被写体検出は人物と動物、乗り物それぞれ優先、もしくは対象問わず検出する自動から選べる。被写体の輪郭がはっきりしていれば比較的素早く検出し粘り強く追尾してくれた。ただ動物の顔が正面を向いていないなどシーンによっては誤認識することもあり、通常の測距点に任せたほうが撮りやすい場合もある。

 そんなときのために「被写体検出の切換」機能を任意にボタンに割り当てておけば、ボタンを押すだけで即座に被写体検出のオンオフができる。

被写体検出の設定画面。設定で検出被写体を限定することも可能。

   

かなり遠目から撮影しても、ちゃんと認識してくれた。使用レンズ「RF100-400mm F5.6-8」・絞りF8・シャッタースピード1/2000秒・ISO1600。

   

飛んでいる鳥も一度認識すれば、しっかり追随してくれる。使用レンズ「RF100-400mm F5.6-8」・絞りF8・シャッタースピード1/4000秒・ISO1600。

   

ビルの合間を飛ぶ飛行機も素早く認識。使用レンズ「RF100-400mm F5.6-8」・絞りF7.1・シャッタースピード1/1000秒・ISO320。

   

水面に顔を突っ込んでいたせいか、認識に迷った。使用レンズ「RF100-400mm F5.6-8」・絞りF8・シャッタースピード1/200秒・ISO6400。

   

昆虫は認識外(トンボは認識しなかった)だと思うが、この蝶は認識した。使用レンズ「RF100-400mm F5.6-8」・絞りF7.1・シャッタースピード1/2000秒・ISO3200。

 

 視線入力は「EOS R3」でも体感したが、視線に合わせポインターが移動する動作が相変わらずSFチック。精度も向上しているとのことだが、初期設定では若干敏感すぎる気もした。敏感度はある程度(5段階)設定で変更できるので好みに調整するといいだろう。

 慣れれば従来のようにセレクターを指先で操作するよりもスムーズな測距点移動ができた。ただ長時間視線入力を使用していると少し眼に疲労を感じた。状況によって使い分けたほうがいいかもしれない。

 

手前と奥の鳩のピント位置を視線入力で移動させてみた。やはり指先操作よりも瞬時に移動ができた。

4500万画素で毎秒30コマ連写
「カメラ内アップスケーリング」と「ニューラルネットワークノイズ低減」は非常に有効だ

 撮像素子の画素数は有効4500万画素(8192×5464ドット)で前モデルと同じだが、新開発の裏面照射積層型になり電子シャッター時の連写速度は前モデルの秒20コマから上位の高速モデル「EOS R3」と同じ秒30コマへと向上。またプリ撮影機能も搭載と最近のトレンドをしっかり抑えている。

プリ連写で撮影したスズメが飛び立つ瞬間を高速連写で撮影。

   

被写体検出のおかげでピントもしっかり合っている。使用レンズ「RF100-400mm F5.6-8」・絞りF8・シャッタースピード1/3200秒・ISO3200。

 

 とはいえプリ撮影の枚数は固定で最大15コマ(0.5秒)のみ。老体で反射神経が鈍った身からすると1秒程度まで選択させてもらいたいところだ。

プリ撮影の設定画面。選択項目は「する」と「しない」だけ。ちょっと素っ気ない。

 

 メカシャッターも搭載しているが、初期設定では電子シャッターが選択されている。いつもどおり動体歪みを試してみたが、わずかに歪みがあるものの普段使いでは気になることは無いだろう。

走っていく電車をメカシャッターと電子シャッターとで撮影。比べると少し歪みがあるが、十分実用的だ。これはメカシャッター。

こちらが電子シャッター

 

 ただISO25600を超える高感度だと電子シャッターのほうがノイズは多く、常用最高感度のISO51200になるとノイズ処理による解像低下もあって画質に差が感じられる。気になるようなら感度に応じて電子シャッターとメカシャッターを使い分けるといいだろう。

メカシャッターと電子シャッターそれぞれ高感度で撮影した写真の一部を拡大比較。左上からISO3200・ISO6400・ISO12800・ISO25600・ISO51200・ISO102400(拡張感度)。ノイズ処理は標準。ISO25600を超えたあたりから画質に差が見られる。これはメカシャッターの例。

 

こちらが電子シャッター

使用レンズ「RF124-105mm F4 L」・絞りF4・シャッタースピード1/500秒・ISO100。

   

使用レンズ「RF124-105mm F4 L」・絞りF8・シャッタースピード1/125秒・ISO400。

   

使用レンズ「RF124-105mm F4 L」・絞りF4・シャッタースピード1/250秒・ISO100。

   

使用レンズ「RF14-35mm F4 L」・絞りF4・シャッタースピード1/320秒・ISO100。

   

使用レンズ「RF14-35mm F4 L」・絞りF8・シャッタースピード1/400秒・ISO100。

   

使用レンズ「RF14-35mm F4 L」・絞りF8・シャッタースピード1/800秒・ISO100。

 

 新映像エンジン「DIGIC Accelerator」により追加された機能に「カメラ内アップスケーリング」と「ニューラルネットワークノイズ低減」がある。いずれも撮影した写真を後からカメラ内で処理をおこなう機能で、それぞれ1枚あたり15秒ほど処理時間がかかるが、複数画像の選択し一括適用させることも可能だ。

 「カメラ内アップスケーリング」は全画素数を4倍に拡大し約1億7900万画素(16384×10928ドット)を生成する。もちろん拡大処理は画像ソフトでもおこなえるが、試しに比べてみたところ、「カメラ内アップスケーリング」のほうが精細感は高かった。

この写真を「カメラ内アップスケーリング」とAdobePhotoshopの画像解像度(デティールを保持2.0)で比較。

   

拡大してみると「カメラ内アップスケーリング」(写真左)のほうが、Photoshop(写真右)より精細だ。

 

 またカメラ内でトリミングし書き出す際に適用することもできる。JPEGで画像サイズLのみなどで対応画像には一部制限があり、何故かDXクロップで撮影した写真には使用できない。

 「ニューラルネットワークノイズ低減」は高画質なノイズ処理ができる機能で、RAWのみに対応しJPEGの書き出す際に適用する。

 通常のノイズ処理と比べるとノイズが目立たないのはもちろん、解像感も保持されているのが特徴だ。流行りの画像ソフトによるAIノイズ処理には及ばないが、処理時間や手間を考えればかなり実用的だ。

ISO51200(常用最高感度)で撮影したRAWを通常のノイズ処理と「ニューラルネットワークノイズ低減」(いずれも標準)、AdobeCameraRawのAIノイズ除去で処理。

   

通常のノイズ処理(写真左)より「ニューラルネットワークノイズ低減」(写真中央)のほうがノイズは少なく解像感も高い。AdobeCameraRaw(写真右)はさすがの高画質だが処理時間(CPU内蔵GPUだと10分以上)を考えると{ニューラルネットワークノイズ低減」はかなり有効だ。

 

粘りのある明暗差の階調再現はさすが
約8.5段分の手ブレ補正もありがたい

 実際に撮り歩いてみると、シャッターボタンを押したときのフィーリングや、指先にしっくりくる操作感が心地よい。

 4500万画素の高解像度に、偏りのない発色や粘りのある明暗差の階調再現。高感度もISO12800までは常用でき、最高ISO51200でも拡大しなければ許容範囲。約8.5段分の手ブレ補正は24㎜遠景なら1/2秒程度、50㎜中遠景なら1/8秒程度までは安心と画質面も満足だ。

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