Google Cloud Next Tokyoのユーザー企業登壇 総まとめ
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トヨタ自動車:GKEとCloud Workstationsで“ものづくりの現場”でのAI開発を
トヨタ自動車は、AIやデジタル技術の活用を、運転サポートやコネクテッドカーの領域だけではなく“ものづくり”の現場においても推進している。トヨタ自動車の生産デジタル変革室 AIグループ長 である後藤広大氏は、「100年に一度の大変革期と呼ばれる現在、特に少子高齢化による労働人口の減少は製造業で深刻な問題であり、テクノロジーによる自動化は必須」と説明する。
同社では、専門知識を持たない現場社員でも必要なAI機能を自ら実装できるように、2022年、Google Kubernetes Engine(GKE)を用いたAIプラットフォームを構築。次のステップとして、そのAI活用をグローバルにも展開していく。
グローバル化を進めるには、2つの問題があるという。ひとつは「GPUリソースの効率化」。広く展開していくには、スケーラビリティとセキュリティを確保しつつ、運用コストを最適化する必要がある。もうひとつが「AIの活用範囲の拡大」だ。日進月歩のAI進化にあわせて、開発者の環境も整えなければいけない。
GPUコストの最適化には「GKE Autopilot」と「イメージストリーミング」を活用した。イメージストリーミングは、コンテナイメージをダウンロードしながらノードを起動でき、機械学習モデルの学習に必要なポッドの起動時間を、従来のゼロスケールと比較して75%短縮。学習コストも20%削減できたという。
結果、AI開発を始めて2年ほど経つが、製造現場で働く作業者の工数は年間1万時間も削減された。「現場で余力が生まれることで、新しいものづくりへの挑戦を始めている」と後藤氏。
AIの進化への対応には、マネージドなクラウドベースの開発環境である「Cloud Workstations」を導入した。開発環境の構築スピードを高め、維持管理やセキュリティ対策も効率化できる。日々新しくなるGPUの検証やミドルウェアのバージョンアップに対しても、複数の開発環境で対応可能であり、結果、環境構築のスピードを10分の1に短縮できたという。
現在は、開発者体験の更なる向上を目指して、Geminiがコーディングを支援する「Gemini Code Assist」の検証を開始している。
後藤氏は、「これからもAI技術は進化を続け、ものづくりにおけるAIの適用範囲は拡大していく。特に生成AIは顕著であり、Geminiの活用も視野に入れている。製造現場における知見のデータベースをRAG化することで、ドメイン知識の共有と活用範囲を加速させていきたい」と今後の抱負を語った。
SMBCグループ:ワークスペース環境のマルチクラウド化でレジリエンスを強化
SMBCグループの歴史を紐解くと、三井は「現金掛け値なし」、住友は「南蛮吹き」と、販売と技術でイノベーションを生み出したことが起源であり、その後も時代に応じたイノベーションを続けてきた。現在では、デジタルを活用した新たなサービスや事業の創出に取り組んでいる。
その代表的なサービスが、個人向けの総合金融サービス「Olive」だ。ひとつのアプリで銀行口座やクレジットカード、証券、保険などのサービスをシームレスに提供しており、2023年3月のリリースから既に300万人を超えるユーザーを獲得している。三井住友フィナンシャルグループの常務執行役員である高松英生氏は、「Oliveは、SMBCグループにおける銀行やクレジットカードなど、関係会社が連携して企画して、グループ内のIT会社である日本総合研究所が一元的に開発を担うなど、グループの総力を挙げている」と説明する。
このようなイノベーションの創出や非金融分野も含むデジタル事業の拡大といった“攻めのIT”を加速するべく、中期経営計画ではIT投資額を1000億円増額。一方で、リスクの分析や管理といった“守りのIT”も平行して強化を進めており、特に、事業継続の大前提となる、従業員のデジタルワークスペース環境においてバックアップシステムを構築する予定だ。
具体的には、従来から利用していたMicrosoft 365に加えて、新たにGoogle Workspaceも導入し、マルチクラウド化によってワークスペース環境のレジリエンスを強化する。クラウドサービス間をIDで連携して、全ての従業員が常に、いずれかのクラウドサービスを利用できるよう進めている。
「ワークライフバランス、働き方の多様化を重視するためには、社員がいつでもどこでも安心して働ける環境が重要になる。例えば、システムの不具合で電子メールが使えない、ウェブ会議が使えないという事態になると、途端にグループ数10万人の社員の仕事が滞り、会社全体で大きな損失を生んでしまう。ワークスペース環境においても、基幹システム同様に強固なレジリエンスが必要な時代」(高松氏)
高松氏は、「攻めと守りの施策を強固にしていく中で、攻めの手法のひとつである生成AIについても、専用の環境を構築して活用を進めている。今後は社内の各種業務の効率化に用途を広げていく予定」と締めくくった。
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