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新清士の「メタバース・プレゼンス」 第74回

AIバブル崩壊をめぐって

2024年08月05日 07時00分更新

文● 新清士 編集●ASCII

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現在は人手不足をAIで埋める考えも

 ただ一方で、IT企業がこれまでどう動いてきたかというと、ITベンチャーが生まれてから株価として大きく成長しはじめるまではおよそ10年かかっているという分析もあります。そこから社会的な浸透が進んで評価が得られるのには少しズレがあると。AIもこうした目線で見る必要があるのではないかと。AIブームが1〜2年前から始まったものとすれば、浸透するまでにはまだまだ時間がかかるのかもしれません。

過去30年で、新規企業が企業価値を引き上げるのには誕生から10年以上かかっていることを示すチャート。ベンチャーキャピタリストLouis Coppey氏の記事より

総務省「平成28年版 情報通信白書」より

 今、日本政府がAIの導入に積極的なのは、今後、日本の人口減少による労働人口の減少が避けられないという背景があります。日本は、何もしなければ経済の縮小も始まってしまいます。そのため、AIを導入することで労働生産性を上げて、経済成長につなげようという考えがあります。

 これは2016年の総務省「平成28年版 情報通信白書」に具体的に紹介されています。「AI導入当初」段階ではAIの業務効率化・生産性向上効果により、タスク量が減少するとしています。それが、「AIの利活用拡大」段階に入ると、新しく創出される職種へと広がっていくという将来が想定されています。

 現在は、「AI導入当初」段階ともいえるのですが、悲観的な立場は、この段階にとどまり経済は成長しないと予測し、また過剰投資になっていると見ています。一方で、楽観的な立場は、「AIの利活用拡大」段階に入り、新しい雇用機会を生み出すことで経済成長が起きると予想しているのです。

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