まだ売ってもいないのに中国ブランドの出展ラッシュ!
今回のインドネシアモーターショーのキーワードは“電動化”でしょう。日系ブランドの多くがハイブリッドモデルを発表していました。また、数多くの中国ブランドが電気自動車を全面に押し出して出展していました。名前を挙げれば、ウーリン、BYD、MG、チェリー、GWM、AION、JETOUR、NETA、DFSK。さらに韓国のKIAとベトナムのVINFASTも電気自動車を出品していたのです。
ここでポイントとなるのは、これだけ数多くのEV系の中国ブランドが出展していますが、実際にインドネシアで、すでに販売されているのはウーリンとBYD、DFSK、そしてMGのみ。それもウーリンを除くと、100台以下という規模となります。まだ、本格的に売れていない、導入もされていない、というのに出展しているというわけです。おそるべきは、そのバイタリティーの強さなのか資金力なのか……。
ちなみにジェトロの調べによると、インドネシアの自動車販売に占める電動車(BEVだけでなくハイブリッドも含む)の割合は、2022年で1.5%、2023年前半(1~8月)で5.7%にしかすぎません。しかも電動車のうちBEVの割合は2割ほどしかありません。大半がハイブリッドなのです。インドネシアのBEV市場の可能性を見出しての中国ブランドの出展ラッシュだとは思いますが、数年後はどうなるのか? 死屍累々となるのか、中国ブランド隆盛となるのかに注目です。
気に入ったクルマがあればその場で買う!
商談できるモーターショーならではの活気
インドネシアのモーターショーと日本のモーターショーの大きな違いは、買うか買わないかです。日本のモーターショーは「モビリティーの未来を見る」というイベントになっています。一方、インドネシアのショーは、タイなどと同じ「クルマを買うイベント」でもあるのです。
実際に各ブランドの展示車の横に立つのは、販売店の営業マン。持っているのはカタログではなく、支払プランの一覧表です。展示ブースの裏には商談コーナーがあり、ローンを組むための銀行の出先窓口まで用意されています。クルマの価格は日本と同じなのに、収入が日本の10分の1ほどですから、インドネシアではクルマの購入とは、どちらかと言えば、家やマンションを買うようなもの。
ですから、モーターショーでしっかりと希望のクルマとライバルを比較して購入します。もちろん、現金一括ではなくローンが前提。4年48回払いどころか、5年60回払いだって普通にあります。
買うためのショーですから、未来のコンセプトカーに対する注目度がとても低いのも特徴です。ショー会場を歩き回って疲れた人が、空いているコンセプトカー展示の周りで休んでいる、なんて風景も見ることができました。
インドネシアのモーターショーを訪れるのは、コロナ禍もあったこともあり、2015年以来となりました。10年弱もの長いブランクはありましたが、インドネシアの人の親切さや、少しシャイな印象はそのままです。
街中のひどい渋滞は、以前よりも緩和したように感じます。ジャカルタの街中にも高速道路が伸びていますし、鉄道やバス専用路も見かけることができました。大きなショッピングモールの中は、ほとんど日本と変わることはありません。しっかりと経済もモータリゼーションも成長していることを実感できる旅となったのです。